「スパイ防止法の導入について、どのように考えているか?」とのIWJ記者の質問に、「スパイ防止法とよく言われるが、どんな情報を、どのような行為を罰するのか、どういう量刑にするのかということが明らかにされないまま、言葉だけが躍っている。イメージだけで議論するというのはいかがなものか」と岩屋外務大臣~7.29 岩屋毅 外務大臣 定例会見 2025.7.29

記事公開日:2025.7.31取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

※25/8/1 テキスト追加

 2025年7月29日午後3時52分より、東京都千代田区の外務省にて、岩屋毅外務大臣の定例会見が行われた。

 会見冒頭、岩屋大臣より、外務省の機構改革、日韓外相会談及びワーキング・ディナーについて、報告があった。

 続いて、各社記者と岩屋大臣との質疑応答となり、「外国勢力からの選挙介入」、「パレスチナ国家承認」、「中国における邦人拘束」、「西サハラ(ポリサリオ戦線)のTICAD(アフリカ開発会議)参加」、そして、「石破総理の続投方針」について、質問があった。

 IWJ記者は、「スパイ防止法」の制定をめぐる国会等での議論について、以下の通り、質問した。

IWJ記者「スパイ防止法について、2点、質問します。

 2025年6月12日の参議院外交防衛委員会で、自民党の高市早苗氏らが、諸外国と同水準のスパイ防止法制定を提言し、これに対して岩屋大臣は、『国民の基本的人権に配慮しつつ、多角的に検証すべき』であり『国民の十分な理解が得られることが望ましい』との見解を示されました。

 大臣の、スパイ防止法についての考えについて、もう少し具体的に教えていただけますでしょうか?

 また、参政党の神谷宗幣代表や、日本保守党の北村晴男氏らが、秋の臨時国会でのスパイ防止法の成立を目指して、保守派の国会議員との間で意見交換を開始した旨、X(旧ツイッター)に投稿しております。

 大臣は、こうした動きをどのように御覧になっているでしょうか?」。

 この質問に対し、岩屋大臣は、以下の通り答弁した。

岩屋大臣「まず、政府としては、国の重要な情報の保護を図るべく、カウンターインテリジェンスの取組みを強化するなど、必要な対策を講じてきているところです。

 『スパイ防止法』とよく言われますけれども、いわゆる『スパイ防止法』であって、その中身は何なのかということが、必ずしも明確ではありませんので、イメージだけでこれを議論するというのはいかがなものかと、私は考えているところです。

 我が国の情報保護については、私はこの間、かなり前進をしてきたと考えておりまして、例えば、特定秘密保護法、この時も大変な議論になり、常時国会がデモ隊に取り囲まれるという状況の中で、激しい議論が交わされましたが、制定されました。

 私は、衆議院の情報監視審査会の最初からのメンバーでして、のちに会長も務めさせていただきましたが、各省庁にまたがっている、いわゆる『特定秘密』については、適正に、現在、管理されていると考えております。

 そのほか、防衛機密あるいは日米同盟に関する機密等については、既に現行法によってカバーされております。

 これに加えて、経済安全保障の情報保護法ができまして、セキュリティ・クリアランスの制度もスタートしておりますし、機密保護・情報保護ということに関しては、かなりしっかりとカバーされてきていると思います。

 特定秘密保護法は、量刑については、最高で10年の懲役、1000万円以下の罰金ということになっておりますし、そういう様々な現行法によって、いわゆる国家機密なるものがカバーされている中で、しからば『スパイ防止法』というのは何を言っているのか、どんな情報を、どのような行為を罰するのか、どういう量刑にするのか、ということが、この段階では明らかにされていないまま、言葉だけが躍っているという状況ですので、これは多角的に、慎重に検討していく必要があるということを申し上げているところです」

 IWJ記者は、質問の中で、「参議院外交防衛委員会で、自民党の高市早苗氏らが諸外国と同水準のスパイ防止法制定を提言した」と述べたが、これは誤りであった。

 正しくは、「日本維新の会所属の柳ヶ瀬裕文氏が、岩屋大臣への質疑の中で、高市氏がスパイ防止法の制定を提言した(提言提出は2025年5月28日)(※)ことに言及しつつ、岩屋大臣のスパイ防止法制定に対する慎重な姿勢の理由を質した」というべきであり、訂正させていただきます。

 岩屋大臣は「様々な現行法によって、いわゆる国家機密なるものがカバーされている」と、現状を肯定しているが、高市氏は、「特定秘密保護法や、重要経済安保情報保護・活用法など、機密情報の取り扱いに関する現状の法体系だけでは不十分であり、『スパイ活動』に関する規定を追加することが必要・重要である」としており、両者の主張は、真っ向から対立している。

 問題は、「スパイ」とは、どこの国の人間を指すのか、指さないのか、という点である。中国や北朝鮮の人々をスパイ視すれば、当然、カウンターの動きも強まる。また、同盟国といっても、永遠の同盟などなく、米国をはじめとする「スパイ」組織の活動を監視の対象に含めるのか否か、という議論はまったく出てきていない。日本を自由に出入りできて、活動内容がまったく見えないのは、間違いなく、米国のCIA、米軍の諜報機関(DIA)である。米軍基地内は治外法権であり、スパイ活動が行われても、何も手出しもできない。

 また、日本でスパイ活動の取り締まりに強権をふるうことが認められていないのは、戦前の憲兵や特高警察などによる、「防諜」の名を借りた、反政府的な人々への監視や盗聴や弾圧がまた繰り返されるかもしれないという懸念によるところが大きいという、人権擁護的な部分もある。

 「スパイ防止法」の制定を急げ、という人々は、米国をはじめ、同盟国の諜報活動をどうするのか、どこまで認め、どこまで制限するのか、そして、人権を守ることはできるのか否か、回答する義務と責任がある。

 会見の詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

■ハイライト(IWJ記者質問部分)

  • 日時 2025年7月29日(火)15:52〜
  • 場所 外務本省会見室(東京都千代田区)

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