2014/01/11 【沖縄名護市長選】「これは沖縄だけでなく日本全体の問題」 ~岩上安身による稲嶺進名護市長インタビュー  

記事公開日:2014.1.11
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特集 名護市長選挙

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 普天間基地移設問題が焦点になっている名護市市長選。市長選に立候補する稲嶺進名護市市長に、岩上安身が独占インタビューを行った。

岩上「今度の名護市長選、焦点は辺野古の移設問題だと思います。稲嶺さんは認めないという立場ですね。自民党の議員や仲井眞知事も自らも、選挙の時には県外移設を主張していたのが一転して、昨年末、手の平を返して辺野古の埋め立てを承認すると言い出しました。どう思いましたか」

■イントロ

岩上「今度の名護市長選、焦点は辺野古の移設問題だと思います。稲嶺さんは認めないという立場ですね。自民党の議員や仲井眞知事も自らも、選挙の時には県外移設を主張していたのが一転して、昨年末、手の平を返して辺野古の埋め立てを承認すると言い出しました。どう思いましたか」

稲嶺「青天の霹靂というか、(仲井眞知事は手の平を返す直前の)つい2、3日前まで『県外』と言っていたし、県外をこれからもずっと要求していくと話をしていました。12月の県議会でも『県外をこれからもずっと要求していく』という話をしていたんですね。

なぜ沖縄でなければいけないか、なぜ県外ではダメなのか、というプロジェクトチームを立ち上げ、勉強会をして知事に提言。勉強会の中身は県外を追求していくための論理的な根拠を勉強する、そのことによって県内はダメなんだ、だから県外にすべきだと言ったんです。

 知事も任期あと1年しかないし、アイデンティティを示してくれるのではと考えていたんですが、あそこまで驚くべき回答を聞いたときには唖然としました。公約は政治家の命なんです。公約は誰に対してかというと県民のためなんですね。軸足が沖縄県民に向いていないという答えになるんですよ」

岩上「稲嶺さんは、辺野古への移設はならないと言ってきましたが、これまでも選挙の準備はされていたでしょうし、辺野古への受け入れは有り得ないという立場での選挙運動も決まっていたわけですね。対立候補の末松さんは前市長の島袋さん、自民党が押す推進派です。白黒はっきり分かれた状態で闘うことになることも、年末にはわかっていたわけですよね?」

稲嶺「前市長の島袋さんは、『移設なくしては名護市の振興もできない』と言っていました。『県知事が承認をしたら私もそれを認めましょう』といっていたんです。

 市長ならこれからの名護市を背負っていくわけだから、自己の主張を押すべきなんです。知事の主張に従うというのは、市長としての意識が弱いのではないかと思うんですよね。県内ではオール沖縄というふうに反対の声をまとめる動きがありますので、それを推進の方に出すと共感を得られないのではというのがあったと思います。

 彼らも実は容認派です。容認をするということで、選挙で勝てない、戦えないと。だから県外を打ち出したんだと。そのことによって焦点ぼかしをする。あとはぼかしじゃなくて県外というふうに要求するようになったんですが、彼らはもともとそういうDNAというか素地はあったんですよ。離党覚悟でやれという自民党本部からの脅しを受けながらやったと思うのですが」

岩上「仲井眞知事が、電撃的に安倍総理との1対1の話で180度変わってしまったことは、直前まで素知らぬ素振りを示していたわけですから青天の霹靂だったのか。それとも『やっぱりな』とお考えになったのか、どちらでしょう」

稲嶺「そうするのではないかという思いもありました。一方、今までの知事の言動、閣僚や大臣が沖縄にきたときも県外に移したほうが早いんだと閣僚のみなさんに言ってきたわけですから。それはパフォーマンスだったのかわかりませんけども。片隅にそういう心配を持ちながら、言動をみて我々はやはりそう信じていたいというのがありました。それを裏切られた気持ちでしたね」

岩上「選挙の直前でそういうタイミングが重なって、稲嶺さん個人に大変なプレッシャーがかかり、その圧力から回復できないうちに流れをつくってしまおうという。奇襲攻撃なのかと、傍からみているとそう見えました。こういう奇手に出てきた知事、知事を説得した国、自民党、総理大臣本人に至るまで総がかりです。稲嶺さんにかかるプレッシャーは非常に大きなものだと思います。ご自身の中で心が折れそうになるとか、ひるむとか、意気消沈することはなかったのですか?」

稲嶺「たぶん直前に市長が承認するというのは、一つの諦めというか、国が説得している、知事も承認した、もうこれは仕方ないんじゃないのという市民の諦めを煽って、流れを作ってしまうものだったのではないかと。

でも、これだけ県民に約束をしてきて、その気にさせて、ついに直前にそれをひっくりかえすというのは許せないと思います。県民を裏切るようなことをやっていたのでは、許せるものではないですから。

私はあきらめ感を煽るというよりは、こんなことは絶対に許さないぞと発奮することを感じているんです。選挙で示さなければいけないと思った人も一杯いると思います。私ももちろんそうです」

岩上「折れるということはなかったのですか?」

稲嶺「負けたら名護市の未来なんてグチャグチャになってしまう。これはもうがっかりだといって折れない。余計に頑張らなきゃと私は強く思っています」

沖縄は安保の担保として差し出された

岩上「なぜ基地があってはいけないか。新しく作ってはいけないか。ありとあらゆる機会でお話になっていると思います。今日の配信は全国どこでも、海外でも見ることができます。広い地域で見られるメディアですので、基地はなぜいらないのか、基地に反対する理由、そして、基地がなくても十二分に豊かな未来をこの名護にもたらすことができるという政策、この二つについてお話願いたいと思います」

稲嶺「基地があってはいけないということは、コンパクトに言える話ではないのですが。敗戦から始まる話ですね。日本も占領下にあったわけですから。1952年独立のためのサンフランシスコ条約を結びましたね。結ぶと同時に日米安保条約、その後ろには日米地位協定もあります。3点がセットで結ばれたんです。分割して我々は、米軍の統治下に置かれました。そうして軍の植民地という形で27年間続いたんです。

 それで、その間に本土のほうでは茨城県などから海兵隊が集まるようになりました。沖縄は日本全体の国土の面積で言うと0.6%、人口で言うと1%ですが、そんなとこに軍の専用施設の74%近くが集中しているんです。戦後68年間ずっとです。68年間で私たちは米軍基地があるがゆえの大きな負担をずっと背負ってきたのです。

 その間日本という国は安保で守られているので軍事費に予算投入しなくてもよかったわけです。アメリカが守ってくれるということです。その代わりに、経済振興のためにチカラを注ぐことができたんです。それは安保条約があったからですよ。その安保の、いわゆる担保が沖縄なんです。

 沖縄がその担保を担っている。我々としてはこれだけの間、負担をしいられてきたのですからこれ以上は勘弁してくれといっているわけです。

 そしてこれまで日米同盟も含めて在日米軍の抑止力、いわゆる在沖米軍の抑止力が今大事な時期だと。ということで今度の案も沖縄になってきたわけです。でも森本敏前大臣は、『軍事的には沖縄でなくてもいい。一番大きな理由は政治的な理由だ』と言った。ということはこれまで『抑止力』といってきたのは方便ではないかってことですよね。沖縄では嘘のことを『ゆくし』といいます。だから沖縄では『抑止力はゆくし力』と言っていますね。

 要するに根拠がなくなった。日本全土の国土と国民生命を守るというのであれば、これはやっぱり全国民が等しく恩恵を享受し、負担も分担しなければいけないのではないでしょうか。この放送が全国で見られているというならば、そのことを一番言いたいですよね。これは沖縄だけの問題ではなくて、日本全体の問題です。ですから、沖縄に閉じ込めることによって、沖縄問題に狭まっているけれど、そうではないですよ、一緒に考えてくださいね、というのが県民の願いなわけです。

 我々は68年間も差別の中で生きてきたのですから、もうごめんです。これ以上負担はさせないでくれというのが、まず『いらない』ということの大きな理由ですね」

岩上「仲井眞さんは、県外移設派から県内移設推進派に豹変しました。仲井眞さんがいい正月が迎えられると言っていたのは交付金がどっさり出る、お金が3000億円落ちるからです。そんなにお金がもらえるんであれば、沖縄は潤っているのではないかと、他の都道府県民にはそのように受け取られた方も一部でいるかもしれない。稲嶺さんはここにはからくりがあるんじゃないかとおっしゃっていますよね。それについて教えてください」

稲嶺「今回3000億という話がありますが、国庫で3000億という金額は、そのおかげで他府県よりもたくさんのお金をもらっているのかっていうと、そうではないのです。国庫で言うと補助率が高いという意味での優遇はあるんですが、金額で言うと全国よりもはるかに突出しているわけではないんです。国交省とかそういう役所の予算は全国で7番目くらいですね。何も沖縄が特別に多くもらっているという話でもないわけです。

 以前の太田知事の時は、4700億という話もありました。でも、それ以降ずっと右肩下がりでした。仲井眞知事になって一括交付金を上げてまた上がってきましたけど、それでもって喜んでいるというのもあるのですが。安保というわけで担保として我々が担っているのですから、3000億どころではないですよ。安保のおかげで日本は世界第2位という経済力まで来れました。それはなぜか。安保の中で経済力を上げてきたからです。GDPの何%かを沖縄に渡すべきじゃないかと」

岩上「ここは重要なんですけど、金額はもっと増えるべきだと。3000億で妥結した仲井眞はけしからんと。これが6000億、1兆とかだったら、もう大喜びで、基地をどんどん受け入れようという話ではないんでしょうか?」

稲嶺「そういう話じゃなくて、これまでそういう基地を受け入れることによって代わりに振興策という飴と鞭の構図がおかしいということです」

岩上「他の都道府県だったらそんなことない、そんなものをする必要なしに交付金をもらっている、沖縄だけがそんな条件付きでもらっていることがおかしいのではないか、ということですね?」

稲嶺「構造的な差別の中で68年間ずっと置かれてきたわけです。だからもうこれ以上の負担はごめんなのです」

岩上「しかし、基地がなければ経済が成り立たないのでは、とか、基地と引き換えに国から出る米軍再編交付金などがないと駄目なんじゃないかという人もいる。対立候補の末松陣営は、はっきりと基地を受け入れる、そして米軍再編交付金をガバっと受け入れて名護を再振興させますよとしています。

稲嶺さんは米軍再編交付金の受け取りをしないので、財政が圧迫されて大変苦しい状況になっているという宣伝をしているようです。

これまで実績として名護市政を復興させてきたと稲嶺さんはおっしゃっていますが、そのことについてはどうでしょうか」

稲嶺「私が就任した平成22年12月、予算書にもきちんと、防衛省も納得の上で予算書に計上されておりました。ところが国からゼロ回答で剥がされたんですよ」

岩上「露骨ですね、やることが」

稲嶺「手当の仕様がなかなかないですよ。一番地域が望んでいること、例えば各地区の集会所、コミュニティセンター、2箇所が米軍再編交付金でやるはずだったのが、それも剥がされたので、それは次の2月までの間には別の事業のメニューを当てて、この2つはすぐに復活しました」

岩上「政府との交渉やり直しをしたということですね?」

稲嶺「いえ、別の事業です。防衛省の予算ではなくて、総務省だとか、他省庁の事業メニューを当てると。この建設事業費に限り、平成22年はがくっと落ちました。でも予算の総額としては増えたんです。それからずっと増えまして、21年度の予算が290前後でしたが、私の25年度には358億くらいまでいっていますので。そういう形で増えてきています。全体が増えるのに併せて建設関連費も増えています。デマで流れているような事実は全くないです」

岩上「総額の予算が増えているのは驚きです。防衛省だのみだったのが、他からも出てきて土建業者も事業ができるように潤ってきた」

岩上「基地はないと防衛安全は成り立たないという主張もあります。他方で、基地はあってならない、新しい基地に反対するどころではだめだと。名護にすでにあるキャンプ・シュワブの返還を求めるべきだという声もある。その近くが景勝地だから、これを活かして一大リゾート地を作り発展させようという声も出ました。沖縄の基地返還跡地では、観光や再開発で大いに雇用を生んでいます。この事実を知らない人も多いと思うんです。

 国が後押ししているのが中央のマスコミですよね。中央のマスコミの嘘を現場から破ってもらって事実を知らせれば、国も無茶できなくなると思いますが、どういうプランなのですか」

稲嶺「基地がないと沖縄は食っていけないのではないかという話があります。しかし、観光客だって今は600万人超えています。当初は県内経済のGDP15%くらいが基地関連の収入だったんですが、今は県全体からいうと5%以下にまで落ちているんです。

 これからも沖縄が生きていくには、観光産業に力を入れて行かなければいけないですよね。観光の資源がある、青い海、青い空、世界遺産に登録しようという動きがあるくらい豊かな資源があるんですから。

 辺野古には希少動物や海藻もあるんですよ。県の指定する保全地区Aクラスでもありますが、そこを埋めて飛行場をつくろうとしているんですよ。平和産業を推進していくべきだと思いますね。

 軍事産業で沖縄の未来は暗い、明るいものは全くないです。自ら作り出していく、自ら稼ぐ構図をつくっていかないと、いつでも天から降ってくるようなお金を当てにしていたら、そこに振興はありえないですから。基地の工事が終わったらお金が入って来ませんが、あとあるのは飛行機が落っこちてくる危険性ですよね」

岩上「島ごとミサイル3発で吹っ飛んでしまうと、昨日(1月10日)のシンポジウムでも言っていましたね。沖縄に前方展開していると海兵隊が全滅してしまうので、後方に退かざるをえないと。それなのに、基地をつくるという矛盾。おかしいですよね」

稲嶺「アメリカの米軍再編計画というのは、何も沖縄じゃなくてもいい、嫌われてまでも沖縄にいる必要はないとしているんです。でも日本政府が『いや沖縄にいて欲しい』と。

 前に沖縄の海兵隊は撤退するという計画がアメリカ側から起こったと言うんですよ。そのときには日本政府が止めたんです」

岩上「このことは、大きく報じられていません。でも、これは重要な発見だと思います。あともう一つ、観光産業というのは平和産業であると。だから平和でなければいけない。沖縄には本土からきている観光客が一番多いと思うのですが、国外だとどこが多いのでしょう」

稲嶺「やっぱりアジアですね。香港、中国、台湾、フィリピンなどの留学生もね」

岩上「今、日本の観光地ってどこへ行っても中国の方ばかりですよ。もしアジアとの敵対関係がどんどん進んでいったら、観光客がいなくなってしまいます。安倍総理は一方で軍事国家化を進めていますけど、他方で外国人観光客を増やそうという目標を掲げています。観光立国なんてとてもできないですよね」

稲嶺「しかも靖国参拝なんてね、それにこれまでの歴史と向き合って謝るべきとこは謝る、正すべきとこは正すってことをしないと。

 オリバー・ストーン監督が沖縄に来た時に ピーター・カズニックという大学の先生が一緒に来られましたけど、『歴史に学ぶべきだ』とおっしゃっていました。『歴史に学べば新しい先が見えてくる』と。『日本は歴史に学んでいない』と話をしていました」

(IWJ・鈴木美優)

「我が日本どこへ行く」

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2件のコメント “2014/01/11 【沖縄名護市長選】「これは沖縄だけでなく日本全体の問題」 ~岩上安身による稲嶺進名護市長インタビュー

  1. 名護市のHPを震災後によく見ていました。さざ波と鳥の鳴き声。
    311の大津波が海の姿だと認めたくないのです。

    香港に行った時、川や海は汚れていて、ガイドさんさえ「この川には時々赤ちゃんが流れてきます。」と話してました。中国はとても広い国。今まで一度も海を見たことのない人がたくさんいます。沖縄には中国からの観光客も多いと思います。日本人がハワイでブランド品買いツアーから少し成長して、ハワイの土着の文化やヒーリング、自然散策などを楽しむようになってきたところで、沖縄の方が近いし食べ物も美味しいし、ヒーリングスポットもたくさんあるし、、という価値の転換も始まっています。
    基地なんか、いりません。 
    ハワイの島々にも元大統領がお住まいだとか。
    沖縄はアジアのヒーリングスポットになっていけばいいのに。沖縄時間は、人間が本来備わっている生命力を回復していくのにぴったりなのでしょう。 
    戦争の悲惨との折り合いを、うちなーんちゅに押し付けるのも終わりにしないといけません。

  2. 記事内容以前にここの主催は人様にインタビューしに行って帽子も取らないのか?
    思想の左右以前の問題で常識が疑われるレベルなのだが。

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