「完全に負け戦以外の何者でもない。何をどう考えても、日本が勝ち取ってこれるものはない」TPP交渉会合に参加した内田氏が日本政府の姿勢を痛烈批判 〜岩上安身による内田聖子氏インタビュー 2013.7.29

記事公開日:2013.7.29地域: テキスト 動画 独自
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(IWJ・安斎さや香)

特集 TPP問題

※全文文字起こしを掲載しました(2013年9月5日)

 マレーシアのコタキナバルで開催された第18回TPP交渉会合に参加し、25日に帰国したばかりのアジア太平洋資料センター(PARC)事務局長の内田聖子氏に29日、岩上安身がインタビューを行い、TPP交渉会合での最新報告を中心にお話をうかがった。

 内田氏が交渉会合の場に参加するのは今回で3回目。マレーシア国内では反対の機運が高まっていることから、今回の会合は首都から離れたボルネオ島コタキナバルの高級リゾートでの開催になったという。日本からの参加は、交渉官が110人にものぼった他、メデイア関係者も同数ほど来ていたと内田氏は報告した。現地では、日本の交渉官に対し、メデイアが一切質問をしないことに驚いたと述べ、内田氏自ら撮影した動画を用いて、交渉官らが内田氏と目も合わせようとしなかったと説明。皆うつむき加減で並んでいる交渉官の様子を岩上は、「お葬式に参列しているようだ」と評した。

 これについて内田氏は、TPP参加にあたっては『秘密保持契約』を政府は交わさなければならないと解説。日本政府によるブリーフィングで、内閣府の審議官から「秘密だ」と説明があったことを報告した。会合の場において、他のステークホルダーも『ここまで教えてくれないのか』とあぜんとしていたという。

 また、TPP関連で内田氏が帰国後一番に目にしたニュースがアフラックと日本郵政の業務提携の記事だったと語り、「提携するまで報道もされなかった。2国間の並行協議で決まってから発表したという流れで、こうした事例が今後どんどん増える」と、市場の開放がすでに始まっていることに警鐘を鳴らした。

 岩上は、TPPにおける新自由主義的な市場開放の動きを「市場の自由な透明性のある競争ではない」と述べ、内田氏も「保護主義的な政策で自分たちのルールを押し付けようとするもの。(市民団体などの間では)ぼったくりバーだということが、万国共通の認識としてある」ことを伝えた。

 今回の交渉会合においても知財が焦点であったと報告した内田氏は、多国籍企業のファイザーなどが特許保護など、知財強化の必要性を協調しているとし、先発薬・後発薬を問わず、薬価の高騰は避けられない状況であるという。子宮頸がんワクチンの被害など、薬害・公害の問題ともかかわり、産業の発展を害したとして、ISDによって日本政府が訴えられる可能性にも言及した。

 日本が主張している『聖域』に関して内田氏は、「今回日本は交渉に参加したと言えない。主張もしていない。テキストを読みに行っただけだ」と切り捨て、「農産品の問題で5品目を守ると言いながら、5品目には限らない。これはメディアのミスリードだ」と批判した。内田氏によれば、お米だけでも50品目以上、5品目で合計600品目にのぼり、800品目とカウントしている研究者もいるという。『(日本政府が)どれを譲り、守るかをこれから考える』と報じられていることについて、「事前に決めておかなければならなかったこと。とぼけている。本当に守る気があるなら、もっと緻密に準備しているはず」だと明言した。内田氏はさらに、KFC、ピザハットなどを持つ米国の一企業は、現に米政府のエージェントとして具体的な品目を出し、綿密な試算をして関税撤廃を主張していることに触れ、「日本はまだ何の準備もしていない。(聖域を)守れるはずがない」と語った。

 今後のTPP交渉の目処として、内田氏は「年内妥結の目標はおろしていない」と報告。「なぜそんなに急ぐのか?」という岩上の質問に対し、「早く妥結して、もうけたいというシンプルな理由」だと説明した。内田氏は、以前のWTOのドーハ・ラウンドで、ことごとく先進国と途上国の利害が一致せず、途上国政府とNGOなどが一体となって反対し、結果、もめて何年も決まらなかったいう事例があることを紹介。「現実的に考えて、短期的にはその方法しかない」と、『ドーハ化』して「交渉を長引かせることが日本にとっていい道だ」と解説した。

 終盤、今後の取り組みについて問われた内田氏は、「(TPPが)『主権の喪失』という最終ステージにきている。NGOなどのネットワークは反対の声を消さないが、それだけでは足りない。具体的な情報共有や、政府へのロビーイングをして声をあげていくことが必要」だと訴えた。『主権の喪失』ということについて岩上は、「憲法の改悪、秘密保全法、TPPも民主主義の『死』を意味している。すべては共通している。うつむいていた交渉官の映像は、民主主義のお葬式だったのか」と批判。内田氏も「交渉会合の中は民主主義の墓場だ」と皮肉った。

■イントロ

―― 以下、全文文字起こし ――

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コメント “「完全に負け戦以外の何者でもない。何をどう考えても、日本が勝ち取ってこれるものはない」TPP交渉会合に参加した内田氏が日本政府の姿勢を痛烈批判 〜岩上安身による内田聖子氏インタビュー

  1. TPPがいかに恐ろしいものであるか、非常に理解が進んだ。こうした情報は、既存の記者クラブメディアからは発信されてこなかった。2時間の視聴価値は十分にある。

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