IWJ代表の岩上安身です。
■新反動主義・暗黒啓蒙・加速主義のドン、ピーター・ティール氏が創業し会長を務めるパランティアが発表したマニフェストは「テクノ・ファシズム」であるとの非難が続出!(第1回)典型的なキリスト教シオニストのピーター・ティール氏を絶賛する瀧本哲史氏や糸井重里氏、橘玲氏!
パランティア・テクノロジーズ(以下、パランティア)創業者の一人で、会長のピーター・ティール氏は、2011年に亡くなったアップルの創業者、スティーブン・ジョブズ氏に代わるシリコンバレーの新しいカリスマとして、多くの若い起業家達の圧倒的な支持を集めています。
今回から、このピーター・ティール氏と、パランティアをめぐる問題を【IWJ号外】で連続してお伝えします。
ティール氏の2014年の著作『ゼロ・トゥー・ワン』は、米国でも日本でもベストセラーになっています。
日本語版は、英語版より10日ほど遅れて、NHK出版から2014年9月25日に発売され、書店・ブロガー・出版社・マスコミ・一般読者の投票によって選ばれるビジネス書大賞2015を受賞しています。
この日本語版には、エンジェル投資家(創業間もないスタートアップやベンチャー企業に対して、個人で出資する投資家)で、経営コンサルタント、『僕は君たちに武器を配りたい』の著者、瀧本哲史氏が序文を寄せており、ピーター・ティール氏を、フランシスコ・ベーコン(1561〜1626、英国経験論の先駆者。伝統や権威に依拠せず、観察と実験を重視した近代科学の方法論のパイオニアで、「知は力なり」という言葉が有名)に匹敵する人物として、大絶賛をしています。
瀧本氏は、東京大学法学部卒業後、東大大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー&カンパニーでコンサル業務に従事。現在は京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員教授にして、エンジェル投資家です。
「私は書籍の推薦依頼について、一つのポリシーを持っている。それは、『生きている人の本は決して受けない』というものである。(中略)しかし、これがあのピーター・ティールの世界同時発売の本を、先に読めた上での『序文』ということであれば、話はまったく別である。これは断るにはあまりにも強力な誘惑である。というのも、ティールは生きているうちにすでに伝説となっている人物であり、私にとっては、フランシス・ベーコン同様に(ティールもベーコンを引用している)、尊敬の念を置かざるを得ない存在だからだ」と手放しの大絶賛をしています。
また、『ほぼ日刊イトイ新聞』は、発売を記念してティール来日トークイベントを開催し、糸井重里氏との対談も行われました。糸井重里氏は本書を2回通読したといい、「ひさびさに興奮させてくれる本だった」と、次のように絶賛しています。
「『ゼロ・トゥ・ワン』は、ひさびさに興奮させてくれる本だった。
自信たっぷりな断定に満ちた語り口なのだが、強気な調子とは裏腹に、言っていることは、ぼくにはしごく真っ直ぐなことに思える」。
- 『ゼロ・トゥ・ワン』対談(『ほぼ日刊イトイ新聞』、2026年5月17日閲覧)
この本は、ティール氏が、スタンフォード大学で行った起業に関する講義録をもとにまとめられており、スタートアップ(革新的なアイディアや技術を使って、起業し、急成長を目指す)企業のための「バイブル」扱いされています。
本の帯で「改善ではなく創成を」と謳う同書は、「健全なビジネス書」として読まれていますが、「創造」のあとに「独占」をという主張には、注意が払われていません。
また、現実のイノベーションの多くは、机上のアイディアではなく、「ものづくり」の現場における絶えざる「改善」によって生じるものです。
ピーター・ティール氏の『ゼロ・トゥ・ワン』というスローガンは、地道な製造業の現場をまったく知らない人物の戯れ言のように聞こえます。製造業が空洞化してしまった現在の米国を象徴する人物であり、思想であり、主張であるといえます。
ピーター・ティール氏については、これまでもIWJでお伝えしてきています。
- 【「影の米国大統領」とまで呼ばれるペイパルマフィアの「ボス」ピーター・ティール氏が、高市早苗総理を「表敬」訪問!】(日刊IWJガイド、2026年3月9日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20260309#idx-5
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/55487#idx-5
ピーター・ティール氏は、テックビジネスの業界で圧倒的な支持を集めているだけでなく、トランプ大統領の顧問を務めるなど、政治的影響力があり、さらには思想界でもカリスマ扱いされています。
例えば、作家の橘玲氏は、「世界を変える唯一の思想」という自信満々の副題をつけた著書『テクノ・リバタリアン』(中公新書)の中で、ピーター・ティールを「数学的に把握する者たち」が「テクノ・リバタリアン」であり、その代表格がピーター・ティールであるとして、こう述べています。
「リバタリアンは『自由原理主義者』のことで、道徳的・政治的価値の中で自由を最も重要だと考える。そのなかできわめて高い論理・数学的知能を持つものがテクノ・リバタリアンで、現代におけるその代表がイーロン・マスクとピーター・ティールだ」。
ここまでならば、ああ、そうですか、と聞き流して、通り過ぎればすむ話ですが、次のような言葉に出くわすと、そういうわけにはいかなくなります。
「日本では残念なことに、いまだに『思想』というと、孔子や仏陀やプラトン、カントやマルクス、あるいは1980年代に流行したポストモダンのフランス思想のことだと思われているが、科学とテクノロジーの水準が指数関数的(エクスポテンシャル)に高度化したことで、これらはすべて過去の異物になった(進化論を無視して、人間や社会を語ることに何の意味があるのか)。
その結果、いまや世界を変える思想はリバタリアニズムだけになっている。このように言い切れるのは、Google、Amazon、Meta(Facebook)など、プラットフォーマーの創業者、チャットGPTなどのAI(人工知能)や、ビットコインなどで使われるブロックチューンの開発者がみなテクノ・リバタリアンだからだ」。
ピーター・ティールのように、自由主義は、平等を志向する民主主義とは相いれないと、民主主義を否定する自由至上主義者=リバタリアンだけが、シリコンバレーで働いているなどという「事実」は、誰も検証していませんし、検証できるものでもありません。
筋金入りのデモクラット(民主主義者)や、神の下の平等を信じる一神教徒や、アジアの国々から来た、母国に対するナショナリズムを忘れていない理工系の秀才も、多数、働いているはずです。シリコンバレーには、リバタリアンしかいないなどと言いきれるはずがありません。
しかも、そのような適当な推定根拠として、「今や世界を変えると思える思想は、リバタリアニズムだけ」だなどと断言するのは、いくらなんでも、論理の飛躍です。
シリコンバレーのビックテック企業が、世界を変えているように見えるとしたら、あくまで彼らが開発したテクノロジーによってであり、彼らの思想など何の関係もありません。



































