2021年12月21日午後5時半より、東京・千代田区の外務省庁舎にて、林芳正 外務大臣の定例会見が開催された。
会見冒頭、林大臣より、「在日米軍の駐留経費に係る負担についての実質合意(※)」についての報告があった。
- 在日米軍の駐留経費に係る負担についての実質合意(報道発表)
日米両政府は、12月21日、2022~26年度(5年間)の在日米軍駐留経費の日本側負担、いわゆる「思いやり予算」を、米側の増額要求を受け入れ、1兆551億円とすることで合意した。
2016〜20年度(5年間)は総額9800億円。米国の政権交代に伴い、交渉が1年先送りされたことで、2021年度は暫定的に単年度で2017億円を負担していた。
2016〜20年度と比べると、5年で750億円、単年度あたりでは150億円の増額となる。
また、これまで使われてきた負担の名称「思いやり予算」を、俗称であり、合意の内容を適切に反映していないとして、今後、「同盟強靭化予算」に変更することになる。
林大臣によると、主なポイントは以下のとおりだ。
・日米同盟の抑止力・対処力強化への貢献が直接的に見えにくい「光熱水料等」が大幅に削減され、日本側の負担割合を約61%から35%まで、段階的に削減することで、5年間で約285億円を削減する。
・在日米軍の訓練のみならず、自衛隊と米軍との相互運用性を高める共同訓練にも資するような資機材を調達するための経費の項目を新たに設け、5年間で最大200億円とする。
・今後は、在日米軍の即応性向上、および、施設区域の抗堪性(基地や施設が敵の攻撃を受けた場合に,被害を局限して生残り、その機能を維持する性能)強化に資する施設整備を重点的に推進していく。5年間で、最大1641億円とする。
・このように、これまでの在日米軍の駐留を支援することに重きを置いた経費負担から、このたびの合意により、その経費を用いて、日米同盟を一層強化する基盤を構築することで日米両政府が一致をした。
・今後、この合意について、可能な限り早期の署名を目指し、日米双方の国内手続き等の必要な作業を進め、4月1日までの発効を目指して、国会での審議が行われることになる。
林大臣からの報告の後、大臣と各社記者との質疑応答となった。他社の記者からの質問は冒頭の「在日米軍の駐留経費に係る負担についての実質合意」の内容に集中した。
IWJ記者は、中国との今後の関係について、以下のとおり質問をした。
IWJ記者「来月2022年1月1日、日本と中国を含む9か国の間でRCEP協定が発効します。
日本にとって中国市場は、米国市場を上回る最大の輸出市場です。RCEPは中国との初めての自由貿易協定となり、さらに相互依存的な関係が深まっていくと思われます。
しかし、一方で、自民党の総理経験者からの、中国との戦争危機を煽るかの如き発言があとを断ちません。
自民党最大派閥の長である安倍元首相は『台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある』と述べ、麻生前副総理も7月、『日米で一緒に台湾を防衛しなければいけない』と述べました。台湾を防衛するとは、中国と戦争をするという意味としか受け取れません。
中国と戦争に踏み切れば、日本は最大の市場を失うことになります。日本経済は大打撃を受けます。戦争か、経済か。外交が果たすべき役割は大きいと思いますが、大臣のお考えをお示しください」
これに対し、林大臣は次のように答えた。
林大臣「政府を離れた皆さま方のコメントについて、私の方から一つ一つコメントすることは差し控えたいと思います。
それを申し上げた上で、RCEPということでございましたので、日本は世界でですね、『保護主義』そして『内向き志向』、こういうものが強まる中で、TPP11協定以来、日EU(日EU経済連携協定)EPAや日米貿易協定、日英EPA、そして今お話にあったRCEP協定などですね、自由貿易の旗振り役として、リーダーシップを発揮してきたところであります。
従って、今後も引き続き、TPP11協定やRCEP協定などの着実な実施等を通じて、自由で公正な経済圏の拡大や、ルールにもとづく多角的貿易体制の維持・強化に取り組んでいきたい。そういうふうに考えております」
冒頭の林大臣からの報告、および林大臣と各社記者との質疑応答の詳細については、ぜひ、全編動画にて御覧下さい。