【大義なき解散総選挙15】「政府の秘密を肯定する人は、秘密とのつき合い方を知らない」 ~特定秘密保護法、情報公開請求のプロ・三木由希子氏に岩上安身が聞く 2014.11.30

記事公開日:2014.12.8取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・富田)

 2014年12月14日投開票の衆院選に向け、与野党の攻防が日本列島に喧騒を広める中、この国の行方を左右しかねない新法が、ひっそりと施行される。特定秘密保護法だ。

 同法の施行日は10日だから今回の選挙には無関係、という理由なのか、自民党の公約パンフレットに「秘密保護法」の文字は見当たらない。

 だが、この法律は、政府の正しい政策判断を阻害するリスク要因をはらんでいる。日本に、不要な戦争へ向かわせる危険性をあわせ持つのが、施行が秒読み段階に入った秘密保護法なのである――。

 こうした趣旨を静かな口ぶりで語ったのが、市民の知る権利の保障拡大を目指すNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の理事長、三木由希子氏である。

 2014年11月30日、東京都内で岩上安身によるインタビューに応えた三木氏は、「政府が扱う情報群の中に『秘密・非公開』が限定的に発生することは当然だが」と述べつつ、わが国の官僚や政治家、市民の「秘密」との向き合い方が未成熟であることにも言及した。

 「情報公開クリアリングハウスと三木さんの名前は、2013年に『第1回 日隅一雄・情報流通促進賞』の大賞を受賞されて広く知られるようになった」。こう岩上安身が切り出し、インタビューは、三木氏の情報公開をめぐる活動の歴史に迫ることから始まった。

記事目次

■ハイライト

  • 日時 2014年11月30日(日)17:00〜
  • 場所 IWJ事務所(東京・六本木)

大学センター入試の「成績非公開」に疑問

岩上安身(以下、岩上)「三木さんは、情報が公開されることの重要性、つまり政府が情報を秘匿にすることが、いかに問題であるかについて、広く国民に訴える運動を展開してこられた。

 情報公開をめぐるタイムリーな話題ということでは、この12月10日には(情報公開のマイナス要因とも言える)特定秘密保護法が、降ってわいたような選挙戦の騒ぎの陰で施行されてしまいます。

 今回の選挙戦は『アベノミクス』のみが争点になろうとしており、発表された自民党の選挙公約には『秘密保護法』の言葉は見当たらず、『争点隠し』が行われているように思えてなりませんが、今日はその分、三木さんに秘密保護法のどこか問題なのか、じっくりとうかがいたい。

 その前に、そもそも三木さんが、国などに対して、情報公開を強く求める市民活動を展開するようになった経緯についてお話ください」

三木由希子氏(以下、三木・敬称略)「私が大学受験をしたのは1992年。当時、大学入試センター試験の得点は本人に非開示だったのです(※現在は開示請求者には通知される)。

 私は、それを変だと思いました。というのも受験生の間では、センター試験のでき具合で2次試験の出願先を決めるやり方が一般的だからです。国の個人情報保護の仕組みでは、医療と教育の分野が開示請求の対象外にされており、どうにも解せませんでした。

 ただし、打つ手はありました。私が入学したのは地方自治体が運営する公立大学(横浜市立大)でしたから、地方自治体の個人情報保護の仕組みを使えば、自分のセンター試験の結果などを開示請求することが可能だったんです。そこで、センター試験の得点と2次試験の得点、答案用紙の本人開示請求を私個人で行いました。それが、情報公開を求める運動を続けていく出発点でした」

開示請求の賢者が「勘所」を説く

岩上「情報開示請求というと、まるで訴訟を起こす時のように、大変な負担がのしかかるのではないかと案じる人が少なくない。開示請求に要する労力とは、実際にはどの程度なんですか」

三木「私のセンター試験の得点開示請求では、情報公開クリアリングハウスの前身の団体『情報公開法を求める市民運動』の事務局長と知り合う機会があったため、いろいろと指南されました。

 実際に請求を行ってみて感じたのは、『請求自体は簡単だ』ということ。用意されている書式に請求したい内容を書いて提出するだけですから。

 ただ、請求の前段で、請求内容(=ほしい情報)をどう特定するかの難しさはある。私のケースでは、ほしいのは試験の得点そのものでしたから、特定する手間とは無縁でしたが、たとえば『原発情報』となると膨大に存在する。要は、そのたくさんあるデータのうち、自分が直面している問題を解決するには、どの情報が必要なのかを、ちゃんと絞り出せるだけの力が必要になってくるということです。

 求めている情報をどこが管理しているかを探すことについては、原発情報であれば、原子力規制委員会、環境省、内閣府、内閣官房、経産省、文科省、厚労省など管轄省庁は多岐にわたりますが、各省庁には情報公開請求の窓口があるので、あまり難しく考えずに素直に尋ねてみればいいでしょう」

岩上「請求できる権利がある以上、市民は臆せずに質問すればいいと?」

三木「はい、おずおずする必要はまったくありませんが、だからといって役所の人に『あなたたちには教える義務がある』と高圧的に接したら、向こうも構えてしまうので、それは逆効果です」

岩上「開示請求する上で、資格のようなものは必要ですか」 

三木「国への請求では、条件はまったくないです。求められるのは日本語で請求することだけ。国籍も問われません。一方で地方自治体の場合は、まちまちです。誰でも請求可能な自治体もあれば、在住、在勤、在学など、地域に関わりのある人に限定している自治体もあります」

細川政権発足で情報公開法の制定に弾み

三木「(直面する問題を解決するために)開示されるべき情報が何であるかを探っていくと、その問題の原因や背景がわかり、解決の選択肢も増えてくるという、ある種の副次的効果も得られます。つまり、情報公開請求には、(問題解決のための)訓練の側面があるんです」

岩上「先ほどの、ご自身の入試情報の開示請求に話を戻しますが、最終的に得点の情報は手に入りましたか」

三木「実は長い裁判になって、あれは2003年だったか、最高裁で上告が不受理になり敗訴が決まりました。求めた情報はすべて不開示。ですが、2001年に情報公開法が施行され、希望する人への入試結果の開示が始まった。私を担当した弁護士は『事案としては負けたが、社会的には勝った。これでいい』と言っていました。

 その後、私が情報公開についての活動を本格化させるに至った要因のひとつに、1993年の政権交代で情報公開法の制定が動き出したことがあります」

岩上「細川護熙内閣の誕生で、小沢一郎氏らが中心になって非自民の連立政権が誕生した時ですね」

三木「はい、以前から新自由クラブ、共産党、社会党、公明党、社民連などが、新しい政策課題として情報公開に取り組んでいました。細川政権の時は市民団体との交流も円滑で、『この新政権で新しい時代を作るには、情報公開が必要』という機運が、当時の永田町に高まっていました。

 話は前後しますが、私が大学を卒業した1996年は、情報公開法案を出すことが閣議決定されて立法化作業に入り、(前述の)『情報公開法を求める市民運動』も人手が欲しい時期で、私は自分の訴訟を行いながら、そこのスタッフになりました」

岩上「三木さんが参加した団体は、名称を変更して『情報公開クリアリングハウス』になったわけですが(※1999年7月に任意団体として船出、同年9月に特定非営利活動法人)、今みたいにインターネットが普及していない時代には、自分たちの情報をどのように発信していたんですか」

三木「昔は今よりも労働組合の運動が盛んで、地域で市民運動に参加する人たちも多かった。情報公開の件で問題意識を持つ、こういった人たちとつながることが活動のベースでした。われわれの組織は発足してすぐにホームページを立ち上げましたが、相談件数の増加は、検索エンジンの性能の向上にほぼ比例しました」

閉鎖型の情報共有で、正しい政策判断は可能か

三木「『クリアリングハウス』という名称は米国のNGOであるパブリック・シチズンの中に『フリーダム・オブ・インフォメーション・クリアリングハウス』という情報公開訴訟部門があり、そこから取りました」

岩上「パブリック・シチズンは、特にTPP(環太平洋経済連携協定)を問題視する人たちの間では知られた存在ですね。

 では、ここからは特定秘密保護法に関して、お話をうかがいましょう」

三木「特定秘密保護法という言葉を聞くと、一見、新しく秘密を作るように思えますが、私は『すでに政府の中に蓄積されている秘密に関する仕組みや構造を再構築する』という意味だと解釈しています。つまり、秘密保護法の問題を考える上では『その再構築がどのようなものになるかを把握すること』が大事だと考えています。

 もともと政府が持っている秘密には、各省庁が秘密を指定する『省秘』、1950年代からある米軍の装備に関する『特別防衛秘密』。2001年の自衛隊法の改正に伴い誕生した『防衛秘密』があり、2009年からの『特別管理秘密』について言えば、これは比較的『特定秘密』に近いものです。

 これらの中に特定秘密に指定される情報が存在するんですが、もともとすべてが非公開なので、市民の目には全部が隠されているように映る。したがって外から見た場合、秘密に関する仕組みや構造を再構築するといっても、イメージしづらいのが現実です。

 秘密指定・秘密保護の狙いは、限られた人にしか知らせないことで情報漏洩リスクを減らすことにあるので、高度な秘密になればなるほど、その、限られた人にしか知らせない度合いが強まります。となると、頭をもたげてくるのが、そういう少人数の情報共有で、果たして正しい政策判断がなされるのか、という不安です」

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“【大義なき解散総選挙15】「政府の秘密を肯定する人は、秘密とのつき合い方を知らない」 ~特定秘密保護法、情報公開請求のプロ・三木由希子氏に岩上安身が聞く” への 2 件のフィードバック

  1. kaimarin より:

     とても中味の濃い対談をどうもありがとうございます。三木由希子さんて、すごい方ですね。ポーカーフェイスながら、噛みついたら離さないしつこさで正義を貫いてゆく姿は、仰ぎ見るのみです。洋の東西を問わず、私たちに方向を示してくれるこうした人物の私心のない努力によって、人類の歴史は少しずつ進んでいくのでしょうね。本当に頭が下がります。ついつい3時間半、夜中に見てしまいました。明日は朝寝じゃ。

  2. 山下 由佳 より:

    どうしたら ムサシの選挙ソフト
    ソースコードを公開させることができるのだろうう? 情報公開請求したけど http://blogs.yahoo.co.jp/costarica0012

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