2025年11月6日午後1時30分より、東京都・司法記者クラブにて、東電株主代表訴訟弁護団による「上告受理申立理由書提出」記者レクが行われ、弁護団長の河合弘之弁護士、弁護団の海渡雄一弁護士、甫守一樹(ほもり かずき)弁護士、大河陽子弁護士、そして原告らが登壇した。
「東電株主代表訴訟」とは、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う大津波により、東京電力福島第一原発が起こした重大な原子力事故により、東電が被った莫大な損害について、株主の視点から、会社価値の毀損として問題をとらえた民事訴訟である。具体的には、「会社(東電)に対して、役員が適切な『注意義務』を果たさず損害を発生させた」という観点から、提訴した。
原告は東電の株主らで、被告は、事故当時の東電旧経営陣であった、勝俣恒久元会長、清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長、小森明生元常務の5名である。
株主(原告)側は、被告らに対し、約23兆円超を東電に賠償するよう求めた。
一審において、東京地裁は2022年7月13日に判決を言い渡し、旧経営陣5人のうち、小森氏を除く4人に対し、会社(東電)に対して、13兆3210億円を賠償するよう命じた。
しかし控訴審では、2025年6月6日、東京高裁は一審判決を取り消し、株主(原告)側の請求を棄却し、被告旧経営陣の賠償責任を認めず、旧経営陣に対して賠償を命じないという、180度反対の判断を示した。株主側としては、主要な訴訟目的であった旧経営陣への巨額賠償という点で、逆転敗訴となった。
この判決を受け、6月20日、株主(原告)側から、上告の提起と上告受理申立てが行われた。
東電株主代表訴訟のこれまでの経緯などについては、以下のIWJ記事を御覧いただきたい。
会見では、弁護団の海渡雄一弁護士から、原告側が2025年10月10日に提出した「上告受理申立理由書」(同日、10月10日、上告については取り下げ)についての概要説明が行われた。
※上告受理申立理由書(以下、理由書)とは、民事裁判において、最高裁判所に上告を受理してもらうために、その理由を具体的に記載して提出する書面のことだ。
海渡弁護士は、理由書の内容について、「結論的なこと」として、次のように述べた。
海渡弁護士「上告受理申立理由書の中で一番重要と思う点は、理由要旨の1番、『過酷事故が生じた場合の、被害の甚大性と、電力供給義務の重要性とを、当時の知見及び社会通念に照らして比較、検討した原判決(高裁判決)は、安全の確保を旨とした原子力基本法第2条に反する誤りがあり、また社会通念の評価にも誤りがある』というものです。
この判決に従うと、『停止を基礎づけるような知見(株主が取締役の行為の差止め=停止を求める際の根拠・知見)がなければ、無視していい』ということになってしまう。
そこが非常に恐ろしいところで、こういう判断を最高裁が是認してしまうと、次の原発事故を必然的なものにしてしまうというふうに考えています」
弁護団が提出した、3分冊と2つの添付資料で構成された上告受理申立理由書や、これまでの訴訟の経緯などについては、東電株主代表訴訟のホームページで公開されている。
会見の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。
































