25日の会見後に岩上安身が送付した質問に菅総理が回答! 岩上安身の質問に正面から答えない菅総理は、根本的なコロナ対策の失敗を認めず、大きく足りない数字が少しマシになったことに固執! 2021.8.29

記事公開日:2021.8.29取材地: テキスト
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(文・IWJ編集部)

 8月25日午後9時から、菅義偉内閣総理大臣による記者会見が総理官邸で行われました。岩上安身はこの会見に参加しましたが、質疑応答で指名されることはなく、会見終了後、菅総理宛てに質問状をメールで送付しました。

 昨日、その回答が届きましたので、ここに質問とともにご紹介します。岩上安身が菅総理宛てに送付した質問は次の通りです。

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 菅総理は、(1)感染阻止対策、(2)医療体制の構築、(3)ワクチンを3本の柱としてやってきた、と会見で繰り返されました。ワクチンの接種推進はさておくとして、他の2本の柱は、十分なものだったでしょうか?

(1)の感染阻止対策で、力点が置かれたのは国民への行動制約です。本日、発出された非常事態宣言もまん延防止措置重点措置も、国民に行動制約を求めるものであって、政府が、自ら、積極的な感染防止策を打ち出したわけではありません。

 感染阻止対策は、「検査と隔離」が基本中の基本です。しかし、それは、ずっとサボタージュされたままです。日本は100万人当たりの検査回数で、世界の中で143位です。もちろん先進国の中では最下位です。以前の質問メールでも触れたことですが、それに対する回答の中には、自国内の「前年比」で増えた、という回答しかありませんでした。感染者数がケタ違いに増えているのに、「前年比」増では意味がありません。世界各国との比較でも、なぜこんなに過小な検査数のままなのか、その合理的な説明もありません。

 また、「検査と隔離」は、一体であるべきです。自宅待機および自宅療養という名の自宅放置者の増加は、元気な無症状者ならば動き回って、感染を広げる原因にもなりますし、体調が悪化している人ならば、急変の際、命を救えない原因ともなります。隔離が必要です。

 東京都1400万都民の世帯は、その半数が一人暮らしの世帯です。自宅で急変しても、救急車を呼んでくれる同居者がいません。私自身、狭心症の発作で経験したことがありますが、一人暮らしの自宅内で急変した場合、先に意識が遠のいてしまい、助けを呼べない恐れはぬぐえません。

 今、5人に1人が自宅で亡くなっており、そのうち半数が50代以下の若い層です。陽性が判明したら、中等症以上は病院に、軽症者・無症状者であっても、自宅ではなく、施設に隔離し、医療者の目の行き届くところにおくべきです。目標とすべきは「自宅放置ゼロ」のはずであり、自宅を「病床にする」という方向ではないはずです。

(2)医療体制の構築にも、安倍政権以降、引き継がれてきた問題点が解決されずに、菅政権に引き継がれ、今に至っています。

 まず、国公立の病院はいったい何をしているのか、という問題です。本日、会見で国立病院機構がコロナ病床を東京で200床拡大するというお話がありましたが、いったい何床あるうちの200床なのでしょうか?

 国立病院機構(NHA)は140の病院を傘下におさめ、地域医療機能推進機構(JCHO)は57病院を擁しています。あわせて197病院のうち、どのくらいがコロナ患者を受け入れに治療にあたっているのでしょうか?

 我々が、厚労省の担当部局に直接取材をした際は、数を言わず、実際公表もしていません。一部の報道ではコロナ病床はたった5%だと言います。これは事実でしょうか?

 なぜ実数を公開しないのでしょう?国公立の病院に対しては、災害や公衆衛生上重大な危害が生じている時には、厚労大臣が必要な業務の実施を求めることができると国立病院機構法とJCHO法の各21条に定められています。コロナは災害であり、公衆衛生の重大な危害です。厚労大臣は「命令」ができるのですが、いまだに「命令」を下したとは聞いておりません。ずっと「お願い」ベースであると説明されています。

 厚労大臣が命令を下して、この197病院に全力を尽くしてコロナ患者を受け入れよ、と言えば、入院できずにいたコロナ感染者はかなりの程度、入院し、治療を受けられるはずです。厚労大臣が渋っているならば、総理がリーダーシップを取ればいいだけの話です。

 これひとつをとっても、安倍・菅政権は、政府は全力を尽くさず、つまり「公助」はベストを尽くさず、「自助」のみを強調して、民間に行動制約や事業の制約を押し付けているだけである、ということになります。

 医師会が求めている「野戦病院」(臨時病院)の設置についても、総理は少し触れましたが、求められている規模のものを設置するとは断言されませんでした。聞き取りずらかったのですが、酸素吸入ステーションのような立ち寄りの設置を拡充するとお答えしたように聞こえました。

 立ち寄りのステーションと、入院・宿泊医療を受け入れる「臨時病院」とはまったく違います。陽性者がその施設に立ち寄るため市中を往来すれば、市中感染を増やしてしまいます。

 菅総理は、コロナ対策の柱である医療体制の構築に全力を尽くしたのか、と言えば、そうとは言えないのではないかと、言わざるをえません。

 ここまでは質問の前提となる事実の指摘であり、ここからが質問です。

 菅総理は、総理総裁を続投されるご意向のようですが、総裁選において自民党内のライバル、あるいは総選挙において野党が、コロナ対策の3本柱のうち、(1)感染阻止対策(検査の拡充と隔離の徹底。検査数を人口100万人当たり143位から例えば10位以内にすること等を目標に掲げ、実行する)、(2)医療体制の構築(国立病院機構と地域医療機能推進機構の197病院の大半をコロナ病床にあて、同時に「臨時病院・臨時隔離施設」を設置して、「自宅放置ゼロ」を目指す)という改革目標を掲げて戦いを挑んできた場合、選挙に勝てるとお思いですか?

 以上、菅総理にお答え願います。

 なお、尾身会長にも、JCHOの理事長として、どうしてもっと積極的にコロナ患者の受け入れをなさらないのか、厚労大臣からの「命令」が必要ならば、それを下してもらうべく、働きかけないのか、そこもお答え願います。

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 なお菅総理から届いた回答の書面では、岩上安身による質問のうち、最下部の尾身会長への働きかけの部分は省略されており、回答もありません。

 この問に対する、菅総理の回答は次の通りです。

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(答)

○ 以前から申し上げているように、検査が必要な方に速やかに検査を行っていくことが重要であり、感染リスクがある方への検査を徹底するなど、効果的な検査体制を進めてまいりました。

○ 自治体や民間検査機関等とも協力しながら体制の拡充を図ってきており、我が国の一日当たりのPCR検査は、昨年4月には約7千件であったが、足元では約11万件と着実に増加しております。

○ また、短時間で判定できる抗原検査キットも活用し、高齢者施設などでの検査を進めるとともに、新学期に当たって、学校での感染拡大を防ぐためにも、幼稚園、小中学校に約80万回分の抗原検査キットを配布し、早期の発見、対応に努めてまいります。

○ なお、感染拡大地域において、保健所業務がひっ迫する状況においても必要な検査が適切に行われるよう、職場で陽性者が確認された場合、事業所で濃厚接触者等の候補を特定し、保健所が適切と認定することで、事業所から直接検査を依頼できる取組などを進めております。

○ また、医療体制についても、新型コロナ患者の方々が、症状に応じて必要な医療を受けることができるよう、その体制整備を進めております。

○ 病床やホテル療養施設の確保については、既に、昨年末と比べれば、全国で約1万床の病床、1万5千室のホテル療養施設を確保していますが、今後も、公的病院をはじめ、自治体とも協力して、国自らも働きかけを行い、最大限の上積みを行ってまいります。

○ 国立病院機構においては、今回の感染拡大により東京都を中心に医療がひっ迫している状況を踏まえ、新型コロナ対応の病床を、東京全体で200床まで拡大し、全国の新型コロナ対策センターとしての役割を果たしてまいります。

○ 自宅療養されている方々は、大変不安な気持ちで過ごされていると考えており、地域の診療所のご協力もいただきながら、健康観察や相談、電話診療などを行う体制を速やかに構築していくこととしております。また、酸素が必要となった患者のための酸素ステーションなどの整備も進めております。

○ デルタ株によって、世界中で経験のない感染が広がり、我が国の状況も一変しましたが、医療体制の構築を行うことを最優先に、感染防止対策、ワクチン接種といった柱からなる対策を徹底し、この危機を何としても乗り越えてまいります。

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 菅総理の回答は、質問の本題である目前の自民党総裁選、その後の総選挙で、争点となりうるコロナ対策の不備について、ライバルからつかれた時にどうするのか、その見通しについては、まったく答えていません。

 そして、前回7月30日の岩上安身の質問状への回答に引き続き、今回も政府は「前年比」で検査数が増加したことのみにこだわりを見せてばかりで、デルタ株中心の第5波が感染爆発を引き起こしている「現実」に対して不十分な対策しか立てられていない惨状については完全に無視を決め込んでいます。

 これまでずっと医療関係者や野党が指摘し、会見でも岩上安身が求めてきた検査の拡充や隔離の徹底といったまっとうなコロナ対策に舵を切る姿勢はまったく見られません。

 実際、自民党総裁選でライバルとなる岸田文雄元外相は、26日の記者会見において、「検査の拡充を行う」と断言しています。ここは総裁選でも争点とならざるをえません。岩上安身が指摘した通りに事態は推移しているのに、回答は2日も延ばされたあげく、岸田氏の会見のあとであるというのに、質問について回答ゼロです。これでは、国民に見放されて当然ではないでしょうか。

 結果的に菅政権のコロナ対策は大失敗であり、多くの感染者が亡くなっていくことで波が引くのを待つだけになっているのが現状です。自身が引き起こした「人災」によって国民が苦しんでいることへの反省はなく、大きな改善の必要性を決して認めない菅総理の回答は、いわば、「現状で十分。いくら国民が死んでもかまわない」と言っているに等しい無責任なものです。

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