2020年12月16日、東京都港区の原子力規制委員会で、更田豊志(ふけたとよし)原子力規制委員長による定例の記者会見が行われた。
この日午前に開かれた、第45回原子力規制委員会において、委員会の見解として取りまとめた『基準地震動の策定に係る審査について』が審議、了承された。
内容は「1、基準地震動に係る審査の基本的考え方」「2、大飯発電所の基準地震動の策定に係る審査」の2部構成となっている。
12月4日、大阪地方裁判所は、安全性が争われていた関西電力大飯原発3・4号機(福井県おおい町)の耐震性を巡り、「原子力規制委員会は審査すべき点をしておらず、安全審査基準に適合するとした判断は誤りであり違法だ」として、国に対して設置許可を取り消す判決を下した。国は控訴する意向だ。
この日の会見で、この時期に規制委が基準地震動の策定に係る見解を取りまとめた理由を聞かれた更田委員長は、「きっかけは大阪地裁の判決」だと認めた上で、前回の第44回原子力委員会で、大飯原発3・4号機の基準地震動の策定について問われたので「実際に審査を担当した人たちに、その内容についてどういう考え方で臨んで、どういう考えで審査をしたのか、あらためてまとめた」と答えた。
また、取りまとめた見解は「裁判の中で立証していくのか」との質問に対し、更田委員長は「裁判とは無関係」と述べたが、地裁判決と上級審の法廷を意識していることは明らかだ。
大阪地裁が、原子力委員会の審査の内容に踏み込んで、認可取り消しを命じたことは、今後の審査に多大な影響を与える事となるであろう。
また同時に、長く地道な裁判を闘い続けた地元住民らによる勝利の影響は、原発をエネルギー政策の主力電源とすることに固執する、国の政策に早急な転換を迫るものとなっている。