【IWJブログ】「平和国家」から「死の商人」国家へ「国のかたち」が変えられる ? 日本国憲法の精神を無視した「武器輸出三原則」のなし崩しの変更は許されない? 2014.3.5

記事公開日:2014.3.5 テキスト
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(取材・文:野村佳男、文責:岩上安身)

 今から一年前の2013年3月1日、安倍総理が打ち出した経済政策「アベノミクス」に世の中が沸き立つなか、菅義偉官房長官から一つの談話が発表された。

 「平成25年度以降は、F-35の機体及び部品の製造への国内企業の参画を行った上で、F-35Aを取得することとしている」

 航空自衛隊の次期主力戦闘機である米ロッキード・マーティン社製のF-35について、紛争当事国への移転を禁じた「武器輸出三原則」の例外扱いとして、日本企業の部品製造への参画を容認するという内容である。

 2011年に民主党野田政権によって一部緩和された「武器輸出三原則」が、さらに大幅に緩和される見込みとなった。同談話には、F-35の部品製造に日本企業が参加することは、「日米安全保障体制の効果的運用にも寄与する」とも明記されている。

 組閣当初、「経済政策に専念する」と言っていた安倍総理であるが、昨年末の特定秘密保護法の強行採決や靖国神社参拝など、ここに来て国家主義的な安倍内閣の実態をさらけ出していることは、もはや説明の必要もないだろう。

 今思えば、この「菅談話」こそが、安倍政権の本質が芽を吹き始めた、最初の出来事だったのかもしれない。

武器禁輸の撤廃に向けてひた走る安倍政権

 その後、参院選での自民党圧勝直後の2013年7月22日、安倍総理は「武器輸出三原則の抜本的な見直しの議論を始める」と発表。武器輸出三原則の「撤廃」に前向きな安倍総理の姿勢が明らかになった。

 昨年12月23日には、南スーダン派遣団で活動中の韓国軍に、武器輸出三原則では認められていない銃弾の提供を決定した。また、年が明けた元旦の年頭所感では、「日本が、これまで以上に、世界の平和と安定に積極的な役割を果たす」と、「積極的平和主義」なる概念を打ち出した。

 そして、現在行われている衆院予算委員会では、自衛隊が海外で武器を使う際の基準を緩和するため、「自衛隊法」の改正や、憲法9条の解釈変更に意欲を見せている。日本企業が作った兵器が海外で使用される、そんな道へとまっしぐらに進んでいる。

 これらの動きに対して、野党議員や一部メディアからは、「日本が『死の商人』と呼ばれる」と、反対の声が上がっている。小野寺五典防衛大臣をはじめとする閣僚は、「日本がミサイルなど色々な武器を死の商人のように売っていくわけではない」と、火消しに躍起だ。

 だが、「死の商人」国家にはならない。という安倍内閣の閣僚の言葉を、そのまま鵜呑みにすることができるだろうか。

三原則の見直しは、大企業においしい「ビジネスチャンス」

 冒頭の菅官房長官の談話からも明らかなように、「武器輸出三原則」の緩和は、日本企業が兵器の製造・輸出に本格的に参入できるようになることを目的としている。

 F-35に関しては、防衛省は昨年9月に、三菱重工業、IHI、三菱電機の3社と契約を締結した。三菱重工が機体の最終組み立て・検査、IHIがエンジン部品の製造、三菱電機がレーダー部品の製造を担当する。契約金額は、それぞれ639億円、182億円、56億円にもなる。

 さらに、IHIは昨年11月、2017年以降購入分の38機について、米国企業と共同生産する契約も交わしている。「国際共同開発に参画できなければ、日本は競争に取り残されてしまう」と、武器禁輸の緩和は、すでになし崩し的に進んでいる。

 「武器輸出三原則」の下では、日本企業が製造した防衛装備品の買い手は、基本的には防衛省に限られている。防衛省の契約先のランキングを見れば、防衛事業を営む主な国内企業が明らかになる。三菱重工、NEC、川崎重工、三菱電機など、大手有名企業が名を連ねていることがわかる。

 国の防衛費が2003年以降減少を続けるなか、国内企業の軍事産業は不振にあえぎ、特に2005年以降は、防衛装備品の契約額が整備維持経費を下回る「赤字操業」が続いていた。

 そんな状況のなかに突如転がり込んで来た、今回の武器輸出緩和。「千載一遇のビジネスチャンス」と、国内の防衛企業が色めかないはずがない。

 欧米には、前述のロッキード・マーティン社や英BAEのような、防衛事業を主体とする企業が多数存在する。特に米国企業は、防衛売上トップ10企業のうち7社を占め、軍隊(国防総省)と軍需産業が密接に結びついた「軍産複合体」が、強大な勢力を形成している。

 ストックホルム国際平和研究所が発表したデータでは、軍需企業トップ100社の売上額は2010年に32兆4769億円(4111億ドル)に達し、2002年比で60%増加。武器の多国間売買が活発になり、軍需産業はこの10年でもっとも成長した産業の一つとなっている。

 日本企業は、防衛最大手の三菱重工でも、防衛事業の受注高(2403億円)は、全体の10%以下に過ぎない(2012年度30,322億円)。しかし、武器輸出規制の緩和や撤廃となれば、日本でも欧米のような軍需産業が本格的に勃興するきっかけになる。

 菅官房長官の談話にある「日米安全保障体制の効果的運用」というのは、日本でも米国と同様の「軍産複合体」を作ろうという意図なのではないだろうかと、勘ぐりたくなる。

 安倍政権からすれば、武器輸出の解禁さえ、企業の業績回復に資する「アベノミクス」政策と言うのだろう。その最大の恩恵にあずかるのは、三菱重工や三菱電機などを擁する「三菱」グループといえるだろう。

 三菱グループといえば、安倍総理の実兄である安倍寛信氏は、三菱商事の元執行役員であり、現在も三菱商事の子会社の社長を務めている。今のところ軍事産業への直接的な関与はないと思われるが、グループへの利益誘導の温床にならないよう、しっかりと監視する必要がありそうだ。

世界は軍縮を望んでいる

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