2024年7月26日午前11時25分頃より、東京都千代田区の厚生労働省にて、武見敬三厚生労働大臣の定例会見が行われた。
冒頭、武見大臣より、2024年7月30日(火)、首相官邸にて、「創薬エコシステム・サミット」を開催する旨の報告があった。
サミットでは、日本の新薬開発力の向上のため、産・官・学が連携して、製薬業界にヒト・モノ・カネを集約する基盤づくり、「オープン・イノベーションによる創薬エコシステム」を強化することを目的として、複数の関係閣僚などのほかに、国内外の関係者が一同に会し、「官民協議会」のあり方などについての意見交換が行われる。
武見大臣からの報告に続いて、大臣と各社記者との質疑応答が行われた。
この日は、記者クラブの幹事社からの質問を除くと、IWJ記者を含め、記者クラブに属さない4人の記者からの、新型コロナウィルス関連の質問のみで終るという、珍しい展開となった。
IWJ記者は、今秋から国民への接種が開始される予定のレプリコンワクチン、特に、それが発生させるといわれる「シェディング(伝播・排出・曝露)」という現象について、以下のように質問した。
IWJ記者「7月5日の会見にて、この秋から接種可能となるレプリコンワクチンのシェディングの問題を指摘し、この現象に関して、臨床試験、あるいは何らかの調査は行われているのか、行われているのであれば、その結果を、明確かつ科学的なデータとして国民に示すべきではないかと質問をし、武見大臣からは『シェディングという現象が、科学的知見として、現在、存在するのだということについては、まったく承知をしていないので答えようがない』とのご答弁をいただきました。
武見大臣は『まったく承知をしていない』と仰いましたが、平成29年度厚生労働行政推進調査事業の総合報告書から抜粋された『感染症の予防を目的とした組換えウイルスワクチンの開発に関する考え方』という文書の中に『臨床評価に関して留意すべき点』として、『増殖型組換えウイルスワクチン(※注)の場合には新生児、妊婦及び免疫抑制状態の患者等への伝播リスクが高いことが想定されるため、ウイルス排出については、慎重に評価すべきである』との記述が見受けられます。
この場合、『増殖型組換えウイルスワクチン』というのは、このたびのレプリコンワクチンに相当するものであると考えますが、『慎重に評価すべき』とされている『シェディング(伝播)』について、大臣がまったく承知していないというのは問題であると考えます。
レプリコンワクチンのシェディングについて、現状、臨床試験、もしくは、何らかの調査が行われているのか、行われていないのか、端的にご教示いただけますでしょうか。
よろしくお願いします」。
(※注)増殖型組み換えウイルスワクチン(replicating viral vector vaccine)は、遺伝子工学を用いて作成されたワクチンの一種である。
このワクチンは、病原体の一部、例えば、抗原(免疫系によって認識される異物や分子の総称で、免疫応答を誘発する能力を持つ)となるタンパク質を生成する遺伝子を運ぶために、増殖能力を持つウイルスベクターを利用する。
増殖型組み換えウイルスワクチンの代表的なものに、エボラワクチンがある。
増殖型組み換えウイルスワクチンは、遺伝子を運ぶためにウイルスベクター(例えばアデノウイルスや麻疹ウイルス)を使用する。
これに対して、mRNAワクチンは、ウイルスベクターを使用せず、病原体(例えばSARS-CoV-2)の特定のタンパク質(スパイクタンパク質など)をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を使用する。
mRNAが細胞に取り込まれると、細胞のリボソームがこのmRNAを読み取って、タンパク質を生成する。この生成されたタンパク質は免疫系に認識され、免疫応答が誘導される。
武見大臣「レプリコンワクチンは、RNAワクチンでありまして、ご指摘の報告書に記載のある『増殖型組み換えウイルスワクチン』には当たらないものと承知をしています。
その上で、レプリコンワクチンに関する国内臨床試験において、お尋ねのシェディングと呼ばれる事象が生じるとの知見は現時点ではない、というふうに承知をしております。
そのため、シェディングに関する追加的な調査などを実施する必要性は、現時点では認められておりません。
引き続き、最新の科学的知見を踏まえて、レプリコンワクチンの有効性・安全性の確保というものに、しっかりと努めていきたいと思います」。
IWJ記者「すみません。聞き逃したかもしれないので。臨床試験自体は行われていない? 行われているということでしょうか?」
武見大臣「レプリコンワクチンに関する国内臨床試験において、お尋ねのシェディングと呼ばれる事象が生じているとの知見は現時点ではないんですね。そのことを申し上げました」。
IWJ記者「はい、わかりました」。
武見大臣は、「国内臨床試験において、シェディングと呼ばれる事象が生じているとの知見は、現時点ではない」と言うが、ウィスコンシン医科大学名誉教授である高橋徳(たかはしとく)氏の著書『コロナワクチン接種者から未接種者へのシェディング(伝播)–その現状と対策』(※注)や、論文など、臨床試験から得られる知見の他にも、シェディングのリスク分析において、参照可能な科学的知見は多々存在している。
(※注)髙橋徳氏は現ウィスコンシン医科大学名誉教授、統合医療クリニック徳院長。
主な研究分野は「統合医療」、「オキシトシンの生理作用」。
著書である「コロナワクチン接種者から未接種者へのシェディング(伝播)–その現状と対策」(ヒカルランド、2022年4月19日)では、「ワクチン接種者の体から排出(shed)される何かが未接種者の身体に様々な悪影響・症状を及ぼす」として、その発生機序や対応策などが示されている。
シェディングについては、フランスの生物学者で薬剤師のエレーヌ・バヌーンの早い段階での論文(2022年12月8日)が、米国などで引用されている。
バヌーンは、論文の中で、以下のように述べている。
「COVID-19ワクチン接種キャンペーンは、mRNAワクチンが世界規模で初めて使用された事例です。
mRNAワクチンは、米国および欧州の規制当局による遺伝子治療の定義に正確に該当します。規制により、これらの薬剤およびその生成物(翻訳されたタンパク質)の排泄研究が要求されていますが、mRNAワクチン(およびアデノウイルスワクチン)については、この研究が行われていません。
ワクチン接種者と接触した非接種者において、mRNAワクチンの副作用と同一の症状および病態が報告されています。
したがって、ワクチンナノ粒子や、mRNA、その生成物であるスパイクタンパク質の排泄の可能性についての知識の現状を見直すことが重要です」。
また、高知大学医学部皮膚科学講座の佐野栄紀特任教授らの研究チームの論文「新型コロナワクチン接種後より汗疹様水疱を繰り返す症例で、表皮内汗管とエクリン汗腺に mRNA ワクチン由来のスパイクタンパクが見いだされた」(※)が、ワイリー社の英文国際雑誌「The Journal of Dermatology」(日本皮膚科学会発行)に掲載された。
分子生物学者・免疫学者の荒川央氏は、自身のnote(※)でこの論文を紹介し、「この研究はスパイクタンパクと皮膚疾患への関わりのみならず、いわゆるコロナワクチンにおける『シェディング』現象の機序についての示唆を含む重要なものと考えます」と述べている。
ワクチンなどの、激甚な副反応を起こす可能性のある薬剤を扱う厚生労働行政は、国民の健康と命に直結するものであり、それぞれの施策にかかる意思決定において、厚労省は、可能な限り広範な領域から「ベネフィット」と「リスク」に関する知見・情報を収集し、それを比較衡量し、分析することが求められる。
武見厚生労働大臣は、レプリコンワクチンについて想定される「リスク」の存在をすべて無視すること、それについて単に言及しないことによって、レプリコンワクチンの安全性に「問題はない」と主張している。
しかし、それは国民の健康・命に対する誠実さを欠いた、非常に非科学的な行政アプローチではないだろうか?
会見の詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。