岩上「それでは、次の話題に入りたいと思います。『仮想敵国』、と一応されている、北朝鮮への敵基地攻撃論には、実は『韓国の同意が必要』であるという話です。
(IWJ編集部)
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岩上「それでは、次の話題に入りたいと思います。『仮想敵国』、と一応されている、北朝鮮への敵基地攻撃論には、実は『韓国の同意が必要』であるという話です。
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衝撃を受けている方も少なくないのではないでしょうか。認識上の死角といいますか、これに気づいていない人はとても多いと思います。私も含めて。
だからこそ、先生の『直言』(※1)を読んで、そうだよなって膝を打って。それで、インタビューでお話をうかがわなければならない、多くの人に、これ、広めなければいけないという風に思いましてですね、ご連絡差し上げたような次第です」
水島氏「『北朝鮮』といいますが、朝鮮戦争が、ちょうど70年前、始まったわけですね。で、1953年に一応休戦となりましたが、戦争状態の場所であることに変わりはありません。
そして、韓国憲法3条によれば、北朝鮮は韓国の領土になっているわけです。ということは、ここを攻撃するとなった場合、それをもし、日本が勝手にやったら……
これは韓国憲法上、自国領土に対する攻撃ですから、論理的には韓国軍が日本に一緒に反撃しなければならないということになります。そういう意味で、『敵は北朝鮮である』と言いたいけれども、本当は敵は中国なんだろうと。でも、それを言わずに『敵基地攻撃能力』と」
岩上「大変なことですよね。本当に、もう、北朝鮮というのは便利な『敵』なんですよね。さして怖くない。実際には怖くないから『脅威だ、脅威だ』と」
水島氏「怖くない。トランプさんが、ああいうかたちで手の中に入れちゃったわけですから(※2)」
岩上「実際、戦端切れば、それは、あっという間に潰すことができる。北朝鮮単体であれば」
水島氏「単体であればね」
岩上「そこに中国が、ロシアが、ということになったら、また、全然話が違うことになります。先生が『タカ派の議員らは中国も「敵」といいたいところだろうが、さすがに口を閉ざしている』とお書きになっている通り、ここ重要ですよね。
『「敵」を具体的に想定できなければ、必要な兵器が決まらないのだから、「敵基地攻撃能力」の検討などできるわけがない』。
そりゃそうですよね。本当に北朝鮮だけが脅威であって、そこだけを想定するのと、いや、中国全部相手にするんだとなった時とは、その衝撃は全然違います。一体、中国全土の、どこに何をぶち込むんだ、みたいな話じゃないですか。
ほぼほぼ、不可能ですけれども、まったくもって、そういう話をうっすら想定しながら、話をごまかして進めておく。こんなの、すごく危ないことになりかねないですよ」
水島氏「コロナの中での、究極の不要不急の議論。コロナにロクに対応もしないで、一体、部会(自民党国防部会)で何やってんだと思いますね。
『敵基地攻撃能力』が、なぜ今、出てきたのか。後でもお話したいと思いますが、そこにはやはり、いろんな力学が働いている。おそらく、安倍さんの意志を代弁してる部分がある。つまり、コロナ便乗型改憲論。これが、今、出てきている」
岩上「本当だ」
水島氏「ナオミ・クラインじゃないけれども、人々が惨事に直面して思考ができない時に、これに便乗してどんどん進めてしまう。敵基地攻撃能力論は、そうした『コロナ便乗型改憲』の中の、一変形だと僕は思っています」
岩上「なるほど」
水島氏「その本質は、後で改めてお話しするとして、ここで敵基地攻撃能力論の、ひとつの大きな問題点を申し上げておきたいと思います」
水島氏「これは、韓国の、いわゆる国防省の機関紙から引用したものです。私の弟子には韓国語が読める者がいまして、私自身は全然読めないんですけども、全部翻訳してくれたんです」
岩上「韓国軍の『国防日報』という機関紙ですね。2015年6月1日付の一面に、『韓国の同意なく日本の集団的自衛権行使不可』と」
水島氏「はっきり書いてありました。韓国軍の新聞ですからね、これはスクープなんですよ。これを入手した者が訳してくれて、僕もびっくりしたわけです。当時の、国防部長官が…」
岩上「韓民救(ハン・ミング)さんとおっしゃる方ですね」
水島氏「ええ。この方が中谷防衛大臣と会議を開いたわけです」
岩上「4年4ヵ月ぶりに」
水島氏「その時、中谷防衛大臣が北朝鮮の基地への攻撃可能性に言及したのに対し、韓長官が『北朝鮮は大韓民国の領土だ』と。だから、我々の『事前協議と同意が必要』だと。つまり、韓国との事前協議なしにもできなきゃ、同意なしにもできないという、二重の縛りがあると力説したと」
岩上「もし、前協議も同意もなく、攻撃したという場合は……」
水島氏「韓国に対する攻撃になります」
岩上「ということに見なされますと」
水島氏「そういうことになるぞ、という風な、強いことを言った。ただ、割り引いて考えなければならないのは、これは一般の新聞ではないということ。『国防日報』という、いわば韓国軍だから、ある意味、韓国軍側を強く代弁している。
一方、中谷さんは微妙に逃げてるところがありました」
岩上「(パワーポイントを示しつつ)これですね」
水島氏「ええ。先ほどの『国防日報』には、中谷防衛相がどう応答したか、書いてないんですよ。実は、言質取られないように、『後日、議論しよう』と、ペンディングにしていた」
岩上「ハンギョレ(新聞)が追っかけたんですね。『これに対して中谷防衛相は「後日、論議しよう」と即答を避けたといわれる』と、こういう風に報じていると。しかも、『元日本の防衛相だったある人物は最近ハンギョレと会って「韓国の憂慮は理解するが、北朝鮮も厳然たる国連加盟国だ」と言った』と」
※[ニュース分析]自衛隊のF-35が北朝鮮のミサイル基地を攻撃したら…(HANKYOREH ハンギョレ、登録:2015-06-15 修正:2015-06-21) 【URL】http://bit.ly/2WPD6zm
水島氏「と、ハンギョレは書いています。誰かは明確にしていないけれど、『北朝鮮は国連加盟国だ』と言った、と。つまり、北朝鮮は独立国じゃないか、韓国の憲法、おかしいじゃないか、と言っちゃったわけです。
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