在日米軍横田基地周辺の井戸から、高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が検出され、多摩地域全体の地下水汚染が明らかになった問題で、2024年6月7日(金)、市民団体が立川市で「PFAS汚染と都政を考えるつどい」を開催した。
主催の「多摩地域の有機フッ素化合物汚染を明らかにする会」は、2022年以降、多摩地域の住民の血液検査や地下水調査を行ってきた。
集会は、この2週間後の6月20日に告示される、東京都知事選を見据えての開催となった。
集会では、PFAS問題に取り組む、立憲民主党、共産党、生活者ネットワーク、グリーンな東京など、野党の国会議員や都議会議員をはじめ、社民党、新社会党、れいわ新選組の代表者や、市民団体などが登壇した。会場には、60名以上が集まった。
主催団体の共同代表・根木山幸夫氏は、「都政が今後実行すべきPFAS対策~都民がつくるPFAS政策の提言」を作成し、小池百合子都知事あてに要望書を提出したことを報告した。
しかし、それに対して、都からは実質のゼロ回答であったことや、小池都知事が都議会での質問に対し、自ら答弁をすることはなく、部課長まかせで、実際に行っているのは地下水調査のみであることなどを指摘した。
根木山氏は、都が、住民が要望している血液検査や、浄水所における地下水の除染、汚染源の究明や、除染のための土壌調査、横田基地への立ち入り調査を、一切行っていないことなど、PFAS対策への後ろ向きな姿勢についても語った。
今回の都知事選(6月20日告示、7月7日投開票、前回投票率55%)で、小池都知事は、12日午後の都議会本会議で、都知事選への3選出馬を表明している。小池氏が出馬した場合、自民党は支持する方針を10日に確認している。
5月27日には、市民と野党の共同候補として、立憲民主党の蓮舫参議院議員が出馬表明した。即ち、今回の都知事選は、事実上、与野党対決となることが明らかとなった。
この集会では、蓮舫議員より「PFAS対策を重視して取り組む構えだ」とのメッセージが寄せられた。
都知事選・三多摩ネットワークの菅谷正見氏からは、6つの野党と市民団体が協働しての候補者選定委員会で、蓮舫氏を擁立するまでの話が語られ、「美濃部都政は『東京に青い空を!』と言った。今度は『東京にきれいな水を!』で行きましょう」と締めくくった。
都は、2021年度~2023年度で、PFAS対策として都内260ヶ所の地下水調査を行い、その結果、新たに23区と多摩地域で、暫定目標値を超える複数の汚染源が明らかになった。
現職の都議らは、高濃度の汚染が認められた地域の追加調査に対し、市区町村の同意が得られないとして、いまだに調査が0件であることを明らかにした。
さらに、東京都環境科学研究所では、2010年以降、PFASの知見と科学技術があるにもかかわらず、その力が発揮されておらず、研究結果を政治に生かさないなど、都の不作為があると批判した。
また、都には8兆円の一般会計があり、そのうちPFAS対策には3000万円を取っているが、この予算を拡大し、検査項目を増やしたり、血液検査を行うことも可能だ、と指摘した。
都議らの発言からは、PFASに関する一般質問などで、小池都知事が一度も答弁に立ったことがない、とPFAS対策に後ろ向きな小池都政が浮き彫りとなった。
第2部の各地の市民の会からの報告で、国分寺市民の会の共同代表、杉井吉彦氏(医師)は、「このPFAS問題は、日本の歴史上、足尾鉱山事件を上回る公害事件になるだろう。発がん性など、毒性については、医学的にはすでに決着がついている」と述べた。
さらに杉井氏は、このまま都や国が不作為を続けていると「見落とした責任を問われる」とし、「多摩格差の問題だ」と批判した。
会場からの発言では、国立市の小さな子供を持つ母親から、以下のように発言があった。
「私の子供が遊んでいる(井戸)水を調査してもらったら、すごい高い(数値の)結果が出て、これを国立市長にお知らせしたのですけれども、『防災用で飲み水じゃないから』と言われました。
(行政は)私たちが諦めるのを待っている。私たちの子供が安心して子供を産める世の中にすることが、大人の私たちの義務だと思っている」。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。
IWJの全国に渡るPFASについての取材記事は、以下を御覧いただきたい。