安倍総理の私的諮問機関「安保法制懇」が5月15日、報告書を提出した。憲法9条が禁じる武力行使は、自衛のための措置を禁じていないとして、個別的自衛権だけでなく「集団的自衛権の行使」が可能であると結論づけ、これまでの政府の憲法解釈を覆した。
報告書を受けた安倍総理は同日18時、総理官邸で記者会見し、報告書の中身を説明。集団的自衛権行使容認に積極的な姿勢をみせた。総理会見と同時刻、飯田橋にある「東京しごとセンター」では、九条の会が「検証!安保法制懇報告書 止めよう!安倍政権の『戦争する国』づくり」と題した集会を催し、一橋大学名誉教授の山内敏弘氏と、同渡辺治氏が講演。安保法制懇の報告書をいち早く読み解き、理論の矛盾を指摘した。
- 「立憲主義と平和主義を破壊する安保法制懇報告書」 山内敏弘氏(一橋大学名誉教授)
- 「集団的自衛権行使容認のねらいと闘いの展望」 渡辺治氏(一橋大学名誉教授)
憲法と立憲主義と平和主義の破壊
安保法制懇の報告書を前日夜に入手したという一橋大学名誉教授の山内敏弘氏は、その中身について「憲法と立憲主義と平和主義を破壊するもので、到底容認できない」と厳しく批判。安保法制懇の報告書通りに解釈改憲されれば、「憲法の支配から権力の支配へ、法の支配から人の支配になってしまう」と危機感をあらわす。
山内氏は、「集団的自衛権の行使を、国民の知らないうちに秘密裏に進めるために、秘密保護法制が必要になっている、と言っても差し支えない」として、秘密保護法にも反対してきた学者の一人でもある。
解釈改憲は国民の憲法改正権の簒奪
安保法制懇の報告書は、「必要最小限度の範囲の自衛権の行使には、個別的自衛権に加えて集団的自衛権の行使が認められるという判断も、政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすることによって可能であり、憲法改正が必要だという指摘は当たらない」としている。
山内氏は、「集団的自衛権と個別的自衛権ではその本質がまったく異なる。集団的自衛権は『他衛権』だ」と、安保法制懇の解釈に反論する。
「政府の解釈変更によって集団的自衛権の行使を容認することこそが、主権者国民の憲法改正権を簒奪(さんだつ)することになり、国民主権を侵害することになる」とし、解釈改憲は、憲法9条を破壊するだけでなく、憲法96条の憲法改正手続きも同時に破壊する行為であると厳しく批判した。
日本の施政下外で日米軍事行動なら日米安保5条改正が必要
山内氏はさらに、「日米安保条約」上も集団的自衛権の行使はできない、と主張する。
安保法制懇の報告書は、「公海上の米艦船の防護」などを集団的自衛権の行使例として挙げているが、日米安保条約5条は、「日本国の姿勢の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」があった場合にはじめて日米両国が共通の危険に対処するよう行動すると規定している。
山内氏は、「公海上の米艦船防護は、条約上できない。これも法の支配に悖る。年末の日米ガイドラインの改訂だけでは不可能だ」とし、「日米安保改訂となれば、60年安保のような大規模な反対闘争が想定される。あの時の再来を、おそらく政府は恐れている」と分析した。
安倍総理の執念はどこからくるのか
3つの影とは「外務省新主流派官僚」「経産官僚」そして右翼、タカ派議員集団。一部の人達だけの為にある安倍政権、そこに国民はいない。