IWJ代表の岩上安身です。
本日午後6時半から首相官邸で行われる、岸田文雄総理記者会見に、抽選で当選し、参加できることになりました。司会者から指名され、質問できるかどうかはわかりませんが、頑張ってまいります。
ロシアのメディア『RT』に、6月10日付けで、「ファシズムのためのペトリ皿(シャーレ、微生物培養実験に用いるガラス製平皿): ウクライナはいかににして、西側のネオナチを引き寄せる磁石となったのか」と題した検証記事が掲載されました。
副題には「戦争で荒廃したこの東ヨーロッパの国は、地球上で最も忌まわしい人々のメッカとなっている。これは彼らの母国にどのような脅威をもたらすのだろうか?」と書かれています。
「戦争で荒廃したこの東ヨーロッパの国」とは、もちろんウクライナのことです。この記事は、ウクライナの戦場(ロシアによる侵攻以前のドンバス紛争も含めて)が、西欧諸国のネオナチや白人至上主義者などを惹きつけ、その極右過激思想を強化・増殖させる「培養装置」として機能していることを示しています。
さらに「これは彼らの母国にどのような脅威をもたらすのだろうか?」とあるように、ウクライナの戦場に傭兵・外国人志願兵として集まった、こうしたネオナチや白人至上主義者たちが、その後自国に戻り、殺人事件を引き起こすなど、社会に与える不安を懸念しています。
ロシア国営メディアである『RT』が報じる記事は、ウクライナ侵略を正当化するためのロシアのプロパガンダであり、「ウクライナのネオナチ」は、プーチン大統領によるフェイクニュースだという言説が、特に日本においては顕著に見られます。ウクライナのゼレンスキー大統領は正義の聖戦を戦うリーダーであり、アゾフ連隊などの東部の最前線で戦う準軍事組織は、命を賭して侵略者に立ち向かう英雄だという主張です。
『TBS』の『報道特集』は、昨年4月23日の放送で、「ロシアの戦争プロパガンダを検証」と題し、金平茂紀キャスター(当時)が、アゾフ連隊創設メンバーのひとりで、キーウのマクシム・ジョリン司令官にオンラインでインタビューを行いました。
「ロシア側は、アゾフ連隊のことを『ネオナチズムの象徴だ』というふうに非難していますけど、怒らないでくださいね」と、遠慮がちに切り出した金平氏に対し、ジョリン司令官は「そういうことを聞いても、もう怒りません。この嘘をもう8年くらい聞いています。ロシアはあらゆる資源や資金を使って、アゾフ連隊をあたかもナチスやファシストだと全世界の人に広めようとしてきました」と答え、アゾフがネオナチだというのは、ドンバス紛争が始まってからずっと続く、ロシアによるプロパガンダだと主張しています。
さらに金平氏が「そうすると、アゾフ連隊は極右団体だったというような情報は、フェイクニュースだっていうふうに思っているんですね?」と質問すると、ジョリン司令官は「もちろん、ロシアの真っ赤な嘘です。今ナチズムを体現している人間はただ一人、それはプーチンです」と答えました。
しかしこのインタビュー中、ジョリン司令官の背後には、ナチス親衛隊の象徴である「ヴォルフスアンゲル」のはっきり描かれたアゾフの連隊旗が大きく掲げられていました。
一方で、このインタビューの直前に流された、アゾフ連隊を紹介するビデオでは、アゾフ連隊旗、隊員の腕のワッペン、アゾフ連隊基地の入り口に掲げられた連隊のマークには、ことごとくぼかしが入れられていました。
アゾフがネオナチでないなら、ビデオにぼかしを入れる必要などなく、逆にぼかしを入れなければ「アゾフはネオナチでない」という番組の意図に合わないのであれば、ジョリン司令官の背後に掲げられた連隊旗をどう説明するのか、という矛盾が生じています。
IWJはこれまでも、ウクライナのネオナチについて、繰り返し報じてきました。ぜひ、以下の特集ページも御覧ください。
また、岩上安身は2022年3月と4月に、ウクライナのネオナチについて、国際政治学者の六辻彰二氏に3回連続インタビューを行っています。このインタビューから抜き出した、以下のIWJのYouTube動画も、ぜひあわせて御覧ください。
- 2022.3.25【分割5】トランプ政権時代ロシアはすでに事実上ウクライナ東部を手に入れていたトランプ復活の狼煙としてのウクライナ侵攻―米ロ‘蜜月’は再生するかより国際政治学者 六辻彰二氏インタビュー
この『RT』の記事の注目すべき点は、フランス、米国、イタリアなど、西側のメディアが報じた記事を元に、それぞれの国で起きたネオナチ思想による犯罪者とアゾフなどウクライナの準軍事組織とが連絡を取り合っていた事実と、こうした海外のネオナチがウクライナの戦場に集まっている事例をあげていることです。そして、これらの西側メディアは、「親露派」などと揶揄される独立メディアだけでなく、『ワシントン・ポスト』『ル・モンド』『ポリティコ』などの大手メディアも含まれていることです。
記事を読むと、今後、世界中でイスラム過激派に代わり、ネオナチがテロの脅威となることが予感させられます。ウクライナのネオナチを否定することは、こうしたネオナチによるテロの拡散を放置することにもなります。それが現実となった時、ウクライナ贔屓のために「ウクライナにネオナチはいない」と報じた日本の大手メディアの罪深さは、後戻りできないものとなるでしょう。
IWJはこの『RT』の記事を、独自に全文仮訳し、原文に付けられた引用元のリンクを確認し、注として併記しました。
以下は、6月10日の『RT』に掲載された「ファシズムのためのペトリ皿(シャーレ、微生物培養実験に用いるガラス製平皿): ウクライナはいかににして、西側のネオナチを引き寄せる磁石となったのか」と題する記事の全文仮訳です。ぜひ、ご一読ください。
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「4月末、ウクライナ軍に傭兵として参加していた2人のフランス人ネオナチ、アラン・ヴィネロンとギョーム・アンドレオーニが、母国フランスで逮捕され、有罪判決を受けた。2ヶ月前、彼らのうちの1人は、処刑されたロシア人捕虜3人の写真を、ソーシャルメディアに投稿していた。しかし、ヴィネロンとアンドレオーニは、戦争犯罪ではなく、ライフルスコープや機関銃用弾倉などの武器や弾薬を本国に密輸しようとした罪で、拘束された。短い裁判のあと、彼らはそれぞれ15ヶ月の懲役刑を言い渡され、そのうち9ヶ月は、条件付きで服役することになった。
この事件は、これから起こることの最初の兆候にすぎない。フランスのメディア(※IWJ注1)によると、ウクライナでの武力紛争にはフランス人約400人が参加している。このうち約100人が戦闘に直接関与しており、約30人が有名な極右過激派だ」。
(※IWJ注1)
フランスの独立デジタルメディア『メディアパート』が、2023年4月24日に報じた記事「ウクライナ戦線から帰国したネオナチ2人がフランスで逮捕される」に、次のように書かれている。
「400人のフランス人が、ウクライナの戦争に参加した。その中で、極右のメンバーとして知られている約30人が戦ったと言われている。元フランス軍人を含む2人の武装ネオナチが、帰国後、逮捕されたばかりだ」
- Deux neonazis de retour du front ukrainien arretes en France(MEDIAPART、2023年4月24日)
「過激派のネオナチの帰国が、間もなく帰国する可能性に直面しているのは、パリだけではない。観測筋は、ウクライナにいる外国人戦闘員の志願者数が、数千人に達していると、指摘している(※IWJ注2)」。
(※IWJ注2)
2023年1月18日付け『ワシントン・ポスト』は、「民主主義の擁護者とランボー志望者: ウクライナの志願外国人戦闘員」と題したレポート記事で、以下のように報じている。
「外国人兵士を監視するアナリストや学者によると、こうした外国人兵士は推定1000人から3000人が活動しており、そのほとんどが国際軍団の3つの大隊に所属していると考えられているが、その数はおおよその目安であることを強調している。ウクライナ軍は、志願兵の詳細や人数の推定を求める要請には応じなかった」
- Democracy defenders and Rambo wannabes: Ukraine’s volunteer foreign fighters(The Washington Post、2023年1月18日)
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