弁護士でありジャーナリストの故・日隅一雄氏の3回忌にあたる6月12日、日隅氏の同僚弁護士などで運営される「日隅一雄・情報流通促進基金」が、東京日比谷で「第2回 日隅一雄・情報流通促進賞表彰式」を開催した。
「日隅一雄・情報流通促進賞」とは、情報流通を促進し、国民主権の実現に貢献している個人や団体に対して送る賞である。今回、大賞には、福島老朽原発を考える会・阪上武氏とFoE Japan・満田夏花氏の「フクロウ・FoEチャンネル(FFTV)」が選ばれた。
(IWJ・原佑介)
弁護士でありジャーナリストの故・日隅一雄氏の3回忌にあたる6月12日、日隅氏の同僚弁護士などで運営される「日隅一雄・情報流通促進基金」が、東京日比谷で「第2回 日隅一雄・情報流通促進賞表彰式」を開催した。
「日隅一雄・情報流通促進賞」とは、情報流通を促進し、国民主権の実現に貢献している個人や団体に対して送る賞である。今回、大賞には、福島老朽原発を考える会・阪上武氏とFoE Japan・満田夏花氏の「フクロウ・FoEチャンネル(FFTV)」が選ばれた。
■ハイライト
表彰式の司会を務めた基金の代表理事である海渡雄一弁護士は、「社会の流れは、この1年間で危険な動きが強まっている。秘密保護法が成立し、原発は再稼働にひた走っている」と感想を述べた。
さらに海渡氏は、「(朝日新聞の)吉田調書の公開も社会的問題になっているが、それでもまだ情報公開されない、というのが社会の限界を示している。ここで負けてはいけない」と訴えた。
表彰式のプレゼンターは、理事の一人である梓澤和幸弁護士が務めた。贈賞者は以下の通り。
――【大賞】(1作品 副賞 賞金30万円)――
●フクロウ・FoEチャンネル(FFTV)― 満田夏花氏、阪上武氏 原発問題で幅広く情報を集め、政府との交渉を重ね、そのプロセスを含めて社会に発信し、わかりやすい説明を加えて共有していくという新しい試みにチャレンジし、オープンな社会作りに貢献した
――【奨励賞】(2作品 副賞10万円)――
●福島原発事故 県民健康管理調査の闇(岩波新書)― 日野行介氏 「福島県民健康管理調査の過程で秘密会が実施されていたことなど、隠されていた事実を明るみに出し、県民健康管理調査の実施に多大な影響を与えた」
●沖縄・名護を中心とした基地建設に反対する運動 ― 海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会 「97年結成以降、辺野古テントでの座り込み行動、辺野古埋め立て反対訴訟やジュゴン訴訟などへの取り組み、沖縄県における反基地運動の情報を集約して広報する活動など、住民主権を貫徹し、公正な情報流通、促進をはかった」
――【特別賞】(2作品)――
●福島原発事故 東電テレビ会議 49時間の記録(岩波書店)― 木村英昭氏、宮崎知己氏 「東電テレビ会議映像を文字にして残した重要資料であり、東電の一室につめてテレビ会議映像を書き起こすという地道な取材活動が評価された。著者らが新聞のキャンペーン記事によって東電にテレビ会議映像を開示させたというプロセス含めて、『知る権利』に大きく貢献した」
●秘密保護法のための活動と法成立後の法廃止のための活動 ― 秘密保全法に反対する愛知の会 「秘密保護法が国会に上程されるはるか前の段階から法案に警鐘を鳴らし、学習会などを基礎に情報発信に努め、大集会やデモを実現し、法の成立後も全国ネットを組織しながら活動し続けていることが評価された」
奨励賞を受賞した毎日新聞の日野記者にとって、今回の受賞作が初の著書だったという。「新聞でセンセーショナルに報じることができるが、後に残るかといえば、残らない。県民健康管理調査のプロセスが不透明で、結論ありきであることを後世に残さなければならず、残すのが僕の仕事だと思った」
さらに「(今の日本は)主権在官だと思っている。官僚たちは、自分たちの都合のいい時に情報を出すが、そういった(隠したい)情報をまるごと出すのも大事なこと。日隅さんの賞をいただけたことで、自分の仕事に確信を持てた」と喜びをあらわした。
大賞を受賞した阪上氏は、「運動を一緒にやってきた仲間たちとともに、いただいた賞だと思っている」と話し、「川内原発問題では、火山問題、立地地域の人たちの不安な思い、福島の惨状に対する思いが、どうかたちになるかが重要。FFTVで引き出していきたい」と、今後の活動を紹介した。
満田氏は、「311後、本当にひどい状況が続いている。その中で疲れ果てたり、涙を流したり、精一杯やってきたが負け続け、悔しく、言葉を失うことが多々あった。幸せだったのは、一緒に活動してくれる仲間の存在だった」と振り返る。「問題がありすぎて、何からやっていっていいかわからないくらい、私のToDoリストは溜まっているが、市民の力を信じて、頑張っていきたい」と決意を新たにした。
海渡弁護士の言うように、日本の民主主義の危機は、年々、深刻度を増している。中でも、2013年末に成立した「特定秘密保護法」は、「情報流通の促進」を掲げ、「オープンな社会の実現」を志した日隅氏の思想とは、正反対の性格を持つ法律だろう。
秘密保護法が成立する約2年前の2012年2月、日隅氏は元北海道新聞の高田昌幸記者とともに「秘密保全法」に言及し、すでに警鐘を鳴らしていた。
しかし、秘密保護法は年内に施行され、当時の日隅氏の懸念が現実になろうとしている。
日隅氏はこうした状況を、どう見ているだろうか。怒っているだろうな、と思う。情報を閉ざす東電に食ってかかったときの日隅さんの表情が、目に浮かぶ。責任の一端を感じるからこそ、今一度、日隅氏の警鐘に耳を傾けたい。
(…会員ページにつづく)