内田聖子氏「TPPは、アメリカが牛耳っている、ぼったくりバーだ」~第9回CS東京懇話会「私たちの暮らしを米国系多国籍企業に売り渡すTPP」 2013.7.25

記事公開日:2013.7.25取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

特集 TPP問題
※全文文字起こしを、会員ページに掲載しました(2013年7月29日)

 「今ごろ入っても遅すぎる、と他国の推進派に忠告される。TPPは貿易協定ではない。日本を解体する最終兵器だ」

 現地から帰国したばかりの内田聖子氏が、マレーシア会合の最新情報を報告した。2013年7月25日(木)18時30分より、東京都千代田区にある東京ボランティア・市民活動センターにて、第9回CS東京懇話会「私たちの暮らしを米国系多国籍企業に売り渡すTPP」が開催された。当日の朝、TPP交渉会合が行なわれたマレーシアから帰国した内田聖子氏が、日本交渉団の様子やTPPの危険性などを語った。

■ハイライト

  • 講師 内田聖子氏(アジア太平洋資料センター事務局長)
  • 主催 政治の変革をめざす市民連帯・東京

 冒頭、内田氏は「今朝、成田に着いた。TPP交渉会合最終日の1日前に戻って来たので、完全ではないが、最新情報を報告したい。現地マレーシアのボルネオ島コタキナバルのステラ・ハーバー・リゾートホテルに、日本の交渉担当官ら約100名、報道陣も100名以上いた。だが、会合は大量の事務方が粛々と秘密裏で行なう。アメリカでも30名ほどの交渉官だが、日本は、前例のない100名の交渉官が押しかけた。海外の交渉官の場合、8割くらいは企業のステークホルダー、残り2割がNGOや市民団体で、ロビーイングをする」と、会合の全体像を解説した。

 「7月23日から、日本はTPP参加国になってしまった。ということは、日本の組合、教員、各種業界団体、NPOなど、すべてがステークホルダー(交渉の利害関係者)であり、TPPの責任が生じたと考えてほしい。次回会合は、1ヵ月後にブルネイで開催される。今までにない早いスケジュールだ。つまり、アメリカが描いているシナリオは、『10月にバリ島でAPECがあるので、そこで大枠合意を発表したい』というものだ」と、内田氏は指摘する。「ただし、交渉自体は難航している部分も多くあるので、すぐには決まらない、というのが大方の意見だ」とも付け加えた。

 さらに、「日本は、交渉に参加したとはいえない。今後の交渉で、日本の要求が通せるとは思えない。しかし、今回、経団連、製糖工業、食鳥工業、JAなど、日本の業界団体の多さに驚いた」と述べた。また、「自民党TPP対策委員長の西川公也議員も来ていたが、医療、保険関係者などは、見当たらなかった」と話し、西川議員のJA山形への恫喝などにも言及した。そして、「政府は、事前にマスメディアに対して箝口令を敷いていた」と、内田氏自身が現地で撮影した、交渉官の会場入りの様子をスクリーンに映してみせた。

 続けて、「TPPの最大の問題は、事前の秘密保持契約にある。その契約のため、日本は7月23日14時30分に正式参加となった。この契約は、日本の法律、国民主権よりも上位。つまり、多国籍企業の利益が、当該国よりも上位になる。現地のブリーフィングでは、『会議の席上で何を言ったか、何を主張したか、政府からは言うことはできない』と告げられた」と語った。

 内田氏は「TPPの全29章のうち、14章分は条約レベルまで仕上がっている。参加後に情報が漏れると他国にとってまずいので、『徹底して秘密保持に努める』と、政府は言い切る。また、TPP条約は一括締結で、TPPをのむか、否かしかない。ただ、安全保障や軍事ではないので、とにかく突き崩していくしかない」と力を込めた。

 そして、「早速、市場開放が始まった」と、アフラックと日本郵政の事業提携の話題に移った。内田氏は「車や保険など、非関税障壁分野は、農産品の比ではない。マスコミは農産品ばかり取り上げ、そのことには、まったく触れない」と指摘。続いて、アメリカとの並行協議について説明し、「この協議は、TPPで補えない分野を2国間の並行協議で決着するもの。つまり、アフラックの提携話も並行協議の結果で、これからも突然、似たようなことが出てくる。とても恐ろしいことだ」と警鐘を鳴らした。

 また、「交渉会合の1日を使って、ステークホルダー会議という商談や、NGOがロビー活動などを行なうイベントもあり、これもTPP会合の特徴のひとつ。各国のステークホルダーらは、交渉官を招いてビジネス会議も行ない、早期締結に全力を上げている」と説明した。さらに、「先を見込んだ企業は、すでにアメリカ産コシヒカリを買い付けるなどして動いている。規制緩和では、経済財政諮問会議が、解雇規制の緩和、法人税軽減などを表明している」と語った。

 内田氏は最後に、国際NGOの、市民側ステークホルダーとしての活動を紹介した。「国際ロビーチームを形成し、情報を共有して、企業の暴走や自由経済活動による格差拡大の危険性をウォッチしている。われわれにとって、最悪のシナリオはTPP早期締結なので、1998年にはNGOが情報をリークして、多国間投資協定(MAI)を破綻させた。このような活動をドラキュラ作戦と呼び、TPPをドーハ化(WTOドーハ・ラウンド=2006年、それまで4年半にわたった交渉が凍結され、最終合意期限までに締結の可能性がなくなった)させる。つまり、長期化させて意味をなくすことが目的である」と述べた。

 「とにかく、今から参加するのは遅すぎる。また、言葉の問題もある。そして、これは日本の利益だけが守られればいい、という次元ではない。自分の生活を守ることは、TPPに加盟している国々の市民にも共通した問題になる」。グローバルに考える必要性を訴えて、内田氏は講演を終えた。

 質疑応答に入ると、「なぜ、日本生まれの大企業がTPPに入りたがるのか。その利益はどこにあるのか」「中国、韓国は、今後、TPPに入るのか」「この時期まで日本が入れなかった理由は」「アメリカの圧力で、もう止められないのでは」「ACTAとTPPの関係は」など、次々と質問が出た。内田氏は、それぞれに回答していく中で、「TPPは貿易協定ではない。日本を解体する最終兵器だ」と明言した。

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