「ベールの向こうに隠された治安機関は、だいたい暴走するものだ」――。
特定秘密保護法の施行で警察権限が拡大し、日本は警察国家になってしまう。こう懸念するのはジャーナリストの青木理氏だ。
共同通信の記者として警視庁記者クラブに所属していたこともある青木氏は、『日本の公安警察』(講談社現代新書)という著書もある。
5月26日、東京しごとセンター地下講堂で開かれた「こんなにあぶない!『秘密保護法』連続学習会(「秘密保護法」廃止へ!実行委員会主催)」において、「秘密保護法と警察」というテーマで講演。秘密保護法によって警察官僚が暴走する危険性を指摘した。
- 収録 2014年5月26日(月)
- 配信 2014年5月27日(火)
- 場所 東京しごとセンター(東京都千代田区)
- 主催 「秘密保護法」廃止へ!実行委員会
秘密保護法にみる絶望的なメディア状況
「秘密保護法関連の報道はこの間、非常に不十分だった。朝日、毎日、東京新聞や一部のテレビメディアは一生懸命批判した。しかし、一部とはいえ、ろくでもない新聞社が賛成に回ったのは絶望的だった。この問題に右も左もないのに、なぜ言論機関が反対の声を上げないのか。これが今の絶望的な日本のメディア状況だと思った」
青木氏は、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏や田原総一朗氏、金平茂紀氏らとジャーナリスト有志で集まり、テレビや集会などの場で、精力的に秘密保護法の危険性を訴えてきた。IWJは当時、「TVジャーナリスト」らの初動の遅さを指摘したが、それでも彼らが大手メディアをリードし、世論喚起したことは特筆すべきだろう。
特定秘密保護法は誰のものか
秘密保護法を作ったのは誰で、一番「得」するのは誰か――。
青木氏は、「大抵の分析は『この法は安倍政権が作って、得をするのは法を恣意的に使える官僚だ』というものだ。これは正解だが、本質は捉えていない」と述べ、自身の考えを展開する。
秘密保護法を作ったのは安倍政権だが、元をたどれば2010年、民主党政権下で、「尖閣沖中国漁船衝突ビデオ流出事件」をきっかけに、仙谷由人官房長官(当時)が中心となって秘密保全法制の有識者会議を設置、ここで特定秘密保護法の大枠が作り上げられた。そして、この有識者会議でイニシアチブをとったのが、総理直属の情報機関である「内閣情報調査室」、通称「内調」だ。
青木氏は、「内調という組織は、よく見なければいけない」と語り、「内調のトップは『内閣情報官』というポストだが、このポジションには、1952年の内調発足以来、たった一人の例外もなく警察官僚が座っている。中でも、『警備公安部門』の要職を歩んできた警察官僚の指定席になっている」と実態を明かした。
内閣情報調査室の実態
青木氏が95年に手に入れた内部文書によると、内調のメンバーは皆、防衛省、外務省、海上保安庁、公安調査庁などの各役所から出向してきており、中でももっとも多かったのが、警察からの出向者だったという。
「つまり、内調とは、トップは警備公安警察官僚の指定席となっており、警備公安出身の警察官が大多数を占める、一種の警備公安警察の『出島』みたいな組織になっている。言葉を変えると、官邸に突き刺さった警備公安警察の『橋頭堡』みたいな役所だ」
そんな役所が、今回の特定秘密保護法の事務局になっている。内調がほぼすべての法律のガイドラインを作り、有識者らに一応の確認をして回っただけ、というのが有識者会議の実態である。つまり、秘密保護法を作ったのは、事実上、内調であり、さらにいえば「警備公安の警察官僚がこの法律を作った」というのが正確な見方だ、と青木氏は説明した。
特定秘密の半分は警察の領域
秘密保護法で秘密に指定される情報は、(1)防衛、(2)外交、(3)特定有害活動(スパイ)の防止に関する情報、(4)テロ防止に関する情報の4分野とされている。
青木氏は、「外交分野は外務省、防衛分野は防衛省が主体的に担うだろう。スパイ防止、テロ防止は警察庁がメインで担う。つまり4つのうちの半分は警察がつかさどることになる。この法律ができて一番美味しいのは警察としか考えられない」と分析する。では、警察がこれをつかさどるとどうなるか。
「『テロ防止』などという名目であれば、警察情報のほとんどが秘密に指定されてもおかしくない。『原発の警備情報』もテロ防止の観点から秘密指定されるというが、どこまでが警備に係る情報なのかはわからない。原発がある福島や福井、新潟などの県警の警備部に何人の警察官がいるか、ということすら秘密に指定されても、『原発の警備に関わるから』と言われれば文句は言えなくなる」
限りなく違法に近いスパイ獲得作業
特定秘密保護法で警察権限が拡大し、日本は警察国家になる? ジャーナリスト青木理氏講演 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/141909 … @iwakamiyasumi
この問題に右も左もないのに、なぜ言論機関が反対の声を上げないのか。これが今の絶望的な日本のメディア状況だ。
https://twitter.com/55kurosuke/status/606757526839791616