2020年11月19日、東京都千代田区の東京電力臨時会見場で、東京電力定例会見が行われた。
東京電力福島第一原子力発電所の敷地外に当たる南側陸地で、2013年から2019年にかけて地下水を調べていた、東京大学を中心とした国際研究チームが、原発由来のトリチウムを検出したことを発表した。
- 福島第一原子力発電所南側の地下水から検出されたトリチウム(東京大学プレスリリース 2020年11月16日)
会見で記者から、発表についての認識を問われた松尾桂介・福島第一廃炉推進カンパニー・広報担当は「報道と論文の内容は承知している」と回答。さらに、「(論文では)監視などの必要性も指摘していたが今後の対応は考えているか」と問われると、東電はトリチウムが事故由来であることは認めたものの「告知濃度限度と比較して大幅に低いので、外部への影響はないものと考えている」との見解を明らかにした。
重ねて記者から「海の部分ではモニタリングされているが、敷地外の陸地の部分では監視などを検討する考えはないのか」と質された松尾氏は「当社は敷地外の調査は実施しておりませんし、今のところ実施する予定はない」と回答した。
論文を発表した国際研究チームのチームリーダー、小豆川勝見(しょうずがわかつみ)助教は河北新報の取材に答えて、「山側から流れて来た地下水が汚染され、原発敷地外に漏れ続けている。敷地内の井戸でくみ上げ切れなかった分だろう」、「大地震などで高濃度の水が流出する懸念もあり、何らかの対応が必要だ」と話している。
- 福島第1原発 敷地外地下水でトリチウム検出 ごく微量『厳重な監視必要』(河北新報、2020年11月17日)
東京電力は、地下水脈が複雑で把握しきれない現実を無視して、影響が過少と言い募っているが、汚染が敷地と無関係に広がっている実態が明らかとなってきたと言える。