2021年6月18日(金)、午前11時頃より、東京都千代田区の内閣府本部庁舎にて、丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック大臣の定例会見が行われた。
大臣からの冒頭発言はなく、記者との質疑応答となった。
質疑では、開催まで35日となった東京五輪の観客数やオリンピック開催に伴う感染リスクについての質問が相次いだ。
朝日新聞は、東京五輪の観客の上限について以下のように質問した。
「基本的には開催地域で最大1万人という新たな規制にもとづいて、ということになると思うのですが、IOC関係者とか、スポンサーとか、招待客は別枠で会場に入れることになるのかどうか。一部報道によると、その規模が1万人程度になるとされますが、その対応が適切かどうか、大臣のお考えをお願いいたします」。
これに対して丸川大臣は「そこの議論はこれからでありまして、何も決まったことはありません」と答え、準備不足であることが露呈した。
再度、朝日新聞が観客上限1万人の他に、関係者の入場を別枠で設けることについて適切かどうか、大臣の考えを問うと、丸川大臣は「コロナ本部とご相談申し上げなくてはいけないことだと思います」と述べ、明確な答えを示さなかった。
IWJ記者は、選手村への酒類の持ちこみが禁止されていないことや、税金を使用してコンドームを配布すると公表した組織委員会の発表を受けて、感染拡大の観点から以下のように質問した。
- 選手村は治外法権? コンドーム無料配布で「宴会OK」の屈辱(NEWSポストセブン、2021年6月3日)
「東京五輪の参加選手は選手村への酒類の持ち込みが禁じられていないことや、浮世絵が描かれた避妊具を約16万個配布すると大会組織委員会が明らかにしています。
そのため、五輪選手は濃厚接触の最たるものである性行為をする可能性もあります。
この有事の際に、避妊具を配布することは、わざわざ税金を使用して感染リスクを高める行為と言わざるをえないと感じますが、丸川大臣はどのようにお考えでしょうか?
また、日本国民や日本在住の方々には宴会などの自粛をお願いしているにも関わらず、五輪選手だけ許されるのは理にかなっていないのではないでしょうか?
五輪の開催をする上で、感染拡大を防止するために、外部と遮断した空間をつくる『バブル方式』を採用していますが、そのバブルに約30万人の国内関係者が出入りすることを東京新聞が報じています。
- 五輪選手の「バブル」は効果なし? 国内から30万人が出入り、ワクチン用意は2万人分(東京新聞、2021年6月4日)
性行為をし、感染リスクが高まっている状況で国内関係者と接触することはバブル外にも感染を広げるのではないでしょうか?」
これに対して、丸川大臣は以下のように回答した。
「私が今、IOCからうかがっているところによりますと、選手団を含めて7割から8割がワクチンを接種して来るとうかがっています。
大会関係者の中でも選手に接触される方については、鋭意接種を進めてるとこでありまして、選手については既に接種が始まっております。
ボランティアもおかげさまで、接種を進めていただける状況になってまいりましたけども、今なお調整している部分もございます。他方ではワクチン接種を行い、また他方では検査の内容を徹底して詰めて、すでにでき上がってはいるんですけど、さらに確認し、備えているところでございます。
そうした中で選手の皆さんがどうするか、酒類について、またコンドームの配布についてどうするかということに対しては、組織委員会で検討されるとうかがっておりますので、組織委員会でどのように検討されるのか、まずはうかがってから相談をしたいと思います」
新型コロナ分科会の尾身茂会長は6月17日の菅義偉総理との記者会見で、ワクチン接種が重症化予防にはつながるとしながらも、「しばらくの間は少し慎重に」と指摘している。尾身会長は、ワクチン接種が進んでいる英国が、ロックダウン解除後に新規感染者が増えていることをあげて「社会の行動、政府や自治体の対応の仕方によってはすぐに(状況が悪い方向に)行ってしまう」と重ねて指摘している。
- 菅内閣総理大臣記者会見(首相官邸、2021年6月17日)
尾身会長の発言を考慮すると、ワクチン接種をしているからといって飲酒や濃厚接触をすれば、クラスターや感染拡大が再度起こりうる可能性は十分にある。そのため、大会運営者は感染拡大をさせない状況をつくることが求められる。