2022年2月28日、東京都千代田区のスペースたんぽぽで、東京大学の外村大・教授による「日本の植民地主義は何をもたらしたのか?『反日種族主義』を読む」と題した講演が行われた。
『反日種族主義』は2019年7月に韓国で出版され、ベストセラーになった本で、著者は韓国の経済学者である李栄薫氏他6名。日本語翻訳版は『反日種族主義 日韓危機の根源』の題名で、2019年11月に文藝春秋から出版されている。
外村教授は講演で「一番おさえておかなければいけない点は、これは日本人に向けて書かれた本ではない、韓国社会の政治的な問題の中で、保守派が進歩派に対抗するために書かれた本だという事だ」と指摘し、「よく読むと、日本帝国主義が素晴らしいことをしたとか、日本帝国万歳とかを言っているわけではない」と、注意をうながした。
また、外村氏は、出版の背景として、「民主化を受けた1990年代以降の、韓国社会における歴史認識などをめぐる議論があり、大韓民国の成立をどう見るか、その正当性をめぐる議論がある」と述べ、その上で「植民地期の日本の施策をどう評価するか」などの議論があることを指摘し、「反日種族主義」とは、「保守陣営の経済史研究者らによる危機感を持った批判」だと解説した。
外村氏は、同書が「日本国家の責任を免罪するもの、植民地統治賛美論であるかのように受けとめるのは誤りだが、そのようなものであるとして(日本で)宣伝されているのは問題だ」と批判した。