2020年4月20日(月)13時より東京都葛飾区の奥戸総合スポーツセンターにて、PCR検査用検体採取の混雑緩和のための屋外テントによる巡回診療(ウォークスルー方式)のメディア向けデモンストレーションが行われた。
新型コロナウイルス感染をめぐり、保健所の判断によるPCR検査数がなかなか増えない中、地元の医師会と自治体が協力し、かかりつけ医の判断で保健所を通さず、独自に検査を行う動きが各地で広がっている。
- <コロナ 医療を守ろう>PCR検査、都内10カ所に 月内にも 医師会、自治体連携(東京新聞、2020年4月18日)
東京都葛飾区は2020年4月20日、奥戸総合スポーツセンターの駐車場に設置した臨時の検体採取場のメディア向けデモンストレーションを行った。
現在、各地で車に乗ったまま検体を採取する「ドライブスルー式」の検査所が増えているが、葛飾区では駐車場に陰圧式のテントを設置し、テントの近くで車を降り、歩いてテントに入る「ウォークスルー式」を採用。これにより、「ドライブスルー式」と同じように他の人との接触を減らすことができるという。
葛飾区医師会副会長の三尾仁氏は、「ウォークスルー式」を採用した狙いについて、次のように語った。
「検査をするにあたって、ある程度の数をこなさないといけない。その上で検査をする先生、看護師さん、医療従事者の安全を一番確保しなくてはいけない。
理想的には、車に乗ったままの形で検査をできれば一番いいんですけど、僕らが計画した段階では、医療上の問題などがいろいろあって、車を降りて診察室の中に入らなければならなかった。
そこで、今回は『巡回診療』という形をとらせてもらって、ひとつのテントの中で検査をするという形になりました。『ウォークスルー』という言い方をしたほうがいいのかな。そういう形の検査法になっています。
PCR検査というのは防護服を着てちゃんとやらなければいけないのですが、これ(ウォークスルー式)によってそうした部分と、ある程度の数をこなすことができる。
葛飾区全体で、PCR(検査)を待っている方が非常に多かったので、保健所から要請を受けて、医師会が応じたということでございます」
また、テント方式を採用したことに関して三尾氏は、次のように説明した。
「外でやることによって、屋内の消毒の手間が省けます。空気の流れがありますから、開放した空間でやったほうが、院内感染というか、診療室自体の、汚染度が少なくて済む。テントですと、テントをそのまま消毒してしまえばいいわけで、こちらのほうが合理的だろうと思って、こちらの方式を選びました」
「検査数が逼迫しているのか?」という記者からの質問に三尾氏は、次のように答えた。
「(新型コロナウイルスの対応は)専門外来に限られていまして、その先生方はコロナの検査をするだけではなく、病院の対応その他、手間がかかります。
一日にやれる検査数というのが、当初は10件程度とか少なかったんですが、今はもう少しこなせている。
そういうところで、保健所に入ってくる検査をしなければならない方の数が、こなせなくなってしまったという状況が起こったので、こういう形で医師会が出ていって、お手伝いをするという形で作らせてもらいました」
この後、IWJは三尾氏と、葛飾区健康部(保健所)地域保健課長・橋口昌明氏に単独独占取材を行うことができた。以下はその内容である。
IWJ記者「韓国が導入したドライブスルー形式に近いPCR検査法を導入しようと助言したのは誰ですか? これは(青木克德)葛飾区長の決断でしょうか?」
葛飾区健康部(保健所)地域保健課長・橋口昌明氏「この方法を選択するにあたっては、協力いただく地区の医師会の皆さんだとか、関係する病院の見地なんかも聞かせていただいて、この方式が今の中では一番合理的なんだろう、と判断させていただきました。(中略)
検体採取のところは、詰まった形になってきているので、これを解除するために、この方式で、臨時的に(行うことにしたのは)区長の決断でございます」
IWJ記者「週に3日ほど、行われるのでしょうか?」
橋口氏「今回、だんだん詰まってきた。2周間、3週間くらいかけて、だんだん検査に、お願いをしてたら、実際に検体を取るまでの期間が1日、2日、3日と伸びて参りました。で、これを、この詰まり状態を解除するためにやるもので、今回、3日間だけの臨時措置でございます」
IWJ記者「検査を増やすというスケジューリングはできていないのですか?」
橋口氏「今回の検査で、一定程度、詰まりは解消できるものと見込んでいるのですが、また、詰まってくるような状況があれば、もう一度、医師会のご協力を得られれば、また、工夫をしながら、やっていきたいなと思っています」
IWJ記者「検体はどこに送られるのでしょうか? 結果は何日くらいで分かりますか?」
橋口氏「(検体は)私どもが、東京都に送っているのですが、陽性の場合で、2日から2日半くらいで、結果が分かると認識しています」
IWJ記者「PCR検査を受けた方々からどのような声がありますか? 不安だった方々も多いと思うのですが」
橋口氏「(検査時を)早く受けられることについては、おおむね、賛同いただいているのかな、と思っています。
こういう方式でやらせていただきますということで、特にキャンセルがあったという、もちろん、場所の問題もありますので、なんかここだったら少し待ってくれというお客様がいたことは承知していますけれど、おおむね、理解を得られているものだと理解しています」
IWJ記者「安堵感をもっていらっしゃった方もいましたか? 検査して」
橋口氏「葛飾区は他の自治体に比べて、さっき述べましたように、3日とか4日、最大でもそれくらいかなと思っているのですが、それでもやはり早く、逆に、『早くしてほしい』という(区民の)声をいただいているところなので、安心感につながっているんじゃないかと思います」
IWJ記者「お二人のお気持ちを、お聞かせください」
橋口氏「これからもこの対策というのは、(中略)全医療体制としては厳しいものがあると思っております。柔軟に必要なところに、スピーディに処置をしていきたいと思っております。区民の皆さんには、ぜひご協力をいただいて、厳しい時だと思いますけども、一緒に頑張っていただければと思っています」
三尾氏「PCR検査を受けて陰性になろうが、陽性になろうが、どちらにせよ、受けられた方は不安をもっていらっしゃると思います。
陽性になったら、どういう風に、自分の病気が進行しているのか。陰性になった場合は、まだ、これから陽性になる可能性がありますから、そういうところで、やはり、みなさんが心配している。
もうひとつは、すべての人が人にうつす可能性があるという認識を皆さんにもっていただかないと、コロナに対する対応というのはなかなかうまくいかないのではないか、と思っております。
ふらふらと動いてしまうと、人にうつしてしまうんだということを自覚していただくことが非常に大切なことだと私は、思っています」
IWJ記者「最後に、激務で疲れているとか、あるいは未来は明るいとか、今、どういうお気持ちですか?」
橋口氏「正直、報道されているように、私どもの保健所に限らず、どこの保健所も、ぱんぱんの体制になっているのは事実だと認識しています。
幸いにして、区の、他の部署も含めて、多くの応援をいただいています。それを励みに、全力でやっていきたいと思っています。
明るい未来が待っていることを心から期待しています」
三尾氏「医師会としては、病院の先生はものすごく疲弊して疲れているんだと思います。
開業医は逆に実際のところは、患者さんは来ていません。その中で何を思っているのかといえば、はがゆく思っているのかな、と。
発熱があっても自分で診てあげることができない。他の患者さんに感染してしまうことを心配で、それができない。じゃあ、そうなると次の段階は、どこかでこういう発熱している患者さんを診れるようなところ、それからPCRにつなげられるところ。そういうものを(葛飾区)医師会としては模索していきたいと思います」
IWJの新型コロナウイルス関連のコンテンツには以下のようなものがあるので、ぜひご覧いただきたい。