「避難計画は住民の被曝が前提」上岡直見氏 「弱者が残される」菅野みずえ氏 〜再稼働を止めよう!討論集会 2014.3.2

記事公開日:2014.3.2取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「避難する時、二度と戻れないと思い、喪服だけは持って出た。やはり、着る機会が多かった」──。

 2014年3月2日、大阪市中央区の大阪府社会福祉会館で、「避難計画では住民の安全を守れない─再稼働を止めよう! 3・2講演 討論集会」が行われた。原発の再稼働に向けて、新規制基準による適合審査が進められる中、原発周辺自治体の避難計画は、実現性の乏しいことが指摘されている。

 福島原発事故で浪江町から避難した菅野みずえ氏は、当時の混乱した避難の実態を振り返り、災害弱者といわれる老人、病人、障害者たちが最後まで取り残されたことを語った。また、『原発避難計画の検証』の著者、上岡直見氏は、交通工学的シミュレーションの見地から、「被曝を避ける住民避難は不可能だ」と言明した。

 上岡氏は、事故の進展シーケンスと放射性物質の放出、国会事故調のデータを提示し、「どの原発も、冷却材喪失などから1時間半で放射性物質の放出が始まる」と述べ、迅速な避難の必要性を指摘。また、バス車両など交通手段の手配、待機時の食材や水の確保、病人や障害者の扱い、自衛隊の支援、複合災害での運搬車両の不足を挙げ、「どこの自治体も、有事に対応できないことはわかっている。だからこそ、これが再稼働を止める理由になる」と訴えた。

■全編動画 講演 菅野氏/上岡氏※電波不良のため、一部見づらい場面がございます。何卒ご了承ください。

■全編動画 討論

  • 講演 菅野みずえ氏(浪江町)「3.11〜3.15全町避難の実態」
  • 講演 上岡直見氏(環境経済研究所)「交通工学から避難計画を検証。住民の安全は保証できない」
  • 討論

 主催者あいさつで、グリーン・アクション代表のアイリーン・美緒子・スミス氏は、「政府と電力会社は、夏前には原発を動かしたいと考えている。再稼働の有力候補が、関西電力の大飯原発だ。しかし、周辺自治体の防災計画はまったくできていない。こんな状態で再稼働は許せない」と述べた。そして、菅野みずえ氏の「3.11~3.15 全町避難の実態」と題した講演がスタートした。

崩壊する道路で逃げられない

 「2011年3月11日から、流浪の民になった」と切り出した菅野氏は、3.11の震災時、避難する際に体験した危険や、浪江町の請戸小学校の生徒全員が2キロの道を走り切り、津波から助かったエピソードなどを語った上で、「大地震では道路の遮断、崩壊が起こり、逃げられない」と指摘した。

 さらに、「私たちのように、短時間で人生の決定をしなくてはならない事態が、二度と起きてはいけない。福島では、雨にぬれるのも、花に触るのも怖い。私たちは『3月11日』を超えてしまった。でも、皆さんは、まだ『3月10日』を生きている。花を触ることができる暮らしを守り抜いてほしい」と訴えた。

どうやって国に捨てられたか、を伝えていく

 「よく、『福島を忘れない』という言い方をされるが、なぜ、終わったこととして扱うのか。放射能は、海や大地、食べ物、私の中にも潜んでいて、これから恐ろしいことが始まるというのに。だからこそ、今も目の前にある危機に警鐘を鳴らすため、自分たちが、どうやって国に捨てられたのかを伝えていきたい」。

 このように話す菅野氏は、避難計画がなおざりのまま、原発の再稼働が進められることについて、「特定秘密保護法で、これから原発事故が起きても秘密になるかもしれない。だから、きちんとした避難計画を作らないのではないか」と疑念を口にした。さらに、放射能測定をせずに流通している食材や、給食の危険性への注意を促し、「自分の身を自分で守ることに努めてほしい。ずっと『3月10日』が続くように」と講演を締めくくった。

被災者を「汚染源」と見る視線

 質疑応答に移り、原発事故の被災者が受ける被曝のスクリーニングについて、いくつか質問が寄せられた。菅野氏は「測るたびに数値は違ったが『大丈夫』としか説明されず、数値の記録などはもらえなかった」と話した。

 また、車の除染はされなかったと言い、「タイヤに付着した放射性物質が、高速道路で各地に広がった。私は『汚染源』であったと思う。車で大阪まで逃げたが、『あんたらが来るから汚染が広がる。トイレを使うと汚物が沈殿して大阪が汚染される』と言われ、結局、福島に戻って暮らしている。福島の子どもたちが転地療養に行く先でも反対運動があり、『到着した子どもにガイガーカウンターを向けて測れ』と言う人もいる」と、被災者差別の実態を静かな口調で明かした。

国から正しい情報は出てこない

 次に上岡直見氏が、交通工学の視点から避難計画について講演した。まず、プラントの安全検証に携わっていた自己紹介から始め、「原発再稼働と地域防災計画について尋ねた菅直人元首相の質問主意書に対し、政府は『原発再稼働と避難計画の整備は関係ない』と明言。さらに『防災計画は、各都道府県と市町村において作成される』と答弁した」と述べて、住民の避難について自治体に丸投げしている、国の姿勢を断じた。

 上岡氏は、原発は再稼働をしなくても危険だと主張した。「敦賀580トン、美浜390トン、高浜1160トン、大飯1430トンの使用済み核燃料が溜まっている」。

 また、「避難のポイントは2つある。物理的にどう動くか、と情報提供の問題だ。特定秘密保護法の可決や、オリンピック誘致のための安倍首相の『安全宣言』などでわかるように、国からは正しい情報は出てこない。これでは住民のパニックを誘発する。自治体の力を合わせて、再稼働を許さない努力をするしかない」と語った。

「被曝計画」になっている避難計画

 上岡氏は、原発の新規制基準の適合審査について、「原子力規制委員会は『安全を保証する審査ではない』と自ら認め、政府は『審査に適合すれば再稼働する』と、お互いに安全についての責任を放棄している」とし、地域避難計画の問題点を検証した。

 「自治体の立案した地域防災計画は、避難計画にはなっていない」と指摘する上岡氏。北海道、茨城県、石川県、京都府、滋賀県は、シミュレーションをしたが、迅速な避難は不可能なことが明らかになっており、「結局、住民をできるだけ動かさない、住民に知らせない避難計画になりかねない。つまり『被曝計画』になっている」と懸念を示した。

 そして、事故の進展シーケンスと放射性物質の放出に関する国会事故調のデータから、「どこの原発も、冷却材喪失などから約20分後に炉心溶融、1時間半で原子炉から放射性物質の放出が始まる」とし、迅速な避難の必要性を訴えた。

 このように、被曝を前提とした避難であることから、全国原子力発電所所在市町村協議会は「原子力災害対策への国の支援に関する意見・要望について」の中で、低線量被曝についての国民への理解活動と、全国の小中高等学校での放射線教育を、政府に求めている。上岡氏は「つまり、低線量被曝は問題ないと、学校で教えろということ。教育現場を利用するのは、非常に危険なことだ」と問題視した。

夏に原発再稼働を目指す政府サイド

 休憩後、美浜の会の島田清子氏が「原子力規制委員会は、早くて夏頃に再稼働の認可をする可能性が大きい」と、政府など再稼働推進サイドの情勢を説明した。次に、自治体に避難計画など交渉をした関係者らが登壇。神戸市、滋賀県、京都府について報告があり、ゆめ風基金事務局長の橘高千秋氏が、障害者や高齢者の避難計画と課題を話した。

 原発なしで暮らしたい丹波の会の児玉正人氏は、京都の避難計画の現状と課題について、「原発が集中する福井県の若狭湾から50キロ圏内に、約31万人の避難対象者がいる。避難の中継地点での住民のスクリーニングは、ざっと見積もっても全員完了するまで270日間かかる」と指摘し、非現実的な計画を批判した。続けて、主催者の山本氏から「滋賀県のシミュレーション。放射能の拡散と琵琶湖の汚染」の報告があり、意見表明と質疑応答に移った。

2億4000万ベクレルの汚染水の現実

 最後に、美浜の会代表の小山英之氏から、福島第一原発における深刻な汚染水問題のレクチャーがあった。小山氏は「福島第一原発では、毎日400トンの汚染水が発生している。1000トン入る汚染水タンクが2日半で満杯になる」と述べ、昨年から問題になっている貯蔵タンクの漏水について説明した。

 また、2号機東側の観測孔で、1リットルあたり300万ベクレルの高濃度汚染水が検出されたこと、さらに今年2月、H6エリアの貯蔵タンクから、1リットルあたり2億4000万ベクレルの超高濃度汚染水100トンが漏れ出ていた経緯を示して、小山氏は「このように現在進行形である福島第一原発の状況を、まったく考慮していない新規制基準で、再稼働審査ができるわけがない」と断じた。

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「「避難計画は住民の被曝が前提」上岡直見氏 「弱者が残される」菅野みずえ氏 〜再稼働を止めよう!討論集会」への1件のフィードバック

  1. @hainori2さん(ツイッターのご意見より) より:

    菅野さんのお話今日。「皆さんは310を生きている。明日の自分の姿と考えて欲しい」心に響きました…。

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