2021年11月11日(木)午後10時25分より、外務省にて、10日に発足した第二次岸田内閣において、唯一新任された林芳正 外務大臣の就任会見が開催された。本会見には海外メディアからも多くの記者が参加した。
林外務大臣は冒頭、「私は以前、防衛大臣、また参議院におきまして外交防衛委員長、また自民党において外交・経済連携調査会長、こういうものも務めてきました。様々な機会を通じて、議員外交等も含めて各国との交流を進めてきました。今回外務大臣を拝命したことは大変光栄であり、身が引き締まる思いであります」と自らの来歴を述べた。
続けて、林外務大臣は、以下のように意気込みを語った
「現在、国際社会は時代を画する変化の中にあります。これまで国際社会の平和と繁栄を支えてきた普遍的な価値、また国際秩序といったものに対する挑戦が厳しさを増しておりまして、経済的要因が安全保障を大きく左右するようになってきています。
そうした中で、岸田総理が掲げられたとおり、先輩方の努力によってこの日本への信頼というものが得られてまいりました。これを基礎にして、普遍的価値を守り抜く覚悟、日本の平和と安定を守り抜く覚悟、そして人類に貢献し国際社会を主導する覚悟。こういった3つの覚悟をもって外交展開してまいりたいと思っております」。
林芳正氏は1961年東京生まれ。東大法学部卒業後、三井物産などの社員を経てハーバード大学ケネディスクールに入学。米の下院議員、上院議員のスタッフを務め、帰国後議員秘書となり、1995年、第17回参議院議員通常選挙に自由民主党公認で山口県選挙区から立候補して初当選。以来5選され、2008年、福田康夫改造内閣で防衛大臣に就任し初入閣。2009年には、麻生内閣で内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、2017年の第4次安倍内閣では文部科学大臣を務めるなど、参議院や内閣の公職を多く歴任した。
質疑応答において、IWJ記者は林大臣に、以下のように質問した。
「アジア・ユーラシアに広がる経済圏と安全保障圏、その中での日本の立ち位置についての大臣のお考えをうかがいたいと思います。
11月2日に、RCEP協定の発効要件が満たされ、我が国及び寄託を終えた9か国について、2022年1月1日にRCEP協定が発効することとなりました。
また、米国が参加をやめ、我が国が主導してきたTPP11協定には、この6月に英国の新規加入手続が開始され、9月には中国が正式に加入を申請しています。
RCEPとTPP11が完全に発効すれば、いわゆる『権威主義的体制の国』と『民主主義国』の両群にまたがる巨大で強力な貿易経済圏が出現することになり、その中心は経済規模で他国を凌駕する中国になると思われます。
一方で、米国を中心とする安全保障圏として、『自由で開かれたインド太平洋』を標榜し、米国を中心に中国を包囲するクアッドや、機密情報を共有するファイブ・アイズがあります。また、フランスやドイツなどがわざわざ東アジアに艦隊を送り、中国を意識した共同軍事演習を自衛隊と行なうなどの動きが活発化しています。
つまり中国を中心とする経済圏と、米国を中心とする安全保障圏が一致していません。この中で日本はどのような道を歩んでいくべきなのでしょうか? 大臣のご見解をお聞かせください」。
これに対して林大臣は、次のように答えた。
「日米同盟ですが、先ほど申し上げたように外交安全保障の基軸であり、インド太平洋地域と国際社会の平和と繁栄の基盤であるというふうに思っております。北朝鮮による核ミサイル開発や、中国の一方的な現状変更の試みをはじめとして、地域の安全保障環境が厳しさを増すなかで日米同盟の重要性はより一層高まっている。
そしてご指摘がありましたように、日米同盟に加えてクアッドとか、日本は当初のメンバーではございませんが、UKUSA(United Kingdom – United States of America Agreement アメリカの国家安全保障局やイギリスの政府通信本部など5カ国の諜報機関が世界中に張り巡らせた設備や情報を相互利用・共同利用する為の協定。『ファイブ・アイズ』に同じ)といったものが出てきておるというわけであります。
一方でご指摘があったとおり、中国は世界第二位の経済大国でありまして、その行動の影響力が国際社会のなかで増してきているというわけでございます。
中国が国際社会のルールに則って、その責任を果たしていくことが重要だと考えております。RCEPにも合意したということですから、歓迎するとともに、今申し上げたような考え方で、それぞれの国がしっかりと責任を果たしていくことが重要だと考えております」。
詳しくは全編動画を御覧いただきたい。