2021年12月14日午後6時半より、東京都千代田区の外務省庁舎にて、林芳正 外務大臣 定例会見が開催された。
IWJ記者は、前日13日の衆院予算委員会での自民党・高市早苗政調会長による台湾有事に関する林大臣の答弁について、以下のとおり質問をした。
IWJ記者「林外務大臣は、13日の衆院予算委で、自民党の高市早苗政調会長の『日本の閣僚を含む政治家が、台湾有事、中台有事を想定した発言をすることや、日本政府が中台有事への備えを進めることは、中国の内政に対する干渉だとお考えですか?』との質問に、『日本のみならず、国際社会にとっても重要な問題について、正当な関心を表明すること自体が、いわゆる内政干渉に当たるとは考えていない』とお答えになりました。
ですが、高市氏の質問は、安倍元総理の『台湾有事は日本有事』という発言を前提としたものであり、中台関係の一方の当事者である台湾で開かれたシンポジウムでのものです。この場合の『有事』とは実質的には戦争、つまり、中国と台湾・米軍、そして、日本の自衛隊が対峙する戦争です。戦域は台湾海峡だけでなく日本全土の米軍基地や自衛隊基地も狙われる総力戦に発展しかねない重大事です。
『台湾有事は日本有事』という発言は、台湾と中国が戦争状態に陥れば、日本も参戦する、と聞こえます。林大臣がそれを肯定したとことは、中国や世界に『日本は参戦するぞ』というメッセージを与えてしまうことになるのではないでしょうか?
このような発言により、日中の外交関係が最悪の状態に陥ることがあれば、だれが、どのように責任をおとりになるのか。ご見解をお聞きかせ下さい。
これは補足的な質問ですが、11日に、イギリス・リバプールのビートルズ・ストーリー博物館で開催されたG7外相会合の夕食会で、林大臣はジョン・レノンの「イマジン」を演奏されました。この曲は、戦争を否定し、その原因となる国境もない世界を想像する反戦ソングであると思いますが、米中対立、日米対立が深まっている現状、この曲の意義をどのようにお考えでしょうか?以上、よろしくお願いします」。
この質問に、林外務大臣は次のように回答した。
「まずは、台湾海峡の平和と安定についてでございますが、日本の安全保障はもとよりですね、国際社会の安定にとっても重要であり、また、台湾を巡る問題が対話によりですね、平和的に解決されたことを期待する、というのが日本政府の一貫した立場でございます。
この台湾海峡の平和と安定が重要であるという認識は国際社会においても高まっております。政府と致しましては、昨日の国会でも答弁したとおりでございますが、こうした、日本のみならず、国際社会にとっても重要な問題について、正当な関心を表明すること自体がですね、いわゆる内政干渉にあたるとは考えておらないところでございます。
また、G7の夕食会に先立つビートルズ博物館での件についてでございますが、これは、実は、ジョン・レノンの部屋というのがございまして、ジョン・レノンが生前にかけておりました、こういう、丸い眼鏡の実物が展示をしてあるところで、イマジンを弾かれた白いピアノというのがあるのですが、これのレプリカが置いてあって、そこでファミリーフォト、まあ、メンバーの記念撮影をしようということになりまして、どなたかピアノに座らないかと、これは弾いてもいいですよと、こういうことを博物館の方から言って頂きましたので、私、大変にあの、ビートルズはファンでございますので、勇気を出して、一節を弾かして頂いたということでございます。
イマジンの歌詞については、仰ったような内容も入っているわけでございまして、私も非常に好きな曲の一つでございます」。
林外務大臣は、「安倍総理の発言は、一方の当事者である台湾でのシンポジウムでのものである」というIWJ記者の指摘にもかかわらず、「正当な関心を表明すること自体が内政干渉にはあたるとは考えない」と答えた。
対立をかかえる二つの地域の片方で「台湾有事は日本有事、日米同盟の有事だ」と勇ましく煽ることが、はたして「正当な関心を表明すること」だと言えるのだろうか?
そして、自民党による戦争煽動を、政府の外交トップとして「追認」しながら、ジョン・レノンのイマジンを各国首脳の前で弾いてみせる、という自分に、自己矛盾や分裂、自己嫌悪をまったく感じないでいられるのだろうか?