「安倍さんって、自分が倒れていく力を使うんです。第1次安倍政権の最後にも、憲法改正国民投票法を強行採決して、通してしまった」
2020年、コロナ禍の夏。安倍晋三内閣総理大臣は国会を閉会し、記者会見も行わず、約2ヵ月の間、国民の前から姿を消した。8月に入ると2回、「検査」と称して慶應大学病院に長時間、滞在。持病の潰瘍性大腸炎の悪化が囁かれていた。そして8月28日、突然、記者会見を開くと、体調悪化を理由に辞任を表明した。
その2日前の2020年8月26日。岩上安身は、早稲田大学教授の水島朝穂氏にインタビューを行なった。水島氏は、全国憲法研究会の代表や憲法再生フォーラム代表も務めてきた憲法学者で、IWJでは、2015年に安倍政権が集団的自衛権の解釈拡大を進めた安保法制について、2016年には緊急事態条項に関してお話をうかがっている。
※「自国が攻められたとき」という自衛権のハードルを下げ、戦争に突入した日本 水島朝穂・早大教授が岩上安身のインタビューで政府案・維新案を「違憲」と徹底批判!岩上安身によるインタビュー 第559回 ゲスト 水島朝穂氏 2015.7.12
https://bit.ly/2FZY3Tc
※世界の「緊急事態条項」を検証!自民党改憲草案の「異常性」に迫る~岩上安身によるインタビュー 第612回 ゲスト 早稲田大学法学学術院教授 水島朝穂氏 2016.2.13
https://bit.ly/3oD8AFF
今回、水島氏は、イージス・アショア配備計画の撤回、その後、安倍総理の体調不良説にあわせるように、「敵基地攻撃能力」論が浮上してきたことに警戒の色を示して、冒頭の言葉を口にした。
「そもそも、敵基地攻撃能力論は『頭の体操』として行われてきた」と水島氏は言う。「実行すれば大戦争を引き起こすため、やる気はないけれど、想定としてはありうる、というだけであり、歴代の総理大臣も『そういう考えもある』と言うだけにとどめてきた。そこに、無責任に飛びつく今の政治家たちは、あまりにも無知だ」と憤る。
そして、今回の議論では表向きは北朝鮮のみを「敵国」と見立てているが、実際には中国やロシアを「敵」と名指しすることに他ならないと指摘。それは、際限なき軍拡を招き、東アジア地域のパワーバランスを不安定にする危険性があると警告した。
水島氏は、安倍政権について、「自分たちが知識のないことを自覚していない『無知の無知』政権」であり、それゆえに知識のある専門家を平気で軽視し、「情報隠し」「焦点ぼかし」「論点ずらし」「友だち重視」「異論つぶし」の5つの統治手法を駆使して批判を押さえ込んできた、と語る。
その上で、「自民党内をどんどん中央集権化し、総裁の選び方まで変えてしAまう。それは、ロシアやベラルーシのような独裁国家のやり方だ。今の自民党は、スターリン型になっている」と危機感を表明した。