9月14日、日銀が、為替介入の準備のために市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施した。13日、14日の円相場は、142円から144円の間で推移していた。
円相場は3月上旬の1ドル=114円台から半年で30円下げたことになる。年間ベースの下落率にすれば、変動相場制に移行した1973年以降で最大となった、と『日本経済新聞』は指摘した。
- 日銀が「レートチェック」 為替介入の準備か(日本経済新聞、2022年9月14日)
この急激な円安を受けて、岩上安身がエコノミスト・田代秀敏氏に緊急インタビューを行った。
9月16日午後6時半より、「急速な円安は『アベノミクス』の経済的帰結!? 通貨も株式も国債も売られる『日本売り』が起きている!」と題して、岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏への緊急インタビューを生配信した。
冒頭、岩上安身は、急激な円安が起きているだけではなく、株式と国債も売られる「トリプル安」が現実になってきた、と危機感を表した。
岩上「この何ヶ月間かのあいだ、円安が急激に進んでおります。これまでであれば、円安に振れれば、その代わり株価が上がるなど、メリットもありました。
しかし、今起きていることは、これまでにない程の水準であると同時に、極めて破壊的なものであるという危機感を持って、テレビでもニュースを流しているところは、ほとんどないと思います」
岩上は、田代氏に、なぜテレビに出てくるエコノミストは、この円安危機について、多くを語らないのだろうかと尋ねた。田代氏は、金融機関に所属していれば「会社の利益に貢献しなきゃいけませんから」と答えた。
田代氏はメディアは、政府発表の数字とグラフしか掲載しないと指摘した。
田代氏は、日本のメディアと「専門家」が報道・言及していない問題のひとつとして、国内総生産(GDP)と国内総所得(GDI)の値の開きについて、指摘した。
田代氏「今月8日、国内総生産統計の2次速報(2022年4月から6月)が発表されたんですね。新聞では、GDPの成長率の年率換算値が前期比(2022年1月から3月)で3.5%増えた、めでたし、めでたし、と。コロナ前の水準を回復した、と書いてありました。
その中(内閣府の発表)には、たくさんの統計が入っていて、『国内総所得(GDI)』の統計も入っています。
こちらの成長率は、内閣府が指定している年率換算公式を使って自分で計算してみると、なんと、0.00パーセント。実は本当はマイナス0.003パーセント。これは自分で計算すればすぐわかります。
ところが、日本のメディア、新聞もそうですが、政府が発表してない数値は報道しないんですね。(中略)グラフも自前で作ったのは掲載しない。政府発表で付いてたグラフだったら掲載するというんですよね。
経済活動の規模を測定するには、生産面、支払い面、(受け取った)所得面の3つの面から見ていくことができます。(中略)
GDPが成長しているということは、生産が増えているということです。にもかかわらず、GDIが伸びていない(所得が増えない)ということは、『働けど働けど暮らしが楽にならない』という状況です。
GDPとGDIの差が乖離するということは、国内で新たに作り出した経済的な価値は3.5%増えているのに、受け取った所得は全然増えていないということです。
GDPとGDIの差が、3ポイントも乖離するのは、極めて稀な異常事態なんですね。でも誰もそれを指摘しません。
この3つは、国内だけを見ていれば、一致するはずですね。しかし、一致しないのは、外国との関係があります。(国内生産が増えた分を)国内で受け取らなかったということは、所得が海外に移転してるわけです。
みんなですごく頑張って、コロナ前の水準を取り戻そうと、頑張って働いて作り出したものは、コロナ前の水準を上回ったとしても、問題は、それに対する報酬は増えていないっていうことにあります。
その差の部分は、統計が間違っていなければ、外国に流出したと考えるのが一番、妥当ですね。(中略)簡単に言うと、みんな頑張って働くんだけど、『働け働けど暮らしは楽にならず』なんですね」
岩上「原因は、エネルギー資源価格の上昇ですか?」
田代氏「それだけじゃなくて、やっぱり円安によるその交易条件の悪化が大きいですよね」
田代氏はさらに、中東のLNG輸出大国であるカタールが、東京電力HDと中部電力の火力発電会社『JERA』との大型販売契約を打ち切った問題を、大きな要因として指摘した。
田代氏「カタールは、日本への液化天然ガス(LNG)の長期にわたる販売契約の更新を断りましたね。
2021年末に、25年続いた大型販売契約を打ち切りました」