2021年7月13日の丸川五輪大臣の定例記者会見で、IWJ記者が行った質問「無観客でも『別枠』観戦の『五輪ファミリー』はもはや『五輪マフィア』では!?」と、「ウガンダ選手団コーチが、療養期間終了後に陽性でも行動制限緩和されたが、五輪関係者全体に認めるのか?」に、丸川大臣はまともに答えなかった。
その際、IWJ記者は、大臣の回答「7月1日から12日までの選手団の空港検査で、セルビア選手団1名陽性以降、すべて陰性だった」に、イスラエル選手団の陽性が抜けている!?と疑問に思った。内閣官房オリンピック・パラリンピック推進本部を直撃すると、なんと大臣の回答は「自治体のホストタウンで事前合宿に向かった選手団」だけに限定された数字だと判明した。
しかも、ホストタウンに行く選手団の陽性者はオリ・パラ推進本部が、選手村に直行する選手団の陽性者は組織委が、それぞれ別個で集計、発表しているという。海外選手団の陽性者数の全体合計をどこも取りまとめていないのである! 何という無責任体制!!
- 日時 2021年7月13日(火)11:45~
- 場所 内閣府 本部庁舎 330(会見室)
IWJ記者の質問「無観客でも『別枠』観戦の特権的な『五輪ファミリー』はもはや『五輪マフィア』!?」に、丸川大臣は「観客でなく主催者」なので別枠と回答!? しかしウイルスは観客も主催者区別しない!
2021年7月13日、丸川珠代 東京オリンピック・パラリンピック大臣の定例記者会見が行われ、IWJは中継を行うとともに、記者が質問を2度にわたって行った。
1点目は「五輪ファミリー」の観戦特別枠の問題である。
IWJ記者「東京五輪について、首都圏1都3県と福島、北海道の競技会場を『完全無観客』と決定しましたが、同時に、開会式では1万人程度とされる国際オリンピック委員会(IOC)などの関係者やスポンサーら『別枠』の『五輪ファミリー』については、特別に入場を認める方針のようです。
基本的に『無観客』という方針であるにも関わらず、IOC関係者やスポンサーら特権的な『五輪ファミリー』だけに『特別枠』を設けるのでは、選手のことを第一に考えている『アスリートファースト』の東京五輪とはいえませんし、感染拡大を防ぐための無観客の方針なのに、その防御に大きな穴をあけてしまうことになります。
また、特権を与えられるIOC関係者ら特権的な『五輪ファミリー』の側も、感染リスクを犯してまで、会場に足を運び、特別観戦する「優遇」を当然のことと考えているのだとすれば、もはや『五輪マフィア』と言わざるを得ません。
我々はIOCのバッハ会長の、『東京大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなければならない』という言葉を忘れていません。特権はIOCはバッハ会長、スポンサーらで、犠牲は東京都民、ということなのでしょうか?
これでは、今大会は特権的地位にある者だけが優遇される『五輪マフィアファースト』の大会であるとの批判が出てもしかたがないのではないでしょうか。
丸川大臣は、IOC関係者らに特権的な扱いをし、無観客のはずなのに会場で観戦させることについて、問題がないとお考えなのでしょうか?」
丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック大臣「大会関係者が、どの程度、開会式をはじめとする各セッションにお入りになるかということについては、真に運営に必要な方だけに限っていただきたいということを、私どもからも強く組織委員会にお願いをしているところであり、現在その精査の作業が行われているとうかがっています。
また、大会運営関係者については、ほかのスポーツイベントにおいても、観客ではなく、主催者との位置づけのもとで参加していると理解しています。
引き続き組織委員会において、より一層の縮減を図っていただくようお願いをしたいと思います」
丸川大臣は、運営関係者は「観客ではなく、主催者との位置づけ」なので、別枠と言いたいようだが、新型コロナウイルスそのものは感染先として、観客と主催者を区別しないのは、言うまでもない。丸川大臣の回答はナンセンスである。
IWJ記者の質問「ウガンダ選手団コーチが、療養期間終了後に陽性でも行動制限緩和されたが、五輪関係者全体に認めるのか?」に、丸川大臣答えず!
2点目は、選手団の陽性者多発の恐れと、療養期間後に陽性でも行動制限が緩和される問題である。
IWJ記者「7月3日に羽田に到着したセルビアの選手1人が、コロナ陽性と判明しました。7月1日から4日まで日本に到着した海外選手団約400人に1人の陽性者であることから、同じ比率なら、23日の開会式まで132.5倍の約5.3万人の選手団や関係者が来日し、単純計算で130人以上もの陽性者が発生することになります。選手村は巨大なクラスター村となりはしないでしょうか!?
一方、成田で陽性が確認されたウガンダ選手団のメンバーは、10日間の隔離が無症状だったため、泉佐野市の合宿地に移動しましたが、男性コーチが再び陽性と確認されました。
ところが泉佐野市は、療養期間終了後も陽性になることがあるが、二次感染のリスクが低いため、新たな療養や行動制限は必要ないと発表しました。
二次感染のリスクが低いと考えられることと、リスクゼロはまったく異なります。集団行動の中で、感染が起きないと断言できるのでしょうか。今後、五輪関係者に、上記のような行動制限の緩和が認められれば、非常に国民の不安を掻き立て、『安心・安全』とはほど遠い状況になると思われます。大臣はこの陽性者大量発生の可能性と、隔離や行動制限の基準についてどうお考えでしょうか」
丸川大臣「すみません、今整理されている手元の数字だけで申し上げますので、たいへん恐縮なんですが、7月1日から12日までの選手団の入国は、スタッフだけの入国も含めて、69の国・地域から、2601人が入国をしています。
その中で、入国をした選手団の空港での検査では、7月3日入国のセルビア選手団から1名陽性が判明した以降は、すべて陰性となっているとうかがっております。引き続き、水際対策、しっかり行っていくということを、厳重に私どもも進めてまいりたいと思っています」
丸川大臣は、療養期間終了後に陽性でも、行動制限の緩和が認められた措置が、今後、五輪関係者に全体に認められるのか、隔離や行動制限の基準はどうなるのかという質問に、まったく答えなかった。
丸川大臣の回答「セルビア選手団1名陽性以降、すべて陰性」に、イスラエル選手団の陽性が抜けている! この疑問をオリ・パラ推進本部に直撃すると、その答えはなんと!?
しかし、IWJ記者は、もう1点疑問に思ったことがある。
それは、丸川大臣は、7月1日から12日までの選手団の空港検査で、セルビア選手団の1名陽性以降は、すべて陰性と述べたことだ。しかし、7月9日に羽田空港でイスラエル選手団1名の陽性が判明している。その事例は、なぜ抜け落ちているのだろうか? 資料の読み落としなどの単純なケアレスミスなのだろうか?
それとも大臣に手渡す資料を官僚が故意にか、不手際ゆえか、事実ではない資料を渡してしまっている、ということなのだろうか?
なお、ウガンダ選手団の事例は6月のため、丸川大臣の回答に含まれていない。
この疑問を解決するため、IWJ記者は、内閣府に直撃取材を行い、内閣官房オリンピック・パラリンピック推進本部事務局の朝倉大輔企画官に答えていただいた。
IWJ記者「丸川大臣は、7月1日から12日までの選手団の空港検査で、セルビア選手団の1名陽性以降は、すべて陰性とお答えになりましたが、そこに、7月9日に羽田空港で1名陽性が判明したイスラエル選手団の事例が抜けているのではありませんか?」
朝倉大輔企画官「大臣はあの場で、手元にあるデータでしかお答えできないということを注釈したうえで、ご回答差し上げたと思います。手元にあるデータとは、我々の方で、これまでもご説明、お答えしているのって、事前合宿に向かう方の数字なんです。プレスリリースに関しても、事前合宿の方に行く場合は、自治体がまず発表をするんです。そのうえで、内閣官房からも、各自治体で出た数字を取りまとめて、お知らせをしているというやり方をしています。
したがって、あの数字は、全入国者ではなくて、内閣官房側で取りまとめている、事前合宿などに行った方々の数字だったんです」
IWJ記者「ホストタウンでの事前合宿ということですか?」
朝倉企画官「そうです。ですから、選手村に直行しないというイメージが分かりやすいと思います。イスラエルの方の件は、ホストタウン等に行ってないんです。なので、自治体がかんでいなくて、したがって、内閣官房側のリリースには含んでいないんです。なので、大臣の手元にあったデータはそっちだったんです。
したがって、入国者全体の母数といったわけではなくて、選手団の……あ、確かにそうですね、今日はちょっと、その場でぱっとお答えになったのもあって、事前合宿等で入国した選手団という言い方を明確にしてなかったかもしれないんですけども。(大臣の)手元にあった数字はそういうことなんです。我々の方で、手元にあった数字って、基本的に事前合宿に行ってる方々の数字なんです。
おっしゃるように、イスラエルだけ入ってないっていうのは、実はそういう事情がありまして。そういうデータしか手元になかったっていうことなんですね」
IWJ記者「要するに、『自治体のホストタウンで事前合宿に向かった選手団』という限定が抜けていたという?」
朝倉企画官「そうですね。今日はひょっとしたら、そこが正確にお伝えできてなかったかもしれないですね。そこはちょっとすみません、手元にあった数字をぱっとお答えになったので、ご容赦いただければありがたい。不正確さがあったとしたら、申し訳ないとは思うんですけれども」
海外選手団の陽性者数の全体合計を、オリ・パラ推進本部も組織委員会も取りまとめていない事実が判明!! 五輪関係組織全体に根差す無責任体質!!
IWJ記者「それはわかったんですが、そうすると、選手村に直行する方たちが入ってないっていうのは、なぜなんですか?」
朝倉企画官「選手村に直行する方々が、我々の方の数字に入っていないのはなぜか。そこは、組織員会の方が、毎日午前11時に最近、公表してるんですね。結果的にと言ったらなんかあれなんですけど、直行する方々については、今組織委員会の方で発表し、自治体に行く方々については、各自治体が発表した情報を内閣官房で取りまとめていると。今、そういうふうになっちゃってるんですね。したがって、イスラエルの方は、内閣官房側からリリースをするということに今してないんですね」
IWJ記者「それは、我々国民の側からは、非常に分かりにくいですよね。なぜ、どちらかで一つにまとめられないんですか?」
朝倉企画官「そうですね。今結果的にこうなってしまっているという以上にお答えができないので、それはご指摘もごもっともかなと思いますので、こちらで検討させていただきたい。そういうご意見をいただいたということで、組織委とも検討していきたいと思います」
IWJ記者「ぜひ、お願いします。なんで結果的にそうなったんですか?」
朝倉企画官「うーん、なんともあれなんですけど、そこは私の方でもわからないというか、成り行き上こうなったとしかお答えのしようがないかもしれないですね」
IWJ記者「うーん、わかりましたというか、よくわかりませんが」
朝倉企画官「申し訳ないです。今こうなってますという、結果を、現状をお伝えするしかなくて、たいへん申し訳ないんですけど」
驚いたことに、海外から入国する選手団の新型コロナ陽性者数の全体合計を、内閣官房オリンピック・パラリンピック推進本部も、五輪組織委員会も、どこも取りまとめていないのである。組織上、そうなってしまった理由も、当事者である官僚もわからないというのだ。一体どうなっているのだろうか。
丸川大臣は、渡されたその片方だけのデータをもとに、事実と異なる回答をしてしまったわけだ。丸川大臣は、これまでにも、五輪のコロナ感染問題に関する責任を、東京都や組織委に押し付けるような答弁をして批判されていたが、五輪に関する無責任体質は、丸川大臣個人に限った問題ではなく、東京五輪に関わるさまざまな組織全体に根ざしていることが、改めて浮き彫りになったのではないだろうか。
他方、大手メディアの産経新聞のウェブ・ニュースには、丸川大臣の発表を「鵜呑み」にして、「2601人が入国し1名がコロナ陽性」と誤報を流した。しっかりと裏取り取材をしていればありえない事態だ。確認を取って報道することがメディアの使命である。これではYoutubeを見ながらブログを書いている一般人ブロガーとなんら変わりがない。同じメディア人として、こんな基本的なこともおろそかにしている産経新聞には訂正・謝罪とともに、猛省をうながしたいと思う。
▲産経NEWS記事、2021年7月13日