岸田政権は、2024年1月26日開会の通常国会で、経済安保版の秘密保護法案を提出するとしている。この法制定に反対するシンポジウムが、同じ26日、衆議院第二議員会館で開催された。秘密保護法対策弁護団、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)、「秘密保護法」廃止へ! 実行委員会、許すな! 憲法改悪・市民連絡会、憲法会議の共催。
主催者は、この法案が成立すれば、防衛・外交など4情報を「特定秘密」として、漏洩・取得した者を10年以下の厳罰にするとした秘密保護法に続いて、「経済情報」も秘密とされ、「市民もメディアも知ることができなくなる」と指摘。特に、「秘密」ごとに接触可能な者を区分するため、家族も含めて、秘密保護法同様に、信条、信用情報、病歴などの、適正評価(セキュリティ・クリアランス)が行われ、「恐るべきプライバシー侵害」が発生すると警鐘を鳴らし、参加を呼び掛けた。
シンポ後の1月30日には、岸田文雄総理が、この法案の、特定秘密保護法との一体的な運用を指示したことが報じられた。「セキュリティークリアランス導入と経済安保の情報保全」に対応するよう、「特定秘密保護法の運用基準の見直し」を指示したといい、法制化への動きは確実に進んでいる。
- 経済安保の身辺調査は「秘密保護法とシームレスに運用」 首相表明(朝日新聞、2024年1月30日)
シンポジウムは、社民党党首の福島瑞穂参議院議員の挨拶に続いて、海渡雄一弁護士のコーディネートで進められた。
海渡弁護士は冒頭で、「今回の法案は、政府の戦争準備の一連の法律の総仕上げ」「戦前で言えば国家総動員法だ」と、法案の本質を指摘した。
また、海渡弁護士らが原案作成した「経済安全保障分野にセキュリティ・クリアランス制度を導入し、厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することに反対する意見書」が、日本弁護士連合会名義で、1月19日に内閣総理大臣、衆参両院内閣委員会委員、衆参両院情報監視審査会委員及び内閣府独立公文書管理監宛てに提出されたという。
最初に登壇した立正大学法学部名誉教授の金子勝氏は、「経済安全保障に関する情報を、『機密情報』にする狙い」という観点から、「重要経済安全保障情報とは何か」など、詳細に解説。今回の法案の「セキュリティ・クリアランス」適用の目的として、「日米核同盟強化」や「日本の先端技術の中国等への流出防止」などをあげた。
次に登壇した日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)事務局次長の岩崎貞明氏は、「秘密保護法制とメディア・表現の自由」と題して、放送メディアが政府の体制に組み込まれている現状などを指摘。また、軍事転用可能な精密機器を不正に輸出したとして、横浜市の中小企業の社長ら3人が逮捕された「大河原化工機事件」を取り上げたNHKの番組「冤罪の深層~警視庁公安部で何が~」を紹介。経済安保の枠組みに日本企業が取り込まれている実態を指摘した。
最後に登壇した、秘密保護法対策弁護団事務局長の海渡双葉弁護士は、特定秘密保護法が持つ問題「秘密指定の範囲を政府が恣意的に拡大可能」などの様々な観点を踏まえながら、「セキュリティ・クリアランス法制化は秘密保護法の拡大」だとして、今回の法案の問題点を細かく指摘した。
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