2024年12月17日午後5時30分より、東京都千代田区の外務省にて、岩屋毅外務大臣の定例記者会見が行われた。
冒頭、岩屋大臣より、12月16日に東京で開催された、第9回日本ウクライナ経済合同会議参加のため訪日中のユリヤ・スヴィリデンコ・ウクライナ第一副首相兼経済相と会談を行った旨の報告があった。
- 岩屋外務大臣とスヴィリデンコ・ウクライナ第一副首相兼経済相との会談(外務省、2024年月16日)
岩屋大臣は、スヴィリデンコ氏が参加した日本ウクライナ経済合同会議を契機として、「日本企業によるウクライナの復旧・復興への参画が、一層進展することを期待しており、(中略)ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現や、ウクライナの復旧・復興に向けて、今後とも、官民一体となって取り組んでまいりたい」と抱負を語った。
復興の支援をすることは、まことに大事なことだが、今は戦争中である。停戦してからでないと、建物でも、インフラでも、復興した途端にまた爆撃されて破壊されてしまい、まったくの無駄になりかねない。
大臣からの冒頭報告に続いて、各社記者と岩屋大臣との質疑応答となった。
他社の記者からの質問は、「ウクライナ情勢(北朝鮮兵死傷者)」、「石破総理とトランプ次期大統領の会談」、「トランプ次期大統領と孫正義氏の面会」、「臨時国会での審議内容(補正予算、政治資金規正法の再改正など)」、「次期駐日米国大使人事」、そして、「シリア情勢(ゴラン高原入植拡大)」など多岐にわたった。
IWJ記者は、12月3日の会見での「ウクライナ政府の汚職」問題について、岩屋大臣の認識を質すため、再度、質問した。
IWJ記者「大臣は、12月3日の会見で、ウクライナの汚職の実態について『役人の支援金横領額は、最大50%』というポーランドの元労働副大臣の発言を『まったく承知していない』とされ、肝心のウクライナの汚職の現状を大臣自身が認識しているか否かについては言及されませんでした。
IWJは、都内で、今年、G7司法大臣会合を主催した法務省の『ウクライナ汚職対策タスクフォース』に直接取材し、『G7各国と、日本国内では、外務省も含め、ウクライナの厳しい汚職の現状については、関係者全員の認識が一致している』との説明を得ました。
ウクライナの汚職は、G7各国の共通認識であり、国内では、関係各省庁が共有している問題です。にもかかわらず、『まったく承知していない』として、使途の追跡調査も行わず、総額1兆8000億円にも上る日本国民の血税を汚職と横領の泥沼に投げ込むことは許されないと考えますが、ご説明をお願いいたします」
この質問に対し、岩屋大臣より、以下の答弁があった。
岩屋大臣「まず、ご指摘のような、貴社と法務省とのやり取りについて、私として、外務大臣として、お答えする立場にありませんが、私は、ご指摘の内容は当たらないと考えております。
確かに、かつて、ウクライナには、汚職というものがはびこっていることが、言われた時があったと承知しておりますが、日本政府としては、これまで行ってきた、また、これからも行っていく、対ウクライナ支援が適切に実施されることが重要だと考えておりまして、ウクライナ政府を初めとした関係機関と密接に連携して然るべく対応を行ってきているところでございます。
今後とも、こういう取組を、しっかり継続していきたいと思っております。
また、『かつては』、という話を今しましたが、現在、ウクライナは、汚職対策をはじめ、司法、企業統治といった分野における改革の実施に取り組んでいると承知しておりまして、我が国としても、このようなウクライナの取組を、しっかり支援していきたいと考えているところです」
IWJ記者は、以下の通り、質問を続けた。
IWJ記者「関連で。今の話を聞くと、法務省と外務省の間に、認識の乖離みたいなのがあると思うんですけど、それは、どういうふうに…、法務省の方にあわせて…、法務省が間違っているのか、岩屋大臣の意見の方が正しいのか」
岩屋大臣「法務省と、特にこの点で認識をすり合わせようという考えはありませんが、先ほども申し上げたとおり、我が方としては、ウクライナ支援が適切に実施されるということが、言うまでもなく、何より重要なことでございますので、そのことをしっかり念頭に置いて、これからも、その取組をしてまいりたいと考えております」
IWJ記者の質問にもある通り、法務省の「ウクライナ汚職対策タスクフォース」担当官は、IWJの取材に対し、「ウクライナが非常に、厳しい汚職の状況にあるということは、関係者全員が認識一致した上で、取り組みを実施しているところです」と明確に回答した。
つまり、「ウクライナ支援」を名目とした、日本国民の血税の垂れ流しが現在進行形で行われている可能性が高いということである。
やはり、ウクライナへの支援金の使途を追跡・把握した上での早急な見直しが必要ではないだろうか。
G7各国の下部機関として、「ウクライナ汚職タスクフォース」という機関が存在し、部内で、G7の法務大臣が集まって会合を開いたのは、12月5日と6日のことである。法務省のHPにも掲載されている。
- ウクライナ汚職対策タスクフォース第一回会合を開催しました(法務省、2024年12月9日)
岩屋外相は、ウクライナに汚職がはびこっているのは「かつて」の話だとして、「過去」のことであるとしてしまい、現在については、またしても「承知していません」と言い切った。
しかし、現在のウクライナが、過去よりも、犯罪が横行し、賄賂や横領、横流しが横行している現状があるからこそ、主要支援国であるG7としては、この問題を重視して汚職問題に取り組むタスクフォースを立ち上げたのではないだろうか。
また、法務省は外務省とも認識を共有していると、と明言したが、岩屋外相は、「汚職はかつての話」として一蹴してしまい、深刻な現状の認識を共有していることは、頑なに拒み通した。
あまりに話がおかしい、としか言いようがない。
先日、ウクライナ問題については、日本でも第一人者の東京大学法学部の松里公孝教授は、岩上安身によるインタビューで、「(ウクライナとロシアの間で長い接線をはさんでにらみあった時)本来であれば、第1戦線に兵力を集中するにしても、第2戦線に防衛線を持っていないとダメなはず」だとした上で、以下のように明確に指摘した。
「スロヴィキン防衛線、ロシアが22年の秋に(ウクライナ軍に)押されて、ハリコフとかヘルソンとかから撤退した時に、これ以上は進ませないということで、ドニプロ川を境にして防衛線(第2戦線)を作ったんですね。
あれが、ウクライナ軍はできないんですよ。(ウクライナは)資材を横流したり、資金を横流ししているから。
ハリコフも同じですよ。本来は防衛線(第2戦線)を作るはずだったんだけど、資材とかお金が、どこかに消えちゃうんですね。
これも、別にロシアが言ってることじゃなくて、ウクライナの中で非常に批判されてることです」。
ウクライナが戦争に負けるのは、負けるべくして負ける理由があるからである。
汚職の横行も、敗北の理由のひとつだ。
そういう国に日本国民の血税を投げ込んでいる、という自覚が外務大臣にまったくない、ということは、国民にとっては大変な厄災である。
しかも、G7各国や日本国内の法務省との共通認識について認めないという点も、理解しかねる。
国民の血税の無駄使いは、絶対に許せない。
会見内容の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。