2021年6月30日午後、原子力規制委員会の更田豊志委員長の定例会見が、原子力規制委員会13階B・C・D会議室で開催された。
6月23日には、運転開始から40年を超えた美浜原発3号機が再稼働をはじめた。2011年の福島原発事故以後、40年超の原発が稼働するのは初めてのことである。美浜原発3号機の再稼働は、老朽原発の再稼働が可能という「実績」を作ることになり、40年ルールの形骸化が懸念される。
IWJ記者は、安全保障の面から原発政策のあり方について更田委員長に質問した。
IWJ記者「6月23日に再稼働した、美浜原発3号機に関連した質問ですが、現在稼働中の原発は、関西電力美浜3号機、大飯4号機、高浜3号機、4号機、九州電力玄海3号機、4号機、川内1号機、2号機の、いずれも日本海、東シナ海に面した8基にのぼります。
先ごろより、アメリカが、中国の、特に東シナ海での封じ込めのいろいろな軍事的な作戦を行っているのですが、台湾有事の際の戦術として、在日米海兵隊は第2列島線まで撤退して、そこから、日本に中国攻撃のためのミサイルを設置して、相手に向けて発射後再び、第2列島線まで撤退する訓練を、沖縄県伊江島や国内各地の米軍基地で頻繁に実施していると言われています。
このような情勢の中で、日本海、東シナ海に面した8基の原発が稼働していることは、大変な脅威になり、一基でも被弾することがあれば、それだけで日本は大変な事態になることは確実です。
今や、日本における原発の問題は、日本国内の問題であるだけでなく、米国による軍事的な中国封じ込めの方針と無関係ではあり得ません。
老朽原発の再稼働は論外ですが、原発の専門家の集団である原子力規制委員会、原子力規制庁が率先して稼働中の原発を一刻も早く停止させることが重要な使命と考えるべきではないでしょうか。更田委員長のお考えをうかがえればと思います」
更田委員長「ご質問なのか、ご意見なのか、会見でお答えするのにふさわしいか迷うところではありますが、規制当局は基本的にその施設の利用がすでに正当化されているものに対して、その施設を運用するのにあたって十分な安全のレベルがあるかどうかを審査するところであって、施設利用の正当化の責任を負っているわけではないので、ご質問に答える立場にない、というのが答えです。
もう一つ、内容に少しかかわるとすれば、現代においてそういった武力攻撃の脅威を考えるときに、日本海側、東シナ海側であるから太平洋側よりも脅威が低いと考えるべきではないだろうと思っています。
武力攻撃事態にあっては、どこにあったって脅威を受けるわけですし、さらに、ミサイルを被弾して、甚大な被害を受けるのは、原子力発電所もそうですけれども、大都市だってそうです。
ですからこれ、武力攻撃事態については武力攻撃事態についての考えはありますけれども、あるでしょうけれども、それは規制当局として見解を申し上げるものではない、というのがお答えです」
更田委員長の回答は、米中衝突が現実のものとなり、日本が集団的自衛権によって自動参戦すれば、中国からのミサイルのリスクは、原発が日本海側にあろうが、太平洋側にあろうがもはや同じだ、という開き直りにも聞こえる。
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