「北朝鮮の政治犯に対する扱いは動物以下だった」
北朝鮮の政治犯強制収容所で生まれ、2005年に収容所を脱走した経験を持つシン・ドンヒョク氏による記者会見が、1月27日、日本外国特派員協会で行われた。
ドンヒョク氏は、1982年11月19日生まれ。「第14号管理所」という強制収容所の収容者であった両親の下、収容所の中で生まれ育った。2005年1月に収容所を脱出し、強制収容所からの脱出に成功した唯一の脱北者として知られる。現在は、韓国に在住。
今年3月に、日本で公開予定のドキュメンタリー映画、「北朝鮮強制収容所に生まれて(原題 Camp 14: Total Control Zone)」の中で、脱走に失敗した母と兄の公開処刑を目撃するなどの壮絶な体験を語っている。
ドイツ人映画監督のマルク・ヴィーゼ氏によって撮影された本映画は、2012年の封切り後、「ジュネーブ人権映画祭最優秀映画賞」、「オスロ・ヨーロッパドキュメンタリー最優秀映画賞」など、世界各地で数々の賞を受賞している。日本では3月1日、東京の渋谷ユーロスペースでの公開を皮切りに、愛知や大阪などでも公開される。
ドンヒョク氏の会見は韓国語で行われ、北朝鮮による拉致被害者である横田めぐみさんの父・滋さん、母・早紀江さんも同席した。
北朝鮮の人権問題に関しては、「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会」が、現在8ヶ月間にわたって、北朝鮮の拉致問題や強制収容所に関する世界的な調査を行っている。2014年3月17日にジュネーブで開催される委員会で、調査報告書が発表される予定だ。
「外に出て初めて、収容所の生活がいかにショッキングかを知った」
ドンヒョク氏は会見で、自らについて書かれた本やビデオについて、「私が体験した苦境を描いたものだが、今なお北朝鮮で苦しんでいる人たちに比べれば、私の苦しみはたいしたものではない」と述べ、現在も収容されている父親や親戚、友人らの消息を憂慮した。
収容所での生活について、「収容所では当たり前だと思っていたが、脱北して初めて、それがいかにショッキングなことだったかを理解した」と、現在の心境を語った。
「60年前のナチスドイツや、40年前のカンボジアはもちろん、スーダンでの虐殺など、現在でも信じ難い出来事が起こっている。北朝鮮の強制収容所もその一つ」と語り、こうした問題に無関心であってはならないと訴えた。
ドンヒョク氏は、「人は見ていないものを信じることは難しい」と語り、北朝鮮について、もっと取材して報道してもらいたいと、会場に集まった記者たちに訴えかけた。
受けた教育は「逃走するな」「衛兵に従え」だけ
収容所内での教育の実態について、ドンヒョク氏は、受けた教育は「逃走するな」と「衛兵に従え」だけだった、と述べた。
通常の刑務所にはリーダーの写真や国家のスローガンが飾られているが、強制収容所にはそれすらない。