7月13日、東京・霞が関の司法記者クラブで、東電株主代表訴訟の原告である株主とその弁護団(弁護団長・河合弘之弁護士)が、裁判の今後の見通しをメディア向けに報告した。
東電株主代表訴訟は、2011年3月11に福島第一原発事故を起こした東京電力の当時の取締役たちに対して、株主が会社の損害の責任を追及する訴訟である。2012年3月5日に東京地方裁判所に提訴され、これまで60回におよぶ口頭弁論が行われた。
この日の報告は、朝行われた裁判所、原告側代理人、被告側代理人の3者による、今後の予定を決める「進行協議」を終えてすぐに行われた。
「今日の『進行協議』は結構重要で、結審までに何があるか、ほぼ全部決まった」
弁護団の海渡雄一弁護士が、開口一番そう述べた。海渡弁護士によると、予定とは具体的には次のようなことである。
・7月20日に次の口頭弁論が予定されていて、被告・武黒(一郎元副社長)氏、勝俣(恒久元会長)氏、清水(正孝元社長)氏の3人に対する原告側の反対尋問と、裁判所による尋問が行われる。
・もう1人の被告である小森(明生元常務)氏は健康上の理由で、回復具合次第で尋問をやるかやらないかを決めることになるが、やるとしたら10月5日の1時から。
・「現地進行協議」は10月29日にやることになった。日帰りで行う。
・最終準備書面は11月1日に提出(ただし、小森氏の尋問が遅れているので、その分は11月11日まで認める)。
・11月5日までに現地進行協議の写真が提供され、それを受けて11月15日までに現地進行協議がどう行われたかの書面を提出する。
・最終準備書面に対する反論がもしあれば11月15日までに書いて提出せよと言われた。
・11月30日が最終弁論。1時10分に指定された。原告側が90分、被告側代理人が90分話をする。
「現地進行協議」は、原発事故が起きた現場で行う「進行協議」のことである。裁判官、原告側および被告側代理人の3者で、実物(福島第一原発)を見ながら事件の状況の理解を深める。この現地進行協議について、海渡弁護士は次のように述べた。
「福島第一原発の1号機から4号機だけじゃなくて、5号機、6号機も見る。事故を起こした原子炉だけじゃなくて、事故を起こさなくてそのまま残っている原子炉もぐるっと回って両方見る。
その前後のバスの中でどういう状況になっているか、プレゼンの機会を与えて欲しいと伝えました。(裁判所も)いいです、と言ってくださっていると思います」
また海渡弁護士はこうも述べた。
「どこをどう見て、といったことはこれから詰めていって、7月26日までにどういうコースか(を決める)。僕らもいろいろ希望を出しているんですけど、どういう現地調査が可能かということの案を東電側が示してくることになっています」
「現地進行協議では裁判官に現地のどういう点を見てもらいたいですか?」というIWJ記者の質問に、海渡弁護士は次のように答えた。
「基本、現地がどういう場所なのか。僕らが強調しているのは(海抜)30mの高台を掘り込んだところに(福島第一原発が)あるんだということですね。その敷地の10メートル盤と4メートル盤、それを全部見る、ということ。
それと開口部~津波で水が入ってくる場所がどこなのか。そういう箇所がどういう位置関係であるのか。
1号機から4号機までは現状が破壊されているので、5号機,6号機も見ることで現状が把握できるのではないか、と。
我々が見て欲しい、と言っているのはそういう箇所ですね。おそらく現地に行けば、それらの部分は次に津波が来た時に水が入らないように工事がちゃんとされているんで、なぜ工事が事故の前にちゃんとできなかったのか、そういうことを示したい」
福島第一原発は海抜30メートルあった高台を掘って建設された。冷却に必要な海水ポンプは海面からの高さが4メートルの地点に、原子炉建屋などは高さ10メートルのところにある。東電は10メートルを超える津波が押し寄せ、水の高さが15メートルを超える可能性があることを2008年に社内で認識していた。しかし、必要な対策を講じなかったことが2011年3月の原発事故の原因となった。そして、このことが今回の裁判でも元経営陣の責任を問う根拠となっている。
メディアへの説明を終えて、海渡弁護士は終わりが見えて来たこの裁判について「必ず勝訴判決をとるようにいたします」と述べた。