(中編の続き)
2018年5月21日、愛媛県は加計学園問題に関し、参議院予算委員会理事会の国政調査権の行使による要請に応じて関連文書27枚を国会に提出した。
今回提出された新文書は、2015年2月と3月に愛媛県と今治市、加計学園関係者とが会合を行った際のメモと、4月2日に地域政策課長と主幹が東京に出張した際の面会者の名刺や発言メモと出張に関する書類である。
この中に、2015年2月25日に加計孝太郎理事長と安倍総理が15分ほど面会し、「首相からは『そういう新しい獣医大学の考えはいいね。』とのコメントあり」という報告を、2015年3月3日に県が学園関係者から受けたという記載があった。
安倍総理は今から10ヶ月前、2017年7月24日の衆院予算委員会で、加計学園の獣医学部新設計画を初めて知ったのは、2017年1月20日だと明言している。愛媛県の文書の内容が事実であれば、安倍総理の答弁は真っ赤な嘘であり、安倍総理が「初めて知った」と答弁した日付よりも2年も前から、加計学園の獣医医学部構想を知っており、「いいね」と賛意を示していたことになる。
この愛媛県の文書の記述に関して、安倍総理はただちに面会の事実を否定した。揺るぎない証拠が出ても、否認してみせたのである。
また一方の当事者である加計学園は、2018年5月26日、報道機関に向けて1枚のFAXでコメントを送付してきた。コメントによると、当時の担当者に記憶の範囲で確認したところ、「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまったように思うとの事でした」などと苦しい弁明まじりに、愛媛県から出てきた文書の内容を否認している。
加計学園側は、当時は「獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探していた」とし、「構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請にきりかえれば活路が見いだせるのではないかという考え」から担当者が面会に言及した、としているが安倍総理側と平仄を合わせたであろうことは想像に難くない。
これに対し、中村時広愛媛県知事は5月27日、「一般論として偽りなら謝罪、説明し、責任者が記者会見するのが世の中の常識」と不快感をあらわにした。
また、野党各党からも「嘘の上塗り。ここまでしてつじつまを合わせなければならないのか」などの声が上がり、5月29日の衆参両院予算委員会での国会集中審議で、安倍総理に対する厳しい追及が続いた。
これより約1年前、2017年5月25日に朝日新聞のインタビューに答えた前川喜平・前文科事務次官は、内閣府から文科省に渡った「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」と記録された文書について、「私が在職中に専門教育課で作成されて受け取り、共有していた文書であり、確実に存在していた」「あったものをなかったことにはできない。公正公平であるべき行政のあり方がゆがめられた」とし、その後もその証言を貫き通した。
2017年1月に退任した前川氏は、現役の時は「面従腹背」を座右の銘とし、官僚としての務めを果たしながらも、「常に心は支配されない自由人」と自身を表現する。
前川氏の自由を尊ぶ精神、そして特に弱者や貧困に心を寄せるようになったバックボーンは何なのだろうか。前川氏の人柄から、加計問題の本質、さらに日本が向かうべき方向まで、様々なお話を岩上自身がうかがった。