2025年6月16日、「岩上安身によるインタビュー第1196回ゲスト 一級建築士・建築エコノミスト森山高至氏 第2回 前編」を初配信した。
大阪・関西万博を主催する日本国際博覧会協会(万博協会)は6月5日、会場内の人工池から、指針値の約20倍のレジオネラ属菌が検出されていたことを発表した。
大阪市保健所は、5月28日の時点で、すでに、指針値の約20倍のレジオネラ菌を検出したとして、万博協会に人工池への立ち入り禁止を助言していたが、万博協会が人工池への立ち入り禁止を実施したのは、6月30日になってからだった。この間も、子供など来場者が、人工池に立ち入っていた。
しかも、万博協会がレジオネラ菌の指針値以上の検出を公表したのは、前述の通り、6月5日になってからだった。対応が遅すぎである。
- 万博協会、菌検出後も人工池の立ち入り禁止せず 子ども入れる状態(朝日新聞デジタル、2025年6月5日)
指針値以上のレジオネラ菌は、海水による噴水を使った水上ショーが行われていた「ウォータープラザ」でも検出され、万博協会は6月4日、水上ショーの中止を発表した。
- 【お詫びとお知らせ】ウォータープラザにおけるレジオネラ属菌の検出について(EXPO 2025、2025年6月4日)
レジオネラ菌は、重症の肺炎を引き起こす細菌で、「24時間風呂」や、循環式の温浴施設などで、問題になることがある。
免疫力が下がった高齢者などが感染すると、全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛、咳や38℃以上の高熱など、風邪によく似た症状から、呼吸困難、心筋炎、意識レベルの低下など、重症化すると命に関わることもある。
「レジオネラ菌というのは、どこにでもある菌なんです」という森山氏は、「水が温かくなって、ずっと同じ場所に溜まっているような所」、つまり、まさに万博会場の人工池や「ウォータープラザ」のような場所で、有機物を餌として増殖するのだと説明した。
その上で森山氏は、「ただ(レジオネラ菌が)水の中にいてくれれば、接する機会はそうそうないけど、これが(噴水によって)まき散らかしちゃうと、空気中にミストとなって吸い込む。それで、抵抗力が弱いとか、ちょっと体の調子が悪いな、という時に、肺に入って、肺で増殖しちゃうと、非常に危険」なのだと解説した。
「噴水は、水道水を使うと、法律で決まっているのではないか」という岩上安身の質問に対し、森山氏は「そもそも、本当にちゃんと、調べてやっているのか?」と、疑問を呈し、次のように述べた。
「水を溜めると格好いいよねって、そこまでは、みんなわかる。写真も撮れて。だから、始まってすぐは、みんな喜んで、写真を撮っていたじゃないですか。
でも、水を溜めると、こんなことが起きるということを知って、初めて『えー!』って驚いたでしょう。それが問題なんです。
だって、ユニバーサル(スタジオ)とかディズニー(ランド、シー)だって、水のエリアがあるじゃないですか。でも、こんな話は、聞いたこともないですよね。だから、そういう人達にヒアリングをしていないから、こんなことになってるんじゃないですか」。
森山氏は、「医療関係者の中には、『なんで、見つかってすぐに発表しなかったんだ』と、すごく怒っている人もいる」と、明らかにした。
万博協会のホームページには、今も「ウォータープラザ」のイメージ写真が掲載されている。この鈍感さには、ほとほと呆れる。
これについて、森山氏は、以下のように苦言を呈した。
「これ、たぶん協会内部に、『ウォータープラザで噴水をやろう』と提案した誰かがいてね、『今、(HPから)消されたら、俺のせいにされる』みたいな。で、『俺が辞めるまでは、問題なしにしてほしい』みたいな、そんなのじゃないですか。
そういうレベルですよ、今、いろんなところを見ていると。
俺のせいにされたくないから、という、それが動機で、すぐに言わないとか、そんなのばっかりですよ。だから、『新たな担当者に変えてからだ』みたいな。
日本は、本当に、そんなになっていますから」。
森山氏は、今は対策として、「水しぶきに近づかない」ことしかないと指摘し、「溜まり水に消毒薬を入れても、薬品入りのミストになる」「メダカやフナを入れても、富栄養化と夏の高温でアオコが発生し、酸素不足で死んでしまい、どんどん臭くなって、ハエが発生する」との見通しを語った。
「だから、本当にこれは、浄水を入れるとか、何か考える必要があるんじゃないですか?」と述べた森山氏は、「学校のプールだって、(水を)入れ替えないで置いておいたらどうなるかって、想像したらわかりますよね」と、場当たり的な万博協会や維新の対応を批判した。
また、6月9日には、万博会場で「ガソリンのような臭いがする」と、消防に通報があった。
この異臭の原因について、森山氏は、「埋立地の中に埋まっている有機物の嫌気発酵(酸素のない状態での発酵)」ではないか、との見方を示し、次のように述べた。
「その(嫌気発酵の)細菌達は、硫黄系の気体を発生しちゃうんです。硫化水素とか。
微生物が、あの中(ゴミ処分場だった夢洲)に埋めてある、いろいろな昔のゴミとか、いろいろなものを、ある種食べてくれているわけですよね。それをまた、次の段階に、どんどん分解していって、最後は安全なものというか、二酸化炭素とか窒素まで変わればいいんだけど、途中の段階で、アンモニアっぽいやつだとか、硫化水素とかメタンとか(が発生する)」。
メタンガスは、地中から適切に放出さえされれば、上昇するが、硫化水素は比重が重く、地上近くに滞留し、非常に危険である。
森山氏は、「硫化水素は猛毒で、生物を殺してしまうから、他の微生物も殺してしまう」と述べ、夏の日本橋川などで、ドブ臭いのはすべて硫化水素」だと指摘した。
このあと、インタビューでは、都市の水辺の開発や管理問題から、自然の循環や再生の実例、日本の治水と水田の関係、劣化したインフラの維持管理予算と人口減少、長期不況の関係などについて、議論が広がった。
































