「日本は、世界に戦争が絶えないことを望む国に変わってしまう」 ~中谷雄二氏、武器輸出三原則の撤廃を危惧 2014.6.6

記事公開日:2014.6.6取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 「カジノ解禁、原発や武器輸出。安倍政権が打ち出す一連の政策には、金儲けのためなら手段を選ばず、のふしがある」──。

 2014年6月6日、名古屋市東区の愛知大学車道キャンパスで行われた講演会「集団的自衛権と秘密保護法〜戦争をさせないために」では、早くから秘密保護法の危険性を訴えてきた中谷雄二氏(弁護士)がメインスピーカーに招かれた。集団的自衛権行使容認の問題や、昨年12月に成立した特定秘密保護法に象徴される「安倍改革」について、経済成長の観点から論じた内容は、集まった市民らの耳目をさらった。

 中谷氏は「日本経済が新たな成長トレンドに立つためなら、海外の戦争を助けて、さらなる経済成長を喜ぶ国に変わっていいのか」と語気を強め、「命を選ぶか、金を選ぶかの二者択一を迫られたら、命を選べ」というメッセージを送った。

 「当初のスケジュールは、安保法制懇が報告書を今年4月に出し、今の通常国会中に、憲法解釈で集団的自衛権の行使容認の閣議決定をするものだった。しかし、実際には『通常国会中の閣議決定は無理』という声がもれ伝わってくる。自民党と公明党との間にある溝が歯止めになっているようだ」。

 中谷氏は、昨年の12月に全国民的な運動として盛り上がった、特定秘密保護法への反対運動の力の大きさを強調する。「傍目には、安倍政権は世論など一切気にしていないように見えるが、あの一件で、安倍首相の思惑はかなり揺れ動いたと思う」と述べ、客席に向かって、「今、もう一度、集団的自衛権の行使容認を阻止するために立ち上がるべきだ」と訴えた。

 そして、「今、国民がとるべき行動は、安倍政権に対し『あなた方がやろうとしている憲法解釈の変更などを、われわれは断固認めない!』という声を、全国津々浦々で上げることだ」とし、次のように力説した。

 「東京の永田町に有志が大挙して押しかけてシュプレヒコールを展開するのもいいが、それよりも、個々の議員の選出母体である各地方で、安倍改革に反対する市民運動が自主的にいくつも立ち上がり、最終的にそれがネットワークで結ばれて大きなうねりになる方が、効果があると思う」。

■全編動画 1/2 主催あいさつ

■全編動画 2/2 主催あいさつ〔続き〕/中谷氏講演

  • 日時 2014年6月6日(金)18:30~20:30
  • 場所 愛知大学車道(くるまみち)キャンパス(愛知県名古屋市)

国連・ガリ事務総長の失敗

 中谷氏は、集団的自衛権の行使容認と秘密保護法の施行はセットだ、と指摘する。「昨年に行われた秘密保護法案の審議の中で、国家安全保障会議(日本版NSC)と秘密保護法は一体のものだという説明が、政府からあった」。

 先年11月の臨時国会で、その国家安全保障会議の設置法が成立。内閣総理大臣をはじめとする4大臣で、日本の防衛・外交がらみの重要事項を決める日本版NSCについて、「安倍政権は、戦争への自衛隊の関与を司る指令塔を作った」と語った中谷氏は、「その司令塔に出入りする情報を管理するための道具が、秘密保護法なのだ」と強調した。

 その上で、安倍首相が標榜する「積極的平和主義」を、「言葉自体は平和学からのパクリだが、中身がまるで異なる」と評した。「平和学で言う積極的平和主義は、構造的暴力などをなくすことを指しているが、安倍首相は『軍事で平和を作ることが、積極的平和主義』と言った」。

 中谷氏は、湾岸戦争があった1992年に、当時の国連事務総長だったエジプトのガリ氏が、「平和強制」という言葉で、国連による武力行使型の世界平和創出の必要性を提唱したことに言及した。

 ガリ氏によって「平和強制」という概念が掲げられたことで、冷戦終焉後の国連に対する各国の期待が一気に醒めたという。中谷氏は「国連は、もはや中立的な存在ではないと見なされ、それが国家間の紛争や対立を激化させる事態を招いた。その結果、ガリ氏は『平和強制』という概念を取り下げざるを得なくなった」と話した。

「戦争」という新たな商機

 「安倍首相は、こういった歴史に学んでいないのではないか」と、中谷氏は指摘する。「この4月、政府は日本が国是としてきた(武器輸出の全面禁止を含む)武器輸出三原則を撤廃し、日本の産業界が武器を製造し、それを輸出できるようにした」。

 「財界は前々から、秘密保護法を作ってほしい、と政府に要請していた。日本のメーカーが海外に武器を売れるようになった際に、技術情報などの漏えいを、法でガードしたいためだ」。

 このように語った中谷氏は、「武器輸出三原則の撤廃に先立ち、三菱重工は標準的なミサイルを売る約束を、対欧州で行った。(安倍政権が、集団的自衛権の行使容認を支える新法として制定を目指す)国家安全保障基本法案の骨格の中には、軍需産業の育成がある」と指摘した。

 その上で、「戦後の日本の産業界は、一貫して軍需には頼らない、先進諸国の中では希少な存在だった。それは、憲法9条の存在があったからだが、今、そういった産業界のあり方が大幅に変わろうとしている」と口調を強め、「一度変えたら、歯止めが効かなくなる恐れがある」と警鐘を鳴らした。

軍需産業の「妙味」で変質する日本経済界

 「武器には、他の工業製品に顕著なディスカウントは当該しない。しかも、世界のあちこちに紛争の火種が存在する。戦争が続けば、決して武器の需要はなくならない」。

 このように、軍需ならではの「妙味」があると言う中谷氏。「日本の産業界が相手取る市場群の中に、そういう妙味がある分野がいったん組み込まれれば、日本は早晩、『世界に戦争が絶えないことを望む国』に変わってしまう」と訴えた。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

「「日本は、世界に戦争が絶えないことを望む国に変わってしまう」 ~中谷雄二氏、武器輸出三原則の撤廃を危惧」への2件のフィードバック

  1. @mimipinpiさん(ツイッターのご意見より) より:

    ◆中谷弁護士のお話は素晴らしいです! 最後まで諦めない為にどうすべきかをお話して下さっています!
    2014/6/6 集団的自衛権と秘密保護法 戦争をさせないために ―講師 中谷雄二弁護士(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/144908

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    カジノ解禁、原発輸出に飽き足らず、金儲けのためなら人殺しの道具まで。それが”美しい国”の正体。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です