「国のシミュレーションは地形に無配慮」 ~民間研究団体、役所の原発避難計画づくりに提言 2014.5.24

記事公開日:2014.5.24取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2014年5月24日(土)、京都市下京区のひと・まち交流館京都で、「原子力災害・防災計画に関する勉強会」実行委員会と脱原発をめざす首長会議による、「いのちを守る避難計画はできるのか 最新の交通工学とシミュレーターから探る」が開かれた。

 脱原発を掲げる京都、滋賀、愛媛の3府県の市長らが順番に登壇。

「津波で車が流された場合、避難の手段がなくなる」「原発から30キロ圏内という線引きに、どれほどの意味があるのか」「原発事故を巡る今の法的ルールで、有効な計画を作成できるのか」「避難時に大混乱が生じるのは必至だ」「避難先の確保が難しい」など、自治体任せの避難計画づくりには無理がある、という訴えが相次いだ。

 後半では、民間シンクタンクの環境経済研究所が開発した、日本各地の原発での事故を想定した放射能拡散シミュレーターを用いて、有効な避難計画づくりに必要な要素を科学的見地から探った。

■ハイライト

  • 司会進行 上原公子氏(脱原発をめざす首長会議事務局長)
  • 各自治体の首長から 中山泰氏(京丹後市長)、西牧成通氏(篠山市市民安全課課長・酒井隆明市長代理)、平尾道雄氏(米原市長)、三好幹二氏(西予市長)、石橋寛久氏(宇和島市長)
  • 報告1 青山貞一氏(環境総合研究所前代表)/ 鷹取敦氏(環境総合研究所代表)
  • 報告2 上岡直見氏(環境経済研究所代表)
  • 日時 2014年5月24日(土)13:30~16:30
  • 場所 ひと・まち交流館 京都(京都市下京区)
  • 主催 「原子力災害・防災計画に関する勉強会」実行委員会 / 脱原発をめざす首長会議

 市長らからは「現実問題として、日本が数多くの原発を抱えている以上、避難計画の必要性を認めるにしても、そもそも論として、避難計画を持たねばならない電力政策を国が続けようとしていることに、われわれ自治体は確固たるスタンスを示さねばならない」との発言も聞かれた。

放射能拡散に「普遍性なし」

 環境経済研究所前代表の青山定一氏は、2011年の福島第一原発の事故について、アメリカの原子力規制委員会の委員長だったグレゴリー・ヤツコ氏が、日本政府が20キロ圏に避難指示、20~30キロ圏に屋内退避指示を出した折、米政府は「80キロ圏」に避難勧告を出したことを評価した一件を紹介。「私も、80キロという線引きに科学的合理性があると思う」と表明した。

 その後、北海道電力の泊原発での事故を想定した放射能拡散シミュレーションが紹介され、「国や県のシミュレーションは、まったくの平地を想定しているが、われわれのものは、その地域ならではの地形を考慮している」と述べて、両者の違いを会場のスクリーンを使って提示した。

 青山氏は「地形の差によって、放射性物質の広がり方は明らかに変わる。つまり、汚染物質が到達するまでの時間は一様ではなく、同じ風の強さでも、避難するまでの時間的余裕は地域ごとに異なる」と説明。「地形という要素を無視する行政の防災計画づくりは、非現実的である」と批判した。

 そして、「国や県は、これまで通りの姿勢で防災計画を作り続けるのであれば、なおさら有事の際の『80キロ圏外』への極力早期の避難を、普遍的な鉄則として示すべきだ」と主張した。

避難計画は画餅に終わる!?

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です