6月10日午前11時より、東京都千代田区のアムネスティ日本東京事務所にて、公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本の主催により、記者会見「脱北者が語る『闇に包まれた北朝鮮の人権危機』」が開催された。
アムネスティ韓国で北朝鮮問題を担当する崔在勳(チェ・ジェフン)氏と、北朝鮮の政治囚収容所の生存者とその家族によって設立された人権NGO「North Korea Watch」事務総長であり、自身も脱北者である安明哲(アン・ミョンチョル)氏の二人が登壇し、「危機に瀕している北朝鮮の人権状況」について、報告を行った。
会見冒頭、アムネスティ日本のキャンペーン・マネージャーである武田伸也氏は、今年1月15日に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、韓国を「第1の敵国」とみなすよう、憲法改正を指示したことを指摘し、「今、さらに北朝鮮が見えなくなっていくんじゃないか」との懸念を示した。
崔氏は、過去10年にわたり、500人を超える脱北者へのインタビューを重ね、北朝鮮の新しい人権状況について、把握している。特に、北朝鮮の「拘禁施設」における状況と、その変化について、集中して研究している。
アムネスティ・インターナショナルは、過去50年に渡って北朝鮮の人権状況を調べてきており、その調査内容を土台に、北朝鮮に対して、人権状況についての憂慮を伝え、その改善をうながしてきた。
また、国際社会に対しても、その研究成果を共有し、その改善に向けて国際社会が力を発揮し、圧力を加えるようにうながしてきた。
2023年10月には、アムネスティ韓国支部が3年6ヶ月をかけて、脱北者約60人からの聞き取りをまとめた証言集『60+Voices』が、韓国語と英語で報告書として出された。
- 『60+Voices(英語版)』(アムネスティ韓国HP)
アムネスティ・インターナショナルは、この報告書にもとづき、北朝鮮のベールに包まれた人権状況を明らかにするために、昨年11月にはスペインを、今年の5月にはドイツを訪問するなど、国際的な活動を展開してきた。今回の日本訪問も、その一環である。
北朝鮮の人権や、安氏の北朝鮮での勤務地であった政治囚収容所の現状について、詳しく解説する講演会は、この記者会見の前日の6月10日には鎌倉で、会見翌日の6月11日には、東京の参議院議員会館で、6月12日には、名古屋で、開催された。6月13日には、大阪でも開催される予定である。
また、今年の11月7日、国連人権理事会で北朝鮮に対する4回目のUPR(普遍的・定期的レビュー)が行われる予定である。
このレビューは、人権理事会の加盟国のそれぞれが、およそ4年6ヶ月の周期で、その国の人権状況に関して、他の国々からつぶさに点検されるというものだ。
今年の北朝鮮のUPRは、おそらく、2020年以降さらに悪化したと見込まれる人権状況について、各国が憂慮を示し、是正をうながすための大変貴重な機会となりそうだ。
崔氏は、次のように訴えた。
「私どもアムネスティ韓国は、このUPRの機会をとらえて、日本政府が、北朝鮮に対して、人権面でのしかるべき憂慮を伝え、是正をうながす圧力を加えられる機会となるよう、働き掛けてほしいと、それを伝えるために、今回、日本に参りました。
今週、私達は、日本外務省の当局者とも、直接お会いする予定です。(中略)
そこで、この憂慮を、日本の外務省の当局者の方々と共有します。
アムネスティが現在、北朝鮮の人権状況について憂慮している4つの項目(『表現の自由』、『移動の自由』、『強制労働』、『公開処刑』)があります。
私達の活動は、皆さま方の多くの関心に支えられています。記者の皆さま方の問題喚起・問題提起によって、日本政府が積極的に動けるように後押ししていただきたいと願っています」。
この報告の後、安氏より、「国連COI(北朝鮮における人権に関する国連調査委員会)報告発表後の北朝鮮政治犯収容所の変化」と題された報告があり、それに続いて、二人と各社記者との質疑応答が行われた。
記者会見の詳細については、全編動画で御覧いただきたい。