IWJ代表の岩上安身です。独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ!ぜひご一読ください。
ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ! ノルドストリームの破壊は2021年末から2022年の最初の数カ月の期間に、バイデン政権が計画を立案していた!!(その1)
米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が、ノルドストリーム・パイプラインの爆破は米国が行ったという大スクープを報じました。
ハーシュ氏の記事は、「米国はいかにしてノルドストリーム・パイプラインを破壊したのか?」というものです。
- How America Took Out The Nord Stream Pipeline(シーモア・ハーシュ氏のホームページ、2023年2月8日)
記事の副題に「ニューヨーク・タイムズ紙は『ミステリー』と呼んだが、米国は今まで秘密だった秘密海上作戦を実行した」とあります。かつて自分が勤務していたこともあるメインストリームメディアの代表格『ニューヨーク・タイムズ』の報道姿勢が、「腰くだけ」であることへの皮肉でしょう。
ハーシュ氏は、1969年、ベトナム戦争中のウィリアム・カリー中尉によるソンミ村虐殺事件の暴露を皮切りに、CIAの国内スパイ計画「ケイオス作戦」の暴露、アブグレイブ刑務所における捕虜虐待事件、大韓航空機事件の内幕など、数々のスクープをものにしてきた現役最高峰の独立調査報道ジャーナリストです。
1937年シカゴ生まれ。現在85歳にしてなお現役です。1960年代から2020年代まで7つのディケイド(10年間)にわたって、世界を震撼させ、政治の方向性を実際に動かしてしまうスクープを発表し続けてきた彼が、ジャーナリストとして、「生けるレジェンド」と呼ぶにふさわしいのは当然のことです。
しかし、それと同時に、自分が生まれ育った母国である米国の暗部をこれだけ暴き続けながら、今なお生きているという点においても、彼は「生けるレジェンド」だといえるでしょう。彼を生かしておいたという点で、米国という国には、「言論の自由」「報道の自由」を認める「寛容」と「良心」が、まだわずかに生き残っていたのだ、という証明となると思います。もちろん、そのことによって、ハーシュ氏のために暴かれた米国政府や米国軍のグロテスクな「正体」が、免罪されるわけではありません。
以下、IWJは、ハーシュ氏のスクープ記事全文を3回に分けて仮訳して記事内容をお伝えします。
今回は、その1です。
「フロリダ州南西部のパンハンドル、アラバマ州との州境から南へ約70マイル、かつては田舎道だったパナマシティに、米海軍のダイビング&サルベージセンターはある。第二次世界大戦後に建てられたコンクリート造りの無骨な建物は、シカゴの西部にある職業高校のような外観をしている。コインランドリーやダンススクールも、今は4車線の道路を挟んで建っている。
このセンターは何十年もの間、高度な技術を持つ深海潜水士を養成してきた。かつて世界中の米軍部隊に配属され、C4爆薬を使用して港や海岸の瓦礫や不発弾を除去するという良いことも行ったが、外国の石油掘削施設を爆破する、海底発電所の吸気バルブを汚染する、重要な輸送管の鍵を破壊するという悪事を働く能力も持っていたのである。
パナマシティの同センターは、米国で2番目に大きい屋内プールを誇る。昨年の夏、バルト海の水面下260フィートで任務を遂行したこのダイビングスクールの最も優秀で最も寡黙な卒業生たちを起用するには最適の場所であった。
作戦計画を直接知る関係者によれば、昨年6月、海軍の潜水士たちは、BALTOPS 22として広く知られる真夏のNATO演習を隠れ蓑にして、遠隔操作による爆発物を仕掛け、3カ月後に4本のノルドストリーム・パイプラインのうち3本を破壊したという。
ノルドストリーム1として知られるパイプラインのうち2つは、10年以上にわたってドイツと西ヨーロッパの多くの地域に安価なロシアの天然ガスを供給してきたものである。もう一つのパイプラインはノルドストリーム2と呼ばれ、建設はされていたが、まだ稼働していなかった。ロシア軍がウクライナ国境に集結し、1945年以来欧州で最も血生臭い戦争が迫ったとき、ジョセフ・バイデン大統領は、パイプラインはウラジミール・プーチンが自らの政治的・領土的野心のために天然ガスを武器化するための手段になると考えたのである。
コメントを求められたホワイトハウスのエイドリアン・ワトソン報道官は、電子メールで、『これは虚偽であり、完全なフィクションである』と述べた。CIAの報道官、タミー・ソープも同様に『この主張は、完全に、虚偽である』と書いている」
バイデンがパイプラインの破壊を決定したのは、その目標を達成する最善の方法について、ワシントンの国家安全保障コミュニティーの内部で9ヶ月以上にわたって極秘に行われた堂々巡りの議論の後であった。
その議論の期間で問題だったのは、その作戦を実行するかどうかではなく、誰が責任を負うのかはそっちのけで、どのようにそれを実行に移すかであった。
パナマシティにある同センターの硬派のダイビングスクールの卒業生に頼るのは、官僚制の上から重大な理由があった。この潜水士は海軍に所属するだけで、秘密作戦を議会に報告し上院と下院の指導部、いわゆるギャング・オブ・エイトに事前に説明しなければならない米国の特殊作戦司令部のメンバーではない。
バイデン政権は、2021年の終わりから2022年の最初の数カ月にかけて計画が立案されたため、リークを避けるためにあらゆる手段を講じていた。
バイデン大統領とその外交チーム(ジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官、トニー・ブリンケン国務長官、ビクトリア・ヌーランド国務次官)は、ロシア北東部のエストニア国境に近い2つの港からバルト海海底750マイルを並走し、デンマーク・ボーンホルム島近くを経てドイツ北部で終着する2つのパイプラインに、一貫して声高な敵意を抱いていた。
ウクライナを経由しないこの直通ルートは、ドイツ経済にとって好都合だった。工場や家庭の暖房に十分な量の安いロシアの天然ガスが豊富にあり、ドイツの流通業者は余ったガスを西ヨーロッパ中に売って利益を得ていたのだ。ロシアとの直接対決を最小限に抑えるという米国の公約を破るような行動を、政権自身がとったことになる。そのため、秘密裏に進める必要があった。
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