日本における新型コロナウイルス対策について、当初からその問題点を指摘し続けてきた上昌広医師のインタビューをお届けする。インタビューを通じて、岩上安身は上氏から、その後の感染拡大と対応策の齟齬を予見するような、多くの意義ある提言や知見を引き出している。
岩上安身による第1回目の上昌広氏インタビューは、まだ寒さの厳しい2020年2月16日に行われた。2月13日にはすでに新型コロナウイルスによって国内最初の死亡者が出ており、上氏は、この未知のウイルスが日本社会に蔓延することを想定した上で、「データを見ながら、ダメージを最小にすることを考えるべきだ」と語った。
また、新型コロナウイルスは国内に相当入り込んでいるとし、日本政府が進めている水際対策やクラスター対策には効果が期待できないとも述べている。
だが、日本政府はこの時点ではまだ、4月に中国の習近平国家主席を国賓として迎え、7月には東京オリンピックを開催して、世界各国のアスリートや観客たちを「おもてなし」するつもりでいたようだ。今、2ヶ月経った4月末の時点でふり返ってみても、安倍政権の危機感の薄さには戦慄を覚えざるをえない。
政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の第1回目がようやく開かれたのは、このインタビューと同じ2月16日である。
3月5日になって習近平国家主席の来日延期が発表され、3月9日から中国と韓国からの入国制限をようやく強化。3月24日に、とうとう東京オリンピック・パラリンピックの延期が発表された。発表の直後から感染者数は急激に増えだし、3月29日にはタレントの志村けん氏が新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなり、日本中に衝撃を与えた。
4月7日に首都圏を含む7都府県に緊急事態宣言が発令(その後、対象地域が拡大)されると、日本社会は一気に自粛ムードに包まれた。期間は一か月後の5月6日までだが、状況によっては延長の可能性もあるという。
4月27日現在、感染者数は1万1311人(うち死亡者351人)。せきや発熱があっても、保健所を通してPCR検査を受けるのは相変わらずハードルが高く、単身赴任中の男性が体調を崩して部屋で亡くなったあとに検査して、新型コロナウイルスへの感染がわかったケースもある。
※<新型コロナ>単身赴任男性、無念の孤独死 発熱6日後検査、死後コロナ判明(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042602000150.html
上氏は、「PCR検査を希望する全員が、保険診療あるいは国の負担で検査を受けられるようにするべきだ」と、この第1回目のインタビュー時にも語っていたが、検査に関する状況はその頃と今とあまり変わっていない。保健所の対応を待っていてはPCR検査になかなかたどりつけないため、自治体が地元の医師会と協力して、独自に検査を行う動きも各地で広がっている。
- PCR検査用検体採取の混雑緩和のため、院内感染リスクが低いとされる屋外テントによる巡回診療(ウォークスルー方式)を実施!~4.20ドライブスルー、PCR検査会場の様子(葛飾区・奥戸総合スポーツセンター) 2020.4.20
- 検体採取予約はあくまでもかかりつけのお医者さんまたは医療機関が行い、月・水・金の週3日、1日8人から20人を予定!~4.22 PCR検査時の検体採取仮設診療所、開設記者発表(千代田区内) 2020.4.22
このインタビューの中には、「あの時にフェイズが変わっていた」「あそこで早く手を打っておけば、今の状況にはなっていなかった」という会話が何度か出てくる。2月より一層シビアな状況になっている今、改めて上氏の言葉に耳を傾けていただきたい。今後、「手遅れ」にならないためにも、である。コロナの戦いは今も続いているし、これからも続く。終戦の見通しは未だ立たない。