高市早苗内閣が「インテリジェンス(情報収集・分析)能力を強化する」と主張する、「国家情報会議」および「国家情報局」設置法案が、4月23日、衆議院本会議で可決されました。
採決には、共産党と一部の無所属議員が反対したものの、与党だけでなく、中道改革連合が、国民民主党や参政党、チームみらいなどとともに賛成に回ってしまいました。
- 「情報会議」法案が衆院通過 政府の情報能力強化(時事ドットコム、2026年4月23日)
政府の政策に反対する市民のデモが監視・取り締まりの対象とされるなど、国民の監視やプライバシーの侵害が強く懸念されます。
中国の『新華社』は、4月25日付で、日本政府が「首相への権限集中を強めている」とした上で、「国内では思想や世論への統制を強め、『外部の脅威』をあおることで軍備増強への支持を誘導する狙いがある」「こうした一連の動きは、第2次世界大戦前に日本の軍国主義が情報機関を強化していった過程と重なる」と指摘し、「かつて思想統制を担った特別高等警察(特高)の再来になりかねない」との懸念を示しています。
共産党一党独裁の国家に言われても何も響かない、という向きもあるでしょうが、中国共産党に、中国の内戦を勝ち抜かせてしまったのは、毛沢東が認めているように、他ならぬ軍国主義の大日本帝国の対中侵略でした。
また、改革開放後の中国に台湾を通じて資本と技術を提供し、米国と派遣争いが可能なほどの「モンスター」経済大国にしてしまったのは、米国と日本です。ここにはアイロニカルなパラドックスが存在しています。
- 日本で「新たな戦前」の情報体制進展 特高復活への懸念広がる(新華網日本語、2026年4月25日)
前述のように、共産党以外の野党が賛成に回ったことから、参議院に送られた法案は、参院では与党が少数であるにも関わらず、今国会で可決する見通しです。
高市政権が成立を目論む「国家情報会議」「国家情報局」の設置は、憲法の枠外にある安全保障国家、即ち、「セキュリティ・ステート」を創り出すことにつながりかねません。「安全保障の名のもとに、恒常的に憲法に底支えされる法の支配からの「例外状態」を正当化して行動してしまう国家です。
京都大学法学部准教授パスカル・ロッタ氏によるアーロン・グッド博士へのインタビュー「エプスタイン階級の戦争」が、3月28日に公開されました。
ロッタ氏のYouTubeチャンネルには、以下の解説がついています。
「米国における犯罪は欠陥ではなく、むしろその本質的な特徴である。これは、米国の違法な対外政策についても多くのことを説明している。
政治的実体としての米国は、犯罪組織や、国際法および国内法の下で明らかに違法な行為と深く結びついている。エプスタインは決して例外ではなかった。こうした怪しげなディーラー達は、米国政治の仕組みに不可欠な一部である。
幸いなことに、隠された権力構造を研究する優れた学者達がいる。その一人を今日お招きしている。『アメリカの例外主義──帝国とディープステート』の著者、アーロン・グッド博士である」。
アーロン・グッド博士による、『アメリカの例外主義──帝国とディープステート』の邦訳版が、近日中に、日本で発刊される予定です。
パスカル・ロッタ氏によるインタビューで、グッド博士は、米国の「例外主義」を支えてきたシステムを、公式の米国政府、CIAをはじめとする国内外の治安維持や秘密工作を行う「セキュリティ・ステート」、そして犯罪組織や富裕層ともつながりをもつ寡頭制支配の「ディープ・ステート」の三層構造(あるいは三分構造)として説明しています。
- エプスタイン階級の戦争|アーロン・グッド博士(Neutrality Studies Japanese、2026年3月28日)
ロッタ氏によるグッド博士へのインタビューは、8つのチャプターに分かれています。
・三分構造国家とディープ・ステート
・麻薬犯罪と国家権力
・資本主義、帝国、その初期的起源
・イスラエルのネットワークとアメリカ権力
・インドネシアのクーデターと資源奪取
・エリート支配と犯罪化された帝国
・恐喝ロビーと秘密支配
・締めくくりとアーロンの活動情報
(その1)では、「三分構造国家とディープ・ステート」に、注釈をつけてお送りします。
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エプスタイン階級の戦争 アーロン・グッド博士
2026年3月28日
(冒頭部省略)
パスカル・ロッタ氏(以下、ロッタ氏と略す)「この本(『アメリカの例外主義──帝国とディープステート』)の中で、あなたは非常に根本的な主張、あるいは観察をされています。
あなたは、アメリカのシステムは、基本的に3者による分業、あるいはシステム内部における権力の3分配によって機能していると述べています。その枠組みについて、説明してください」
アーロン・グッド博士(以下、グッド博士と略す)「もちろんです。
アメリカで公民の授業を受ける人々や、アメリカ合衆国で育った人々には、私達は自由で公正な選挙で投票する際に指導者を選ぶことができ、国民が主権を持つリベラル・デモクラシーの中に生きているのだ、と理解されています。
また、様々なグループが権力をもつような、ある種の多元主義が存在し、自治などを可能にする民主的・自由主義的な制度があるため、誰か1人だけが完全に支配することは実際にはできない、と考えられています。
しかし、こうした見方は、アメリカが歴史を通じて、実際にどのように機能してきたかについて、多くの点を見落としています。
アメリカは、ジェノサイドや奴隷制、メキシコに対する西部開拓戦争など、いわば帝国主義的かつギャングのような事業をやってきました。
本当にアメリカの体制の性格が真に変化したのは、第2次世界大戦後です。アメリカは、資本主義システムの世界的支配を目的とした、世界的な覇権にもとづく帝国へと変貌を遂げました。
そして、この帝国を維持するために、 アメリカの制度や統治に大きな変革が加えられ、『セキュリティー・ステート』が創設されました。それは議論や透明性、合法性を基盤として機能しているのではなく、違法行為の長い歴史を持っています。
CIAは本来、国内での活動を禁じられているにもかかわらず、人々の郵便物を盗むような作戦を実行し、あらゆる種類の作戦を展開してきました。
おそらく、私達は、『MKウルトラ計画(※)』の半分くらいしか知らないのです。薬物実験やマインドコントロールの実験、それを意識していないアメリカ人を対象として行われていました。あらゆる種類の恐ろしい実験が」
(※)MKウルトラ計画とは、冷戦期に中央情報局(CIA)が秘密裏に行っていた人間の精神を操作・コントロールする研究計画の総称。幻覚剤(特にLSD)などを使った薬物実験、眠らせない、感覚遮断、強いストレスや恐怖を与えるといった心理操作などの実験を行っていたとされる。
1974年12月22日、『ニューヨーク・タイムズ』で、シーモア・ハーシュがCIAの違法活動を暴露したことを受けて、議会調査が行われ、「MKウルトラ計画」の存在が明らかになった。米議会「チャーチ委員会」による調査が行われたが、CIAが多くの文書を破棄したため、全容は解明されていない。
・MK Ultra(FOIA、2026年4月2日検索)
・MK-ULTRA CIA mind-control program(Britannica)
・Huge C.I.A. Operation Reported in U.S. Against Antiwar Forces(The New York Times, 1974年12月22日)
・Senate Select Committee to Study Governmental Operations with Respect to Intelligence Activities(United States Sanate)
グッド博士「さらに、海外での暗殺計画、麻薬密売人との結託、アメリカ国内の組織犯罪の庇護なども含まれていました。こうした活動は、表向きは『もっともらしい否定』が可能でもある、国家的戦略の一つの側面です。
しかし、その相当部分が明るみに出てきており、私達は、膨大な歴史的記録を検証することができます。カール・シュミット(※)が示唆したように、アメリカが実際に『例外国家』として、どのように機能しているかを理解することができます」
(※)カール・シュミット(1888-1985)は、ドイツの法学者。
第1次世界大戦後の混乱期において、憲法と国家の関係を「主権者は例外状態において決断する者である」(『政治神学』)と定義した。
国家存立の危機に際して、基本的人権や権力の分立、立憲主義的な法の支配の停止が必要だとする国家緊急権の考えを体系化した人物である。
シュミットは、ワイマール憲法48条にあった大統領の緊急命令権を法的に正当化し、その結果、ナチスはこの条文を悪用した上で、独裁政権を築いた。
・カール・シュミット(wikipedia)
・例外状態(wikipedia)
グッド博士「第2次世界大戦終結以来、アメリカの体制は実のところ、隠蔽された『例外主義』的なものです。それは、基本的に終わりのない、様々な緊急事態を提示し続けるものです。
例えば、『世界的な共産主義の陰謀』、あるいは『9.11』以降の世界的な『対テロ戦争』──私達が対抗するための対象として組織化された、『テロリスト的なイスラム主義による陰謀』など。
そうやって、多くの『法違反』が制度化されており、それが国家の二重性のようなものを形作っています。それは、ナチス政権を研究した人々が論じた『二重国家』という概念に似ています」。
グッド博士「すなわち、規範的な国家──ワイマール共和国下で、物事が平常通りに機能している状態──が存在する一方で、同時にナチス政権は『緊急事態』を理由に、国家を守るためにはいかなる法律も破ることができる、としました。そのような論理がアメリカの体制、すなわち『セキュリティー・ステート』にも持ち込まれ、そこに『二重性』を与えているのです。
政治家達が表向きの発言をする一方で、国家安全保障の関係者や諜報機関などは、自分達が適切と判断すれば、いつでも法を破り、それについて嘘をつく。これは、一般的によく見られる現象なのです」
ロッタ氏「あなたが言っているのは、国際法だけについてではなく、アメリカの国内法や、さらには憲法上の要件までもが、常習的に破られているということですよね。
そして、それを行っているのは、単なる犯罪組織ではなく、議会によって資金提供されている国家の不可欠な一部である存在だ、ということですよね。つまり、私達が話しているのは、そういうことです」
グッド博士「そうです。『国家の犯罪化』。
アメリカこそが、国連と国連憲章の創設、その起草と批准における主要な原動力でした。実際に、それは議会で批准され、条約となりました。これは国際条約であり、憲法によれば『国の最高法規』となります(※)。
そして国連憲章は、アメリカが侵略的に行動すること、他国に対して攻撃的に振る舞ったり、侵略を行ったり、あるいは侵略を仄めかして威嚇することさえできないと定めています。
にもかかわらず、米国は常にこれらを行っており、これは明白に、アメリカ合衆国憲法への違反だというべきです」
(※)1945年、国際連合の創設時にサンフランシスコ会議で国連憲章が採択され、その後、米国では上院が同年7月に圧倒的多数で批准した。
グッド博士がここで述べているのは、国連憲章に反する行為を米国政府が行った場合に、それは、国連憲章を議会で批准した米国内の憲法違反になる可能性がある、という指摘である。
グッド博士「しかし、国家自体が『例外主義』的なやり方で運営されているため、アメリカの犯罪性に異議を唱えるための制度や法的メカニズムは存在しません。
権力内部にいる人々の中で、異議を唱えようと考える人々が一定数現れない限り、それは不可能です。
これは、法の支配などを信じる者にとっては問題です。
しかし、現地の人々を犠牲にしてでも、世界中に投下された資本を守るというアメリカ式の帝国運営は、合法的に行うことは到底不可能です。
私達は、これを管理するためのシステムを持っていますが、しかし、それ以上に、私が『ディープ・ステート』と呼んでいるものが存在します。
これは、他の人々から借用した概念です──元々は、トルコの体制やトルコを観察してきた人々に由来するものです(※)」
(※)トルコ語で「デリン・デヴレット(Derin Devlet)」=「深層国家、国家内国家」と呼ばれる、軍、情報機関、警察、司法、組織犯罪の非公式な結びつきによって、民主的に選ばれた政府の背後で影響力を行使する構造を指す言葉に由来する。
・Derin Devlet(wikipedia)
グッド博士「それ以前に、この概念の本当の先行例は、ピーター・デイル・スコット(※)の『ディープ・ポリティカル・システム(深層政治システム)』にあると、私は考えています。
彼はこれについて、1990年代初頭に初めて書きました。
これは、憲法や法律の用語では説明できない、一種の統治システムです。それは、公式のルートの内外で執行される、いわば、無法のシステムなのです。私は、これが『ディープ・ステート』という概念へと発展していくのだと考えています。
また、スウェーデンの学者で、平和学者のオラ・トゥナンダー(※)が、2000年代初頭に、このテーマについて、非常に優れた論文を書いています」。
(※)ピーター・デイル・スコット(1929生)は、カナダ出身の政治学者・詩人・外交官。カリフォルニア大学バークレー校の元英文学教授。「ディープ・ポリティクス」とは、国家の政治的意思決定に関わる、非公式・非公開の要素を体系的に示す概念である。代表的著作として、『Deep Politics and the Death of JFK(ディープ・ポリティクスとケネディ大統領の死)』(1993年)、『The Road to9/11(9.11への道)』(2007年)、『American War Machine(戦争機械アメリカ)』(2010年)など。
・Peter Dale Scott(自身のウェブサイト)
(※)ヨーラン・オラ・トゥナンダー(1944生)は、オスロ平和研究所の名誉研究教授。『Government of the Shadows(影の政府)』(2009年)で、米国の覇権的権力が単一の西側国家を「二重国家」、すなわち通常の民主主義的階層と米国と結びついた安全保障的階層に分割したと主張した。
法の支配に従って行動する通常の民主主義国家または「公共国家」と、前者の決定に拒否権を行使し、特定の活動を国家存亡に関わる問題にすることで、通常の政治を安全保障問題化できる、秘密の「ディープ・ステート」または「セキュリティー・ステート」によって構成される二重国家の概念を発展させた。
・Ola Tunander(wikipedia)
ロッタ氏「ええ、彼は本当に素晴らしい学者ですね」



































