【IWJ号外】驚くべき偏向ぶり! NHKが発表以来1ヶ月無視し続けたシーモア・ハーシュ氏のスクープ記事を、「中国が連日報じる、ロシアと連携した情報戦」という文脈で紹介! 2023.3.10

記事公開日:2023.3.10 テキスト
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 IWJ代表の岩上安身です。

 上述の2月8日に発表されたシーモア・ハーシュ氏のスクープについて、NHKは「中国国営『中国中央テレビ』が、約1ヶ月間、毎日夜7時のメインのニュースで取り上げている」とした上で「ロシアと連携した中国による情報戦の一環ではないか」と、批判的に報じました。

 ぜひご一読ください。

 報道があったのは、NHK BS1で、3月6日午後10時から放送された『国際報道2023』(NHK総合で、6日午後11時45分と、7日午前4時20分から再放送)の中の、油井秀樹キャスターによる『油井’s VIEW』というコーナーです。油井キャスターは、「前ワシントン支局長、北京・イスラマバードなどに14年駐在」という肩書きの人物です。

 この中で油井キャスターは、ノルドストリーム爆破事件とハーシュ氏の記事について一通り説明したあと、「(ハーシュ氏の記事については)ホワイトハウスは直ちに誤報と発表し、報道を完全に否定。ま、このためかですね、欧米のメディアはあまり伝えていないんですが、対照的なのは、ロシアと中国、なんです」と、ハーシュ氏の記事の真実性自体を小馬鹿にしたような口ぶりです。

 続いて、数日前の『中国中央テレビ』のニュースが断片的に流されるのですが、その紹介の際にも「先週は、次のような報道ぶりでした」と、批判的なニュアンスを滲ませています。

 ところが、ここで流された「先週の『中国中央テレビ』のニュース」は、次のように、IWJでも報じてきた、しごく真っ当なものでした。ニュースは中国語ですが、日本語字幕を以下に引用します。

アナウンサー「外国の専門家は『ノルドストリーム』の破壊は米国が自国の利益のために欧州に仕掛けた『経済戦争』だという」

専門家「これはどの国もできることではない。当然、アメリカが行った。

 破壊することで利益を得られ、同時に欧州とロシアの関係を切ることもできる」

アナウンサー「ドイツの大使は”『ノルドストリーム』の破壊は到底受け入れられない――世界の安全を脅かし深い懸念をもたらす”と表明した。

 フィンランドの報道によると、欧州の米国へのエネルギー依存度はさらに増しているという」

 この『中国中央テレビ』のニュースをみた、NHKのスタジオの酒井美帆キャスターは、「こうして見ますと、アメリカを批判する報道が目立っていますね」とコメント。これに対して、油井キャスターが次のように応じて、このコーナーは終了します。

油井キャスター「はい、そうなんですね。パイプラインが破壊されたことで、ヨーロッパがロシアからではなく、アメリカから天然ガスを輸入することになって、アメリカが利益を得ているという指摘が、目立っています。

 一方ですね、欧米の間からは、根拠もなくアメリカ犯行説を流しているとして、中国がロシアと連携して情報戦を展開している一環ではないかという指摘も出ているんです。

 重要なのは、言うまでもなく、真相です。関係当局は現在も捜査を進めていて、真相がどこまで解明されるのか、その行方は各国の外交、安全保障にも影響を与えそうです」

 油井キャスターは「欧米の間からは、根拠もなくアメリカ犯行説を流しているとして、中国がロシアと連携して情報戦を展開している一環ではないかという指摘も出ている」と、それこそ誰が言っているのか根拠も示さず、他者の指摘を紹介する形で、中国とロシアの情報戦の一環だと印象づけているように見えます。

 しかし、紹介された『中国中央テレビ』のニュースをよく見ると、引用されているのは油井キャスターが「欧米のメディアはあまり伝えていない」と語ったはずの「フィンランドの報道」です。また『中国中央テレビ』がインタビューしている「専門家」は、スウェーデンの「平和と未来研究のための多国籍財団(Transnational Foundation for Peace and Future Research)」の共同設立者であるヤン・オーバーグ(Jan Oberg)氏です。

 欧州メディアの報道、欧州の専門家のコメントをそれぞれ引用し、出典も明らかにして放送しているのに、中国とロシアが結託しての「情報戦」とは、どこの陰謀論者の戯言か、と呆れざるをえません。ジャーナリストとしての良心やプライドがまったく感じられず、それ自体、非常に安っぽいプロパガンダだと感じさせられます。

 シーモア・ハーシュ氏の記事をめぐっては、中露や西側の独立系メディアばかりではなく、米国の政治専門紙『ザ・ヒル(THE HILL)』も、2月24日付けでシーモア・ハーシュ氏へのインタビュー動画を公開しています。

 何よりも、ハーシュ氏が、ユダヤ系米国人であること、彼が、ロシアにも、中国にも、こびる必要のない人物であり、「ロシアと中国が結託しての情報戦」に彼が一役買う理由がまったくないことを、NHKは一切考慮していません。

 ハーシュ氏の衝撃的な内容の記事が公開されてから1ヶ月も無視し続けた上、連日詳細な検証を続けている中国メディアを根拠なく「中露が連携した情報戦」だと印象付けようとするNHKの方こそ、「情報戦」の足軽として、駆り出されているように見えます。

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