2021年11月8日、政府は岸田文雄総理が提唱する「成長と分配の好循環」を具体化するため、有識者による「新しい資本主義実現会議」の2回目の会合を開催した。
内閣府の発表によると、この日の会合では、緊急提言として、岸田政権が最優先で取り組むべき施策が取りまとめられた。
提言は「成長戦略」と「分配戦略」に分けられている。
「成長戦略」では、「科学技術立国の推進」として、10兆円規模の大学ファンドなど、デジタルやグリーン、人工知能などの先端科学技術への投資強化、デジタル庁による健康・医療・介護、教育等の分野でのデータ活用の推進、再生可能エネルギーの導入拡大や、蓄電池の国内生産と自動車の電動化、原子力新技術の研究開発などがあげられた。
また、「我が国企業のダイナミズムの復活、イノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援」、「『デジタル田園都市国家構想』の起動」といった項目に続き、「経済安全保障」の項目では、戦略技術・物資の確保や技術流出の防止に向けた取組として、「(1)我が国の自律性の確保、優位性ひいては不可欠性の獲得のための経済安全保障を推進するための法案の策定」「(2)戦略技術・物資の特定、技術の育成、技術流出の防止等に向けた取組の推進」「(3)デジタル社会の基盤となる先端半導体に関する国際共同開発支援と半導体工場の我が国への立地支援、国内拠点工場の刷新」「(4)次世代データセンターの地方分散・最適配置の推進」が提言された。
一方、「分配戦略」では、「民間部門における中長期も含めた分配強化に向けた支援」として、男女間賃金格差の解消や、賃上げを行う企業への税制支援、フリーランス保護法の立法や、正規と非正規の同一労働同一賃金などが提言された。
また、「公的部門における分配機能の強化」として、看護、介護、保育などの現場で働いている人の収入を増やしていくための公的価格の見直しの検討、子ども・子育て支援として、保育の環境整備や大学奨学金の返還方式の見直し、教育費の支援などが提言された。
- 緊急提言(案) ~未来を切り拓く「新しい資本主義」とその起動に向けて~新しい資本主義実現会議(内閣府、2021年11月8日)(Pdf)
首相官邸の発表によると、岸田総理はこの提言を受け、「真っ先に取り組む課題について、今回の経済対策において実行に移すことで、早速、新しい資本主義を起動していきたい」と述べた。
また、岸田総理は経済安全保障について「経済安保推進のための法案を策定いたします。人工知能・量子などの分野で、研究開発を複数年度にわたって支援する基金を設け、先端的な重要技術を育てます。先端半導体の国際共同開発と半導体工場の国内設備投資を支援いたします」と述べている。
岸田総理は「明日(11月9日)以降、全世代型社会保障構築会議、デジタル田園都市国家構想実現会議、デジタル臨時行政調査会の3つを立ち上げ、岸田政権の主要政策の具体化を進めます。新しい資本主義実現会議では、これら3つの会議での検討結果を統合した上で、来春にグランドデザインとその具体化の方策を取りまとめ、世界に向けて発信いたします」と表明した。
- 新しい資本主義実現会議(首相官邸、2021年11月8日)
この会合後に、山際大志郎経済再生担当、全世代型社会保障改革担当、新しい資本主義担当、新型コロナ対策・健康危機管理担当大臣による記者会見が行われた。
会見でのIWJ記者の質問と、山際大臣の回答は以下の通り。