「農業分野でも非関税障壁はある!そのひとつがトレーサビリティ(生産履歴)だ」 ~TPPを考える国民会議/TPPを慎重に考える会 第46回勉強会 2013.5.22

記事公開日:2013.5.22取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松、文字起こし:@sekilalazowie、校正:柴崎)

特集:IWJが追ったTPP問題

※全文字起こしを掲載しました(6月6日)

 2013年5月22日(水)15時30分より、東京千代田区の衆議院第一議員会館にて「TPPを考える国民会議/TPPを慎重に考える会 第46回勉強会」が開かれ、TPP参加による影響試算が発表された。

 TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会による、影響試算の第1弾の報告書によれば、北海道の農業への影響について、「現在、小麦、てんさい、じゃがいも、豆類などが輸作されているが、TPP参加によって、小麦、てんさい、ばれいしょでん粉は100%海外産に置き換わることが予想される」とあり、「このため、地力の低下や連鎖障害などによって、他の輸作作物までもが生産不可能になり、影響がさらに拡大する」と指摘されている。

 非関税障壁をめぐっては、農業分野以外での懸念が語られがちだが、「農業分野でも非関税障壁はある。そのひとつがトレーサビリティ(生産履歴)制度。食の安全・安心のための食品検査・認証制度が、TPP参加によって脅かされるのではないか」と警鐘を鳴らした。

■全編動画

  • 内容
    「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会 影響試算作業チーム 試算発表について」
  • 講師
    大学教員作業チーム:関耕平氏(島根大学准教授)三好ゆう氏(桜美林大学専任講師)、土居英二氏(静岡大学名誉教授)、醍醐聰氏(東京大学名誉教授)
  • 日時 2013年5月22日(水)15:30~
  • 場所 衆議院第一議員会館(東京都千代田区)
  • 主催 TPPを慎重に考える会、共催 TPPを考える国民会議

 TPPを考える国民会議事務局長の徳永エリ氏が司会になり、TPPを慎重に考える会会長で衆議院議員の篠原孝氏、TPPを考える国民会議代表世話人で、日本医師会前会長の原中勝征氏らが開会のあいさつをして、勉強会は始まった。

 最初に、影響試算作業チームの関耕平氏と三好ゆう氏が、農家における所得試算について話した。「農水省試算は、TPP参加によって変わるであろう生産量×価格で、生産額の減少額を算出し公表した。われわれは、積み上げ方式で、農家の農業所得の減少額を算出した」と述べた。

 さらに、「農水省は20品目を調べたが、当作業チームは、農作物8品目(米、小麦、大麦、牛乳乳製品、牛肉、豚、鶏肉、鶏卵)にしぼって試算した。全国レベルで、3483億円の所得減となった。北海道のみでは、599億円の所得減少がみられた。また、東北4県の米に限って計算すると、新潟97億円、石川37億円、富山57億円、福井45億円の所得減が算出された。減少率に換算すると、全国8品目では、11.9%、北海道15.6%。米だと、富山、福井では25%近い減額がみられた。試算の結果、品目は限定的であったが、生産額ベースを所得ベースに引き直して試算すると、品目別、また各地域別に、深刻な影響をもたらすことが見えてきた」と報告した。

 次に、経済統計学を専門にする土居英二氏が登壇し、「産業連関表を用いたTPPによるマクロの影響試算(1) -農林水産業をはじめとする産業の生産、雇用への影響(減少分)-」と題した研究を発表した。「試算の目的は、TPPによる政府統一試算の検証と、国民の選択のための豊富な情報提供である。内閣府発表の政府統一試算(3月15日)では、関税撤廃により3.2兆円、GDP+0.66%と言うが、農林水産物生産減少額が3兆円で、それによる隠れた部分、つまり生産額減少(+関連産業への波及効果)、雇用者減少、GDP減少などを加味して、政府試算を検証した。そこでわかったのは、『全産業の生産減少額は、約10兆5000億円になる』ということ。農林水産物の生産減少額は、他産業からの跳ね返り効果を含め、約3兆4,700億円、約190万人の雇用減、GDP4.8兆円減少で1%押し下げ、消費は2.7兆円減少する」などの試算結果を発表した。

 続いて、醍醐聰氏が「試算結果のポイントと試算値に表れない実態 」と題した報告を行なった。醍醐氏は「輪作を加味した影響試算が抜けている。たとえば、十勝地方だと、小麦・てんさい・ばれいしょ・豆類の4年輪作をしている。網走地方だと、てんさい・ばれいしょ・麦の3年輪作だ。試算だと、小麦・てんさい・馬鈴しょは、ほぼ100%輸入品に置き換わる。いんげんは約20%、小豆は約70%、輸入作物に置き換わる。日本の畑作農家は50%近くの減益になる」と、影響試算を説明した。

 さらに、農業分野での非関税障壁について、「生産履歴(トレーサビリティ)の取り組みとして、土づくりから収穫までの作業(散布した農薬の時期・種類・使用料・回数などを含む)を履歴として記録しているが、輸入品に対するトレーサビリティ管理が、非関税障壁とされるのかを、農水省に問い合わせた。すると、FAO(国連食糧農業機関)に準ずるといい、食品検査・認証制度における道具のひとつとしての、トレーサビリティ/プロダクトトレーシングに関する原則を示した。そこには『輸入国がトレーサビリティを用いる場合に、輸出国が、それと同じことをすることを義務とすべきではない。また、トレーサビリティを含む食品検査・認証制度は、必要以上に貿易制限的であるべきではない』とある。まさに、悪貨が良貨を駆逐するのではないか 」と醍醐氏は警鐘を鳴らした。

 質疑応答に入り、元衆院議員の首藤信彦氏が、「TPP参加で関税撤廃となれば、5000億円から6000億円の関税収入が消える。また、国内の産業が消えれば、所得税が消える。農業関係の失業が200万人前後と予想されるが、農業の場合は転職が難しく、完全失業となれば社会保障費が急増する。地方自治体が崩壊すると、そこに国家予算がつぎ込まれる。そういう試算、マイナスの影響は、どのように評価するのか」と尋ねた。

 醍醐氏は「同じ問題意識を持っている。国の税収、財政収入にどのような影響があるか。また、都道府県別にも試算したい」と応じ、「農産物の関税については、農水省が把握しているかと聞いてみたが、担当者はわかっていなかった。膨大な関税収入が消えることを、どこにも織り込んでいないのではないか。問題は、税収を失うだけでなく、それを原資にしていた、国内価格を下げるための価格調整制度にも影響が出るということだ。これはダブルパンチになる」と懸念を表明した。土居氏は「税収への影響については、ほとんどの税目で計算は可能だし、(政府は)すでにしているはず」とした上で、「ざっと計算しただけでも、1兆円近い国税を失う」と述べた。

―― 以下、全文書き起こし ――

徳永エリ議員「おまたせを致しました。お時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。TPPを慎重に考える会事務局長をさせていただいております、参議院議員北海道の徳永でございます。よろしくお願い申し上げます。

 今日も平日のたいへんお忙しい時間帯に大勢お集まりいただきましたことを、心から感謝を申し上げたいと思います。今日は、第46回の慎重に考える会に今日からということで、TPPを考える国民会議と合同で開かせていただきました。

 みなさん、新聞等でもうご存知かと思いますけれども、3月15日の安倍首相のTPP参加表明以降、東京大学名誉教授の醍醐聰教授を始めとする大学の教員17名の方々が、TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会(※1)と。大変力強い会でございますけれども、発足をいたしまして、現在、870名もの大学教員の皆さんが賛同していただいて御活躍中ということでございます。

(※1)TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会

 北海道にも影響の調査に行かれた(※2)ということでございますけれども、このたび、この会はTPP影響試算作業チームを立ち上げられまして、現地調査も踏まえた影響試算を5月22日に記者発表(※3)をするということになりました。

(※2)

(※3)

 それに合わせてということでしょうか。私たちもぜひお話をうかがいたいということで、今日はこの会を開かせていただきました。先生方、本当にどうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 それでは今日の勉強会を始める前に、開会のご挨拶ということで、TPPを慎重に考える会の篠原会長より皆様にご挨拶でございます。よろしくお願いいたします」

篠原孝氏「どうもお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。先生方、ありがとうございます。いま、徳永さんからありました通り、今日午前中、先生方がいろいろ苦労していただいたわけですけれども、TPPの影響試算、政府が非常になまくらな試算を発表しております。

 前提がいくつもあって、聞いているうちによく分からなくなるようなものなんですが。これはどういう前提にするかということで、数字っていうのは大きく変わってくるわけでございます。

 いろんな角度から影響試算をしていただくのがいいんじゃないかと思っております。午前中に、もう記者発表をしていただいてるわけですけれども、今日すぐに午後に勉強会を開こうということで、早速セットいたしましたところ、おいでいただきまして、本当に有難うございます。

 今日はTPPを慎重に考える会とTPPを考える国民会議(※4 )共同の主催でございまして、どちらかというと、慎重に考える会のほうが主導する会合でございますので、私の方から最初に挨拶をさせていただいております。

(※4)TPPを考える国民会議(リンク切れ) 

 やっぱり政策というのは、きちんとした数字の裏付けがあってこそ成り立つんじゃないかと思っております。きちんとした数字の裏付けがなく、雰囲気だけでフワフワっとしたことで政策を打ち立てたり、対応を決めていくと、大変なことになるということでございますので、いったいどれだけ、

 わが日本国がTPPに入った場合に、影響があるのかということを、きちんと専門家のみなさんからうけたまわって、質問招致の、我々の活動の原動力にしたいと思っておりますので、今日はよろしくお願い致します」

徳永「慎重に考える会、会長の篠原より皆様へのご挨拶でございました。続きまして、共催者といたしまして、TPPを考える国民会議の原中勝征(※5)代表世話人、お願い申し上げます」

(※5)原中勝征 はらなか-かつゆき(1940-)医師。日大助教授、東大医科学研究所内科医局長をへて、平成2年東大助教授。3年杏仁会大圃病院理事長・院長となる。5年筑圃苑理事長。16年茨城県医師会会長。22年民主党支持を表明して日本医師会会長選挙に勝利し、第18代会長に就任。福島県出身。日大卒。(kotobankより)

原中勝征氏「本当にお忙しい中、ご参加くださいましてありがとうございました。先日わたしたちが、アメリカを訪問して、その報告会をさせていただいたところでございますが、とにかく日本の温度とアメリカの温度が全然違う。

 もう向こうでは、日本の国内は全部賛成してくれているものだとしか考えていなかった。私たちが知事会であるとか、あるいは議長会であるとか、市町村会の方々の反対する声明、特に与党の自由民主党の方々の条件を、英訳をして持って参りました。

 読んだ向こうの人たちは驚いて、こんな反対をしてるのははじめて知った、というような状態でございました。本当に私たち、このブラックボックスの中に、何がどういう条件が入っているかということを全く知らないで、調印するなんてことはとんでもないことでございまして、考えれば考えるほど、日本の主権がなくなり、あるいは自分たちの子供や孫の時代に、日本の国がどうなっているかということを、真剣に考えなきゃいけない、そんな時期だと思っております。

 今日は、先生方のお話を聞きながら、もう一度、私たちがどういうふうに活動すればいいかということを、考えて行きたいと思います。どうもありがとうございました」

徳永「原中代表世話人よりご挨拶でございました。次第によりますと、一番最初は土居教授からとなっておりますが、まだご到着なさってないということでありまして、次第の二番目から、関耕平・島根大学准教授。財政学の専攻をなさっております。関准教授からでよろしいでしょうか。それでは。

 そして、ご一緒に今日お越しいただいております三好ゆう・桜美林大学専任講師。やはり財政学を専攻していらっしゃるということでございますが、今日は『農業経営統計を用いた所得ベースの影響試算』全国ベースの影響試算と北海道の影響試算ということでお話をいただきたいと思います。それでは、よろしくお願い申し上げます」

関耕平氏「島根大学法文学部の関と申します。本日は、隣におります桜美林大学の三好とともに、特に農家の所得のところで、どのような影響があるのか、ということを試算致しましたので、その結果についてお話をさせていただきます。

 15分ほどの時間をいただいておりますので、説明させていただきます。座って話をさせていただきます。配布資料の4枚目の資料で、A4で横にしていただくような形になりますが、関・三好と右上に書かれました資料(※6)がございます。

(※6)当日配布資料 TPP影響試算の結果発表 (TPPを考える国民会議HPより ※リンク切れ)

 こちらの資料に基づきまして、簡単にご報告をさせていただければ、というふうに思っておりますので、よろしくお願い致します。パワーポイントでもやっておりますが、基本的にはこちらで配布をした資料、これに基づいてお話をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 私たちのグループでは、ボトムアップ型の試算ということで、要は積み上げ方式によるTPPの影響による、特に農家の所得、収入、これに対する影響を明らかにするということを、目的としてやって参りました。

 このあと、当初の予定は一番最初だったんですが、土居先生のほうからお話をいただくのは、もう少しマクロ、全体で見たときの影響額についてですけれども、我々は積み上げ方式でこれに迫ろうというふうに考えました。

 この試算にあたりまして、特に農水省のすでに公開されている、政府によって公開されているTPP交渉にあたっての影響額試算(※7)というのが出ております。それに基づいて、更にそれを農家の所得にどのような影響があるのかということを考えております。

(※7)農林水産物への影響試算の計算方法について
(内閣官房HP 経済連携・TPPに関係情報○TPPの試算について 平成25年3月15日公開資料 ※リンク切れ)

 先週の金曜日だったと思いますけれども、安倍内閣が第二次の成長戦略を発表して、そのなかで農業所得を10年間で2倍にするというようなことを発表した(※8)というふうに思いますけれども、まさにこの2倍にするというふうに言われているところの農業所得。TPP参加によってこの農業所得がどのようにマイナスの影響をともなうのか、ということを試算いたしました。

(※8)成長戦略スピーチ(平成25年5月17日)
 今日、私は、ここで正式に、「農業・農村の所得倍増目標」を掲げたいと思います。
 池田総理のもとで策定された、かつての所得倍増計画も、10年計画でありましたが、私は、今後10年間で、六次産業化を進める中で、農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を策定し、実行に移してまいります。(首相官邸HPより)

 こちら、次のページに行っていただきまして、農水省による影響額の試算というものと、私たちが計算した計算ということの関係についてフローチャートにまとめてございます。こちらを見ながらお話をしていきたいと思いますけれども。

 農水省が試算をした部分というのは、この資料の真ん中、上の部分にあたります。農水省の試算、国として試算をしたものですけれども、この試算につきましては、実は生産量が何パーセント減るのかという数値。そしてそれらも含めて、生産額として、どれぐらい減少するのか。この数字が出されております。

 実はこの計算も、具体的にどのような計算に基づくのかということは、かなり複雑になっていますけれども、私たちはこの生産額の減少額、そして、生産量の減少というものに基づいて、右上の総生産額というのを改めて出して、全体の生産額がどれぐらい減少するのか、というこの減少割合を求めました。

 それに基づきまして農業産出額。これについては統計で全体が出されておりますので、この農業産出額の減少額を出して、それをさらに農家の所得として割り戻した時に、どのぐらいの農家の所得が減るのかという、ここまでたどり着くという作業をいたしました。

私たちの試算ですけれども、実はいくつかの限界がございます。試算の対象項目としたのが、農作物の8つの品目です。一番最初のページに戻っていただきますと、試算の方法というのがございます。

 農水省は20品目について試算をして、それぞれ生産量の減少割合と生産額の減少額というのを出しておりますけれども、データ制約等々がございまして、20品目中8品目に、主要な8品目に、現時点では絞って計算をいたしました。

 その結果をお示ししたのが、3ページ目のところ、表1というふうに書かれているところです。表1というところを見ていただきますと、表1の一番右側、これが具体的に農家の所得として、どれぐらい減少するのかという減少額をお示ししております。

 これを品目として8品目足し合わせますと、表1の一番右下の数値になりますが、3,483億円。こちらが8品目のみに絞っておりますけれども、この額が農家所得として、農家の人々の所得として、減少するという額として、確定する数字だろうということで出すことができました。

 これ以外にもいろいろと計算しております。次のページに移っていただきますと、表2と書かれておりますけれども、表の2を見ていただきますと、これは北海道。北海道に関しての影響額です。北海道の影響について試算をしました。

 これも主要な8品目に限定してそれぞれ、農水省で出ているのが生産の減少のところなんですが、それをさらに追跡していって、所得が具体的にどのぐらい減るのかというので、一番右側の列。こちらが農家の所得としてどれぐらい減るのかという額です。

 これも同様に、一番右下。表2の一番右下を見ていただきますと、559億円というものが出ております。

 更に、部門別の計算をして見ようということがありまして、表3。こちらは畜産に限って、畜産に限りまして、それぞれ地域、宮崎、鹿児島、北海道という主要な産地のところを計算してみました。そうすると、それぞれ品目別にこのような金額の、所得の減です。

 これまでは、繰り返しますが、生産額の減少額ということで、ずっと議論がされてきましたけれども、これをもう少し地域別に、そしてさらには具体的に、農家の所得としてどれぐらいの影響があるのか、という額ですね。出したということになります。

 表3の説明をしましたが、次は表4ですね。畜産の話を今しましたが、表4はおコメに限って、北陸、主要な生産地である北陸に限定をして、今回はコメだけの減少額、特に所得にどう減少したのか。所得の減少に繋がるのか、ということで出しております。

 例えば表4ですけれども、新潟につきましては、97億円。富山については57億、石川県については37億、というかたちで、コメだけでこれくらいの所得の減少が予想される、ということで算出をしております。

 それぞれこのように算出をした、所得の減少というのがどれぐらい大きいものなのか。痛いものなのか、ということについて考えるというのが表の5です。

 表の5を見ていただきますと、一番上の行ですけれども、8品目、全国と書いております。さきほども述べましたが、全国で農業の所得が一番右側の、右から二番目のところになりますが、3,483億円の農家の所得減ということになります。

 これは、実際の5年の平均の農家の所得からくらべると、全体の農家の所得の一割程度、11.9%、約12%の所得がTPP影響によって減る、ということが出されております。北海道ではどうかということで、限定して考えたところ、15.6%になります。畜産についてもそれぞれ計算をして、特に鹿児島なんかは一番ですね。

 コメ部門に関しては、コメ部門だけのTPPの影響、所得への影響額。例えば福井県だと4分の1の農家の所得が減ってしまうというような結果が出ております。

 以上、述べてまいりましたけれども、これらについて、最後、重複もありますが簡単にまとめておきたいと思います。次のページに行きまして、結果のポイントというふうに書いてあるところに基づきまして、まとめてお話をさせていただきたいと思います。

 まず、今回、今数字を出しましたけども、今回の所得額の減少についての試算の前提ですけれども、何度か繰り返しておりますが、農水省が20品目でこれくらい影響があるよというふうに出しておりますが、そのうちの8品目。資料制約ですとか、作業の時間的な余裕がないと思いまして、8品目に絞って、今回やっております。

 その意味では、少なめに見積もった影響額だということを前提としてあります。例えば、インゲンや小豆や落花生、馬鈴薯を含めた澱粉ですとか、ビートですとか、他にも地域ごと、都道府県レベルでは、大きな差が出てくるような果樹ですとか、特に減少額として農水省レベルの生産額の減少額として大きかった砂糖ですね。これは1,500億円マイナスだろうというふうに農水省が言っております。こういった砂糖についても、今回の試算については外さざるを得ませんでした。そういう意味では、控えめな試算であるということを前提にしてお話をさせていただきます。

 まとめになりますが、全国の影響額、繰り返しになりますが3,483億という減少額が出るということになりました。これは5年間平均の全国の農家さんの所得2兆9千億の中で考えますと11.9%の所得減を意味します。

 これらについては、実は全国でこの数字が出ますが、地域ごとにかなり偏在するということで、表2でお示ししましたが、北海道についてということで、試算を出しております。

 しかしここでも、注意いただきたいのは、馬鈴薯やてんさいなどを除いております。道内の農産物の産出額の5割強の品目に限定した、限定した試算結果です。それでも、559億円という数字。道の農業所得の15.6%にあたる部分が吹き飛んでしまうという結果が出ております。

 これ以外にも定性的に考えますと北海道に於いては輪作が行われております。つまり、小麦やてんさい、じゃがいも、豆類ですね。これらが輪作されているわけです。このうち、例えば小麦、てんさい、馬鈴薯でも、これらは100%置き換わる、というふうに農水省の試算でも出てきます。

 あとから醍醐先生よりお話があると思いますが、このように輪作のなかの一つの作物が100%ダメになったというときには、それ以外の影響がないと見られているような作物も含めて、おそらく生産が不可能になる、ということが容易に考えることができます。

 そういうことも含めて考えると、かなり控えめな数字としてこの数字を見ていただければ、というふうに思っております。

 次に、品目ごとの試算結果ということで、畜産とコメについてご提示をいたしました。ここから何が読み取れるかということであります。畜産部門については意外に所得の影響額が小さいように思われるかもしれません。

 しかし、これは口蹄疫等によって畜産部門が、赤字が最近ずっとありました。5年間の平均を取ってますので、畜産部門の所得として最終的に手元に残る部分というのはかなり小さく計算されていると。その意味もあって、所得のマイナスとしては小さく出てしまうわけです。

 しかしながら、当然、畜産については多額の投資や経費指数を伴っておりますし、地域のなかでも大規模産業として位置づけられ、その意味では、TPPによってこの畜産がマイナスを受けるということは、地域経済に関しては相当大きいと。所得減という形には見えなくても、大きいというふうに考えることができます。

 それ以外にも、畜産というのは畑作との連携を、耕畜連携という形で行われております。そういう意味でも、大きなダメージになると予想できるだろうというふうに思います。このように、小さく見積もられているように思うんですが、それでもさきほどの表でお示ししたとおり、例えば宮崎県では44億円の減。

 これは、県内の農業所得の4.7%。鹿児島県は、更に大きくて、畜産だけで119億円のマイナスと出ております。これは鹿児島県の農家の所得の1割減に値するものです。

以上、畜産について述べて来ました。おコメについても同様のことを資料でお示しをしました。おコメについては特に大きくて、富山県では、57億円。これは富山県内の農家の所得の26%に相当します。石川県も同様、37億円ですが、これは県内の農家所得の2割近く、19.8%。

 福井県に至っても25.6%が減るというような結果が出ております。以上、このような作業をしていきました。この後でお話をされる、土居先生とは違う手法で、いわば積み上げ型で、今回、品目ごとに細かく積み上げて、金額を見ていったわけですけども。

 以上の作業で明らかになったのは、品目は限定的にやったんですが、20品目中8品目ですね。というような形でやったんですが、それでも、品目別、もしくは各地域別にかなり大きな深刻な影響がもたらされるということが、明らかになったと思います。

 その意味では地域によって、地域ごとに、各地域におけるTPPの影響というものがよりリアルに、全国数値よりもよりリアルに把握できたのではないか、というふうに思っています。

 安倍首相は5月8日の参議院の予算委員会の中で『自分たちの地域にどういう影響があるのか不安があるのは理解できるが、技術的に難しいというふうに思います』(※9)。また、担当大臣は『こういう作業をすると不安を煽るような試算を出してしまう。それはいかがなものか』というようなことが国会での発言でありますけれども。

(※9)首相「地域別は難しい」…TPPの農業影響試算
 安倍首相は8日の参院予算委員会で、環太平洋経済連携協定(TPP)に参加した場合の農業に関する都道府県別の影響試算について、「自分たちの地域にどういう影響があるのか不安があるのは理解できるが、技術的に難しい」として公表に難色を示した。
 甘利TPP相も「不安をあおるような試算の出し方はいかがか」と消極的な考えを述べた。都道府県別の試算を公表した場合、混乱を招きかねないとの判断があるとみられる。
 政府は、TPPに参加した場合の農業への影響額を全体でマイナス3兆円と試算している。これに対し、都道府県別の試算も公表するよう求める声が与野党双方から出ている。都道府県では、北海道が農産物の生産減少額を4762億円と試算して公表するなど、独自の対応が広がっている。(2013/05/09 読売ニュースより)

 やはり、我々が今回試算したように、こういった47都道府県を含めて、TPPが各地域に具体的に、特に農家の所得として具体的にどのような影響があるのかと。これをしっかりと浮き彫りにして、具体的な試算を積み重ねた上で、適正に議論をしていくことが望まれるのではないかというふうに思っております。

 以上、ちょっと長くなりましたけども、終了とさせていただきます」

徳永「ありがとうございました。それでは続きまして、ご到着なさいましたね。土居先生、お願い申し上げます。静岡大学名誉教授の土居先生から、産業連関表を用いたマクロの経営影響試算ということで、生産、雇用、GDPへのプラスマイナスの影響、そして都道府県別に見た影響ということでお話をいただきたいと思います。それでは、土居先生。よろしくお願いいたします」

土居英二氏「みなさん、こんにちは。今日はお招きいただきましてありがとうございます。静岡大学の名誉教授をやっております土居英二と申します。専門は、経済統計学ということで、特に政策形成、立案あるいは形成、そして政策の評価、効果に関わる研究を続けてまいりました。

 三十数年続けてまいりまして、専門をいえば経済統計学、広く言えば経済学ですね。狭く言えば産業連関表(※10)とか、費用対効果分析(※11)とよく言われます。費用便益分析とか、そういうことを大学では研究して教えてまいりました。

(※10)産業連関表 : 一定期間内における一国のそれぞれの産業部門が生産した財・サービスが各産業部門と最終需要部門とにどのように配分されたかを統計数値によって表にしたもの。レオンチェフが初めて作成した。投入産出表。レオンチェフ表。I/O表。(kotobankより)

(※11)費用効果分析:ある目的を達成するための諸案の費用と効果を比較検討し,優先順位を明らかにすること。効果については,金額表示されるとは限らない点が,費用便益分析と異なる。 (kotobankより)

 今回、TPPの影響試算について、私も、特にアベノミクス全体について、三本の矢(※12)ということで、たいへん私も関心を持っておりまして、研究を個人として、それこそもう退職しておりますのでやっているということなんですが、自主研究ということでやってまいりました。

(※12)アベノミクス:2012年12月に誕生した安倍晋三内閣の経済政策。エコノミクスとかけ合わせた造語で、レーガノミクス(1980年代・米レーガン政権の自由主義経済政策)にちなむ。「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」という「3本の矢」で、長期のデフレを脱却し、名目経済成長率3%を目指す。(kotobankより)

 ちょうどそこへTPPの影響もやろうじゃないかということで醍醐先生からお話がありまして、チームに加わらせていただきました。

 私の一枚目のメモをご覧いただきたいと思います。目的は、TPPによる政府統一試算の検証ですね。政府統一試算というのは、6つの数字しか載っておりません。輸出、輸入、消費、投資、そして全体としてプラスになるよと。GDPベース。それを通じてプラス3.2兆円。プラマイでプラスになるから、やっていこうという数字的な根拠は示されています。(※13)

(※13)関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算(平成25年3月15日 内閣官房 ※リンク切れ)

 しかし、私はこの数字を見ましたときに、輸出が2.6兆円。輸入が2.8兆円ということだけを考えましても、輸出というのはそもそも日本を代表する自動車とか、電気機械とか、そういうふうな非常に言ってみれば、世界凝縮的な競争力を持つ資本集約型の産業でございます。

 ですから、プラスの輸出が、相手のほうの関税がなくなって、プラスの恩恵をうけるのはそういう輸出と。具体的に言えば工業と。そして輸入で影響を受けるというのは、第一次産業の農林水産業をはじめとして、それにとどまらないというのが今日の私の意味付けでもあります。

 そういう政府の統一試算が発表されGDPでプラス3兆円、マイナス何兆円というふうにでてまいりますけれども、実はあの背後には大変な産業が支えているわけでもありますし、関連産業としてもその裾野はとても広いです。そして、そこでまた、働いていらっしゃる労働者の方、就業者の方、農家の方がいらっしゃいます。

 そういうふうな、生産活動の現場、そして雇用、就業の機会というのがどう変化するのか、もう少し水面下の現実の様子を浮き彫りにしてみたいという衝動に駆られまして、産業連関分析、いわゆる経済波及効果。普通の経済波及効果というのはプラスの効果を出すことが多いんですけど、この場合にはマイナスの波及効果と。

 農作物が3兆円全国で減少した場合、いったい日本の国内の経済活動にどんなインパクトを与えるのか。それをちょうど、もう少ししたら6月の特定健診の時期に入ってきますけど、40歳以上の方は。全体としていいですね、と先生がおっしゃっても、やはりCTスキャンを断面図を撮って、やはりきちんと調べていく、というのが私の経済産連関分析でのやり方です。

 必要なところ、あるいは病状があらわれそうなところをぜんぶスキャンして、大丈夫ですというふうに、あるいは大丈夫じゃないですというふうに判断をするのが、私の社会の医学というふうに、私の高校の先生がおっしゃっていました。

 経済学は社会の医学と。私は本当は医学部に進みたくて、医者になりたかったんですけど、残念ながらなれませんでしたけれども、私の高校の先生が、それだったら経済学を勉強しなさいと。

 世の中には、人間、放射線は一人の病気を診断しますけれども、世の中にはいろいろ貧困だとか、女性が男性と同じように活躍できない社会だとか、環境問題とかいろいろ大変な問題を抱えていると。

 そういうふうな社会の病気、人間の社会が作り出している社会の病気を発見し、そして診断して、病理をちゃんと分析して、そして処方箋を書く。それが、社会の医学、社会科学から大きな経済学の役目なんだということで、ずっと私はそのつもりで勉強してまいりましたが、そういう意味で、産業連関分析で、CTスキャンを撮って見たいというのが今日のテーマです。

 前提としまして、関税を撤廃しますと。あれは政府試算のうえですね。二重丸だけ3.2兆円。下が内訳です。ぜんぶプラマイすると3.2兆円。TPPでいうと0.66%。1%にも満たないですけれども、この前提は関税撤廃。そして農林水産業の生産減少。こういったスタートラインに立っております。

 この表に出ない水面下の動きを試算しております。生産額、雇用者、GDP。それぞれどれぐらい減るだろうか。そこから導き出せるGDPのベースでの話に置き換えて、チェックをするというのが私の仕事です。

 TPPは、普通は非関税障壁だとか、農林業への多面的な影響というのも絶対に見逃すことはできません。つい最近の週刊新潮、先週号を買いまして読みましたら、外国産の農産物や食品がいかに危険なものかというのを特集しておりましたけれども、それを見てぞっとするようなことがいっぱい書いてありました。

 それは、ちょっと今日は外します。主に経済的なことから言えば、3つ。プラス2つとマイナスが1つ。マイナスがひとつは、農林水産業を始めとする安い外国産の商品が日本になだれ込んできて、日本の農林水産業が立ち行かなくなっていくという問題がマイナスです。

プラスは、その同じ事の裏返しでもあるんですが、安いものがドンと入ってきますと、スーパーなんかにいろんな外国産の安いものがいっぱいたくさん並んでいきます。そうすると、家計が助かって、消費が一息ついて、もっと買おうかと。同じ所得でも、スーパーで値段が下がればもっと買おうかということで、消費が増える。そして生産が増えていくというふうに波及していきます。そういうプラスの効果もあります。

 それから、小麦粉なんかが安く入ると、ケーキ屋さんとかスウィーツのお店というものが安くなる可能性があります。それが2つ。

 最後に輸出ですね。この輸出がプラス。しかし輸出と言っても、アメリカとの事前交渉で今の安倍内閣のあれは、ご承知の通り自動車の場合は2.5%、いま関税がかかってますけども、できるだけ後まで引き伸ばすと。

 ですから、10年先からだんだん緩和していくということが、もうすでに交渉に入る事前調整の段階で約束されてますので、プラスが出てくるのは10年先。おそらくマイナスのほうがずっと前に、先に出てくると思います。

そういうことも含めて、トータルのプラスマイナスをきちんと計算しようという、この図であります。私の計算は、政府が3月15日の政府統一試算(※14)で出されました数字の、この前提になる農林水産業の生産減少3兆円というのが、いったいどのインパクトを日本の経済、あるいは地域経済に与えるのか、ということをまず取り上げました。

(※14)関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算 (内閣官房HP 経済連携・TPPに関係情報○TPPの試算について 平成25年3月15日公開資料 ※リンク切れ)

 次をお願いします。私の資料から言いますと、6の2ページ目ということになります。全産業の生産は、農林水産業が3兆円減りますと、農林水産省だけではないですね。あるいは、小麦は小麦粉のかたちで輸入されてきます。小麦粉の形で。

 従って、日本で消滅するのは小麦。99%消滅すると言ってますが、小麦と、小麦を小麦粉にする製粉工場ですね。それは、消滅します。ですから日清製粉を始め、大手の製粉会社というのは戦々恐々として、次の新しいビジネスモデルを作りつつあります。

 すでに、どことは言いませんけども、ある大手の製粉メーカーは、競って、中国に製粉工場を動かし始めている。移動し始めております。つまり、国内での製粉工場働いている人は5千ほどいますけども、解雇になる。

 海外にそういう工場を出せれば、日本の製粉工場、従業員というのは職を失うわけです。ですから、農業だけにとどまらず、やはりそういう川下の産業にも影響を及ぼすということでございます。

 それだけでなくて、さまざま、そういうふうに小麦の集積地、あるいは生産地のところで経営を営んでいらっしゃる方にも、たくさん住んでいらっしゃる街の商店街も崩壊します。

 つまり、その小麦の産地が全滅しますと、そこの街はまるで夕張のような状態になって、そこから落ちる消費、生産、そういうふうに波及していきますので、これだけの大きな3兆円ほどになる。

 農業は3兆円にプラス5兆円。これはそういうことに跳ね返っていきます部分が、4500億円、約5兆円ありますけども、農業は3兆円だけ補償したらいいという問題ではないんです。3兆5千億を補償してもらわないと元が取れない。

 補償額ということがよく言われておりますけれども、それは跳ね返り効果をちゃんと考慮した上でいかないと、いけないということでもあります。その3兆5千億よりも、除けば、10兆5千億は、7兆円も第二次産業、第三次産業に影響が出ます。

 見てますと、商業、サービス業、そういうところが多いです。これはどういうことなのかというと、そういうふうな農業よりも、いろんな今回、ダメージを受けそうなところの産地の地域社会、街の、下がりました仕事依頼だとか、街だとかいうのが夕張状態になって、周りの商店街が、それこそ共倒れになっていくという状況を、この数字は意味していると、私は解釈しております。

 7兆円です。農業は、3.5兆円ですけども、その他の産業が7兆円。これは、だから農業関係者だけの問題じゃないんです。地域の商店街を上げて、これは議論し、よく認識していかなければいけないということを示す数字だと思っております。

 そして二番目。就業者数が全国で190万人消滅する。仕事を失う。そのうち、この表では、農林水産業では146万人が減りますが、更に、他にさきほど言いました関連商店街等の場合で言いますと50万人失業。第二次、第三次産業失業。これも、政府の統一試算のあれだけの数字だけでは絶対にわからない数字でした。

 この200万人に、190万人、約200万人の失業ということは大変なレベルで、現在の完全失業者が300万人で、ちょっと上がったとか下がったとか大騒ぎしてますけれども、それにどんと加えられると、500万人という数になりますし。

 実はこの190万人には、農業共働きということもあるかもしれませんが、おじいさん・おばあさん、息子・娘、いろいろ家族が全部これにぶら下がっていますので、4人これにぶら下がっているとすれば、約200万掛ける4で、約800万だと。実はこれにぶら下がって、これで生活を立て、学校に行き、生活をしているという毎日の暮らしがここに関わっているわけです。

 いろんな意味で1000万人近い仕事に打撃が出るということになりますと、大変な問題であるし、こういうことは断層撮影をしてはじめて分かることがあります。

 政府では全く、雇用のことは経済全体で見ると、失業は出るかもしれないけど、伸びる産業もあるから、ちゃんとバランスが取れて、失業者は出ないんだという前提に立っていますが、北海道で酪農をやっていた人が、いきなり愛知県のトヨタの工場で働けるかと。そうではありませんので、ふるさとを捨てろと言われても納得がいきません。そういった問題。

 これが190万人というのは数え方には慎重なところを要する必要があります。兼業農家もあるし、それから自家生産自家消費ということで、自分の畑で食べる分だけおコメや野菜を作るというのも入ってますので、人数のカウントの仕方というのは難しいし、ちょっとこれは慎重にとる必要があります。

 国勢調査では、この表を計算した平成17年では250万人というのが国勢調査の結果ですが、22年では、もう少し減って150万人ぐらいになってますけど。ですから、そういう国勢調査と突き合わせるということも必要だと思います。

 次にGDP。さきほどのGDPですが、農業3兆円で、全体で波及して4兆8千億の、GDP1%の減少。いま、489億から490億近くになってますけど。合わせて消費が、生産が潰れるわけですから、家庭所得も失われ、消費が落ち込んで、マイナスになるということも見えてくるわけです。

 そんなことがその断層撮影の結果、分かってまいりました。

 それで、皆さんここのところをよくご理解いただきたい点なんですが、輸出と輸入はプラスマイナスで0.3兆円で、とんとんですよというふうに普通、見るんですけども、実はこの輸出というのは、この自動車の例を書きましたように、それを作る人が農業に比べてうんと少ないんです。

 逆に言えば、資本集約型。どちらかと言えば、機械に設備に大工場。そこで非常に生産性の高い産業ですので、雇用者は少ないし、同じ就業スキルでも雇用者は少ないし、製造業の付加価値によって3割。少ないです。

 仮に2.6兆円に、これは今計算中なんですが、デメリットばっかり計算してても説得力がありませんので、メリットもちゃんと計算しなければと思ってやってますが、なかなか輸出の場合、11カ国相手国のなかでもFTA、自由貿易協定を結んでるところ、あるいは発効しているところ、そして全く結んでいないようなところについて、そんなことを考えますと、なかなか輸出って計算が難しくて。

 仮にいま自動車を2.6兆円輸出が増えたよ、となったら、50万人雇用が増えます。しかし、農業の場合は、生産性が低い、生産性が低いとよく言われるんですけど、しかし農業は、牛の絵を書いて、酪農になってしまいましたけど、農業は労働集約型産業で、雇用がたくさんある。

 それを作るのにたくさんの人が働いてますし、また原材料に比べて、付加価値の割合というのが高いですので、同じ2兆円といっても、自動車とは全く影響度の大きさというのは違ってまいります。農林水産業などはこういうふうに百数十万人減少。

 それから、50万人プラスになって、190万人減少。つまり、就業、労働、雇用という面でみると、あるいは暮らしという面で見ると、GDPはほとんど同じなんですが、その中の実態は全然、一皮むいてみれば、全然違うということが、今回、新しい知見として示すことができました。

 最後ですけど。あともう一つのデメリットというのは、輸入では農業とかダメージを受けるわけですが、安い外国産商品で家計、企業が助かるという側面もあります。それもよく言われます。そして、消費、生産、雇用が増えるという面もあります。

 これの計算もやろうとしております。しかし、さきほどの輸出の50万人と、輸入のマイナス190万人を相殺できるかどうかという点では、計算するまでもなく、相殺できません。おそらく雇用ベースで考えると、あるいは働く人の人数、就業機会というベースで考えますと、圧倒的にTPPは就業機会については、多くのマイナスになります。

 そういうことの数字を、今日、本当はお示しできれば良かったですけども、そういうふうなGDPの、0.3兆円、0.6%というふうな数字が、プラマイでプラスになってるよ、というのがもっともっと私たちの仕事、暮らし、あるいは地域社会に根ざして見ると、だいぶ大きな問題を抱えているということです。

 最後の説明します。メリット、デメリット両方ともきちんと計算。2つのメリットと1つのデメリットというのをきちんと計算しようということです。それが、国民のみなさんが判断していくために、どうしても必要な、こういう豊富な情報で、メリット、デメリットをきちっと判断していくことが必要。

 もう一つ必要なことは、できたら都道府県別にこれをきちんとやって計算するということをいま着手しております。さきほど、関さん三好さんのほうから、非常に丹念でニュートラルの農業統計を使い、たいへんな積み上げ作業をやっていただいておりますし、その中間発表さきほど聞きましたけれども、私のほうも、合わせて、こういう産業連関分析で、全都道府県について。発表している都道府県がいま22ぐらいありますけれども。発表してないところもあるんですね。

 いま……発表してないですけど、きちんと全部出して、そうしないと、知事も含めて自分の地域内の、いったい何が起きるのかというのはピンときてないので、こんなに就業というのはなりますよと。こういうふうになりますよということですね。全国のどこの都道府県でも、いつも不具合の例を出して非常に恐縮なんですが、おそらく基幹産業が失われると、ああいう状態がおそらく東京にいては分からないかもしれませんけど、地方では本当に大変困った嘆きと言いますか、おそらく嘆きと嘆きが……。

 では、みなさん、ご清聴ありがとうございました」

篠原「どうもありがとうございました。醍醐先生も、じゃあお願いします。失礼いたしました」

醍醐聰氏「それじゃあ、私のほうは後ろのほうの試算結果のポイントと、試算値に表れない実態(※15)というところですが、この1ページに付けましたところの数値。ボトムアップ型影響試算のポイントというところで、数値の訂正が必要なところがございますので。駆け足で、まずマル1の全国ベース、3,512億円としておりますのは、3,483億円に改めていただく。

(※15)当日配布資料 試算結果のポイントと試算値に表れない実態(リンク切れ)

 カッコ書きの、マイナス12.0%となっておりますのは、それは正確には11.9%。それから地域別偏在性のところの北海道は、マイナス527億円となっているのが、559億円。パーセンテージは、15.6%と直していただきたい。

 それからおコメの石川県ですけれども、パーセンテージがこれは26.3%としておりますが、19.8%の間違いです。

 私は2つのことをお話したいと思います。一つは、影響試算の作業を通じて得た知見なんですが、ここに書きました、この13日から15日まで北海道への、同庁とそれからJA北海道中央会に会いました。

 それから十勝に行きまして、十勝市役所と士幌、それから芽室。その間、トラック協会等々も、あるいは製糖工場とも話させていただきましたが、そこで感じたことを2点お話したいと思います。

 国会議員のみなさんですから、国民の生活になるべく近いところの話ということで、やらせていただきますと、一つは輪作を加味した影響試算ということです。

実はTPPというのは農業だけじゃない。非関税分野の問題があるということを、私たち東京にいるような者は、そういう話をよくしますですよね。確かにそのとおりなんですが、逆に農業問題について、もう少しきちんとした説明が国民に対してできているのかと、私は不十分さを今回現地に行きまして、改めて感じました。

 その一つは、輪作を加味して影響試算をしなければならない。さきほど、関さんがトップにおっしゃったことですね。十勝というのに行きまして、皆さんがおっしゃるのは、小麦、てんさい、澱粉原料作物の馬鈴薯、それと豆類。この4年輪作をやっているというのは向こうでは常識ですね。

 ただ、十勝の方に聞くと、すべてがこの4品種かというと、そうじゃなくて、オホーツク、網走地方は、豆類は冷温のために無理だということで、てんさい、馬鈴薯、麦の3年輪作だというお話でした。

 そういった違いはあるわけですけれども、さきほど関さんが言われたように、この十勝を例にとりますと、この4つのうち、小麦、てんさい、馬鈴薯はほぼ100%輸入に置き換わるという想定をしておりまして、これは生産額がゼロに。

 他方、豆類につきましては、インゲンとか小豆はこのようにそこそこ、これは残ると。国産。そういう想定をしております。ただ、このように単品ごとに、この影響の度合いを測るということが実態にかなっているのかということを非常に疑問に感じたわけです。

 帯広市役所に行きまして、農政課の担当者が、プロ野球のピッチャーのローテーションを考えていただきたいと。4人でローテーションを組んでいる時に2人が肩を壊してダメになって2人でローテーションを組むとしたら、中一日ですと。連作に近くなると。となると、地力が落ち、病気にかかりやすくなって、収穫がガクッと落ちてしまうと。それと同じだという話をされたんですね。非常に分かりやすいです。

 つまり、究極的には、この4つのうちの何処かが関税撤廃の影響でダメージを受ければ、豆類もこれもダメになってしまうというふうに考えるべきじゃないかと。この問題を実は影響試算に織り込んだらどうなのかということで、私が作ったのが表ですね。

 まず、北海道で言いますと、これ一形態あたりですが、下に出典を示しました北海道農政事務所の統計資料(※)がございます。この農業粗収益、売上に当たるものがAですが、その大部分が麦類、豆類、馬鈴薯、てんさいです。

(※)試算結果のポイントと試算値に表れない実態(輪作を加味した影響試算)※リンク切れ

 この4品目の収入合計がBですが、このBがAに占める割合を見ると、2010年は46.4%。11年は84、4%と、48.4%。ほぼ半分近いシェアを占めている。従って、この4年輪作が壊滅すると、この北海道のあくまでも畑作ですね。畑作農家は、収入の半分を失うということになるわけです。

 それをさらに絞って、帯広市の場合はどうかということを2009年ですが、見ますと、この4つが駄目になると畑作農家は収入の57%程を失ってしまうということになります。このような具体的な影響で考えてみる必要があるんじゃないかと思うわけです。

 次に、大きな二番目は、農業の分野にも非関税障壁があるということです。士幌と芽室に行きまして多くの方から聞いたのは、生産履歴、GAP(※16)というものに取り組んでおられるという姿ですね。これは生産段階からどのような肥料を何回散布したかということからすべての履歴を記録し、それをバーコードに埋めており、農協がそれをコンピュータで保存しているということでした。

(※16)GAP(Good Agricultural Practice):農業生産活動を行う上で、必要な関係法令等の内容に則して定められる点検項目に沿って、 農業生産活動の各工程の正確な実施、記録、点検及び評価を行うことによる持続的な改善活動のことです(農林水産省定義)。(茨城県HPより)

 詳細はここでも説明省きますが、そのような生産の段階からトレーサビリティに取り組んでいる中で、輸入物が増えてきたときに同じようなトレーサビリティが確保できるかということです。

 農水省に聞きますと、日本に入って来て以降の移動履歴しかない。だから、輸入物のどのような肥料で生育された牛であるか。途中でどのような農薬をどの程度撒いたかということは全くのブラックボックスだということでした。

 じゃあ、TPPで輸入が増えてきたときにどうなるか。それを考えるときに、農水省が紹介してくれたのが、国際連合の食料農業機関FAOというところと、国際保健機構WHOが発効しましたガイドラインを紹介してくれましたが、食品検査、認証制度における道具としてのトレーサビリティに関する原則(※17)。2006年ですね。これが、農水省に聞くと、今現在、日本に入ってくる食料品の履歴について考える際の国際的な標準だと言うんですね。

(※17)食品検査・認証制度における道具の一つとしてのトレーサビリティ/プロダクトトレーシングに関する原則農林水産省HP日本語版コーディックス規格より

 そうすると、TPPで輸入が増えてきたときには、履歴はこれに基づいて行われているというわけですが、では、その中身とはいったいどんなものなのかということで、私は読んでみたときに、驚いたんですけれども、その第6項に、こう書かれています。

 『輸入国がトレーサビリティ/プロダクトトレーシング(生産歴)を用いる場合に、輸出国がそれと同じことをすることを義務づけするべきではない』(※18)と書いてあります。だから、日本がアメリカとか欧州とかに、日本が生産履歴、こういうのをやっている。牛については10桁の個体番号をつけていると。それと同じことを要求することはよろしくないと書いてあるんです。

(※18)第三章原則 6 輸入国がトレーサビリティ/プロダクトトレーシングを用いている場合に、輸出国がそれと同じことをする(すなわち、全く同じ制度を設ける)ことを義務とすべきでない。〈pdfファイル〉
(食品検査・認証制度における道具の一つとしてのトレーサビリティ/プロダクトトレーシングに関する原則より)

 そのあと16項ですね。どう書いてあるかといいますと『トレーサビリティを含む食品検査、認証制度は必要以上に貿易制限的であるべきではない』(※19)と書かれている。明らかに、これはそういう厳密なことをやることは、非関税障壁になると言ってるんですね。

(※19)第三章原則 適用 16 トレーサビリティ/プロダクトトレーシングを含む食品検査・認証制度は、必要以上に貿易制限的であるべきではない。〈pdfファイル〉(食品検査・認証制度における道具の一つとしてのトレーサビリティ/プロダクトトレーシングに関する原則より)

 士幌と芽室の方々が、おっしゃっているのは、自分たちが自主的に取り組んできた安全に関するそういう取り組みが、安い輸入品が入ってきて、それが凌駕することで、自分たちがせっかく築き上げてきたトレーサビリティが壊されるんじゃないか。駆逐されるんじゃないか。私の言葉でいえば、悪貨が良貨を駆逐してしまうということを非常に危惧されておりました。

 こういう点も、農業問題を考えるときに考慮しなくてはいけないんじゃないかということを痛感いたしましたので、ご報告させていただきます。どうもありがとうございました」

篠原「はい。どうもありがとうございました。それでは、すいません。さきほど失礼を致しました。ご質問を。首藤さん」

首藤信彦氏「前衆議院議員の首藤ですけれども、この大変な、貴重な計算結果、ありがとうございました。ちょっと、質問なんですが、国民経済的な視点でお聞きしたいんですが、産業だけではなくて、国民経済的な視点を入れますと、例えば、関税を撤廃するということは、関税収入が消えるわけですね。それがだいたい我々が計算したときには5千億とか6千億円だったと思いますが、そういうのはどのように評価されているのか。

 同じように、関税だけではなくて、例えば、このように産業が消えていくとなりますと、産業の所得税が消えていくということですよね。ですから、それはまた膨大な波及効果があると思うんですが、その計算はどのようにここに反映されることになるんでしょうか?

それから同じように、自治体にもこれはほんとうに夕張の話がございましたけれども、個別具体的に、いくつかの自治体が崩壊していくということですけれども、それに対して、膨大な国家予算がつぎ込まれていくだろうと思いますが、そうしたマイナスの影響はどのようにこの計算に織り込んでいくべきなのかということです。

 それから、さきほど200万人前後の失業が新たに生まれると。それは完全失業。他にどこかに就職するわけではないわけですね。かつてのように、炭鉱労働者が無理やり何処かへ押し付けられて、転職先に流れていった時代と違って、今のこの農業関係者の雇用というのは、止めようがないという状況。それは地域的にも業種的にも産業的にも。

 そうすると、それに対して、当然、生活保護、それが当然、補完するものとして出てくるわけですが、そうした社会保障費の、地域自治体の崩壊も含めて、社会保障費の急増というものはどのように計算されて、トータルな、経済的なインパクトに計算されるのか、そのへんをお聞かせ願いたいと思います」

醍醐「それでは私のほうからですが。元々、私たちのこのプロジェクトは生産額ベースの議論では、これは終点や終着点ではないということで、究極的には、国も地方も税財収の収入にどのような波及が出るかということをやりたいわけですね。ここが、今日は午前中は中間発表とさせていただいて、所得段階なわけですね。

 これを続けて、税収、財政収入のほうまで進みたいと。かつ、それを都道府県ベースまでやりたいということですので、今、ご指摘のことは全くそのとおりなんですが、ちょっとこれはこれからの課題ということにさせていただいて、問題意識は先生とまったく同じと考えております。

 それから関税収入はおっしゃるとおりでして、私ども調べていたら、こんなにあるのかということで、砂糖500、小麦のプレミアムが700、もう何百億というのがぼんぼん出てくる。不思議なことに農水省に一覧したものはないんですか?と聞いたら、農産物だけでもいいですからと言ったら、自分も分からないと言うんですよ。大臣官房のWTOをやっている担当の方が。

 そんな状態なのかなというふうに、私は不思議に思ったんですが、いまご指摘の、これがどのように織り込まれているのかというのは、多分わたしは織り込まれていないんだろうと思います。

 問題は、単に収入を失うだけじゃなくて、それを原資にして、価格調整制度として、国内価格を下げる原資にしてきたわけです。それが失われてしまうというと、ダブルパンチのような格好になると。こういうことが本当に考えられているのかということが非常に大事な点だということを、私達も今回もやっていまして、非常に痛感したところです。私のほうからはちょっと。あとは他の3人の方から、もっとこの点を」

土居「財政問題につきましては、今先生がおっしゃった問題、産業連関分析でも、おそらく国税のほとんどの税も、地方税も、都道府県税、市民税ありますが、ほとんどの税目で計算できますし、すでに計算に着手しております。方法論は確立しておりますので。

 それともうひとつは、それとプラスのほうはマクロですけども、さっき関さん三好さんが所得ベースでやるということの最終的な目標は、やはり農家の実態に即した税負担とか、税収とか、そういう地方財政の問題まで射程に入れておられますので、そこも期待できると思います。

 それと税で言いますと、これはちょっとこれは今日のみなさんと違うんですが、議員の先生方がいらっしゃると思いますので。私、1カ月ほど前に、アベノミクスで非常に円が安くなりまして、どんどんガソリン入れても、どんどん値上がりしていきますし、いろんな物が値上がりし始めましたので、この産業連関の均衡価格モデルというモデルで、消費者物価をどれだけ上げるか、掛けるどれだけ負担が増えるかという計算をしまして、静岡で発表しました。

 ただ、静岡で発表したんですが、静岡止まりで、東京へ記事が発信できなかったもんですから、すいませんが、もしご希望の方がありましたら。円安で100円台で、9万5千円平均。消費税8%で15万6千円。消費税10%で24万9千円ということですね。

 だから消費税の計算を全部しております。財政家計負担計算。2.9%の消費税、2.6%の消費者物価上昇率というのは、黒田さんがディマンドプル型、いわゆる供給量が需要を押し上げていく。そして価格を上昇させようということなんですけれども、おそらく、それ以前に、コストプッシュ型の2%の物価上昇率、日銀が発表された。

 日銀が、2%上がったよという、消費者物価指数の報道が毎月いま言ってますけども、だんだん2%に近づいていくと思いますが、それはみなさん、誤解しないでください。黒田さんがやってるんではなくて、それもあるかもしれませんが、同時に、むしろいま円安で高い輸入品がどんどん入ってきているということも含めて、合わせて下さい。

 先ほど言いました家計のTPPの影響負担、影響のメリットと言ったんですけども、おそらく家計の影響のメリットよりも、この円安で10万円。消費税でプラス15万円で25万円。あと、年金の掛け金がうんと増えて、10万ぐらい増えてきますけども、30万円ぐらい所得が増えないと、消費が低迷して、デフレ脱却の足を引っ張るという気がします。

 そういうデータを持っておりますので、みなさん、もしご必要でしたら、会合のあと、申し出ていただければ、お送りさせていただきます。よろしくお願いします」

篠原「それでは他に?ございませんか」

首藤「じゃあ、すいません。これは北海道のことを特出して書かれているわけですが、同じように極端な影響を受けるのは沖縄があると思うんですが、これがもっと複雑で、これは安全保障も含めて、非常に複雑な問題がございますけども、沖縄における試算というのはどのようにやっておられるのか。あるいは、それをやることに何か問題があるのか。やりにくいのかどうか、そこのところをちょっと教えていただければと思います」

醍醐「今回、九州で言えば、鹿児島、宮崎の畜産というカテゴリーでやりまして、実はサトウキビも入ってないんですね。沖縄となれば、さらにということで、今回、もう少し、全部やりたかったんですが、ちょっと時間的な作業量からきつくて、とりあえず北海道とコメどころ北陸4県。それから畜産ということで宮崎と鹿児島をやったわけですが。

 おっしゃるとおり、これから次の第二次の発表の前の回に、いま私たちチームで考えているのは、鹿児島にフィールドを考えているんですけれども、今日、別の会見でも、沖縄はどうなってるんだと言われまして、鹿児島だと、私どもは思っていたら、やっぱりこれは沖縄にいかないといけないのかなということを、今のご質問と合わせて。

 そういうところは私ども、ぜひ行って、なんら沖縄について、特段やりにくいということは、今の私どもの状況では、なにもございませんし、むしろやりたいなと思っております」

篠原「ほかはございませんでしょうか?じゃあ、私どもから一つ。土居先生、22県ほど。私、長野県なんですけど、長野県も計算しまして、あまりにも大きな数字なので、某当筋から公表しちゃいけないという圧力がかかったんですが、数字が出てしまって、信濃毎日新聞で一面トップ(※20)で配ったんですが。農業600億円の生産減少と。

(※20)県内農業生産500億円減 「TPP関税撤廃」影響、県が試算 (2013/05/20 信濃毎日新聞より ※リンク切れ)

 冒頭、土居先生がおられないところで申し上げたんですが、前提条件、産業連関表でやるか、GTAPモデル(※21)でやるか、いろいろなもので違ってくると思うんですが、いま、先生が把握されているところでは、大きな県というのはどんなところ、大きな県でどんな感じになってるんでしょうか?ちょっとそれ、概略を教えていただきたいと思います」

(※21)GTAPモデルは、ウルグアイラウンド交渉、GATTといった各国間の貿易政策のインパクトを数量的に把握することを目的として、1992年に設立されたGTAP(Global Trade Analysis Project)により構築された応用一般均衡モデルである。(GTAPの計算方法について – 経済産業省HPより ※リンク切れ)

土居「私はいま、全国で都道府県で、実際に県独自の試算をやられているのはたぶん22ぐらいだと思いますが。最近まで調べてませんけど。それで見ますと、さきほどから名前の出ているような県は、大きな影響を受けることになるだろうと。

 私は長野の経済研究所のどこかの市銀の研究所のスタッフ、主要銀行のシンクタンクについては、この産業連関分析の指導を年に一回教えていますので、教えてた方が、長野について計算したいけども計算のやり方を教えて欲しいということがありまして。

 さきほどおっしゃったような効果。蕎麦は、蕎麦粉はどうなんでしょう?とか、いろいろ私も。どこが大きいかというのは、まだ私も丁寧に整理はしておりませんので、これから、統一的な基準でやることと同時に、地方独自の、さきほど醍醐さんが4輪作の例がありますね。

 独自のことがあると思いますので、見逃してないかということ、地域の特性を踏まえながら、きちんと出して行きたいというふうに思っております」

篠原「ほかは、フロアからありますでしょうか?」

醍醐「いまの長野県というご質問ですと、今日、関さんと三好さんがやりましたけれども、だいたい私たちは、試算は積み上げ型の、ボトムアップ型の試算のはほぼできております。いろんな試行錯誤が続いて、データの使い方もほぼ固まってきたなと思っておりますので。

 それで、手直していたようなデータは、たぶんもう出せるというふうに思っておりますので、ぜひ全部を発表してみたいなと。それと、土居さんのそういう動きが……。私たちは相互補完的になればいいなということなんでありまして、両方を見ながら、それを参考にしてもらえればなと。資料を出したいなと思っております」

篠原「ありがとうございました。福田さん」

福田昭夫氏「非常に意欲的に取り組んでいただいて、たいへんありがたく感謝を申し上げたいと思いますが、いまのところ醍醐先生が言われた、すべての試算ができ上がって、いつ頃までに公表できるか、そのスケジュールといいますか、計画があれば、教えていただきたい」

醍醐「はい。土居さんのほうはかなり進んできておりますし、あと、私たちは、若い二人にやってもらってますのも、フォームはできました。あとはデータをインプットしていく作業ですので、いま、今日の午前の休憩の間に話していたんですけども、まあ6月の中旬ぐらいにはなんとか第二次の発表をしたいなというふうには考えているんですけども」

福田「期待をしたいと」

醍醐「はい」

篠原「はい、ありがとうございました。よろしいですか?それでは締めさせていただきます。それでは1つだけ、ご案内情報から。この紙をお配りしたところでございますけれども、来週の水曜日15時から、参議院の議員会館の講堂で、TPP国際シンポジウムを開催いたしますので、ぜひお手すきの方、お出かけいただきたいと思います。以上で終わります。どうもありがとうございました」

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