2020年11月5日、東京都千代田区の東電臨時会見場で、東京電力による定例の会見が行われた。
福島第一原子力発電所に貯留されている処理済み汚染水について、政府による海洋放出の方針決定が近いとされる中、11月4日からIAEA(国際原子力機関)によって、福島第一原発近傍の海水や海底土や福島県の海産物などの採取・分析事業が、原子力規制委員会との共同で行われる。
- 国際原子力機関(IAEA)との共同事業の一環として実施する海洋試料採取について(原子力規制委員会、2020年10月30日)
しかし、記者から「この共同事業に東電も参加するのか」と問われると、小林照明・原子力・立地コミュニケーターは「情報を持ち合わせていない」と回答した。
原子力規制委員会委員長の更田豊志(ふけたとよし)氏は10月21日の定例会見で、処理済み汚染水の海洋放出に際してのモニタリングについて「変化の量を示すためには、あらかじめ放出する前のデータをきちんと、とらえておかなければならない」と述べており、IAEAによる事前採取とも取れる、今回の事業に対する東電の回答は、当事者として極めて無責任な回答と言わざるを得ない。
また、更田委員長は、海洋放出の際のモニタリングについて「希釈されればされるほど測定は難しくなる」と指摘する。記者が「東電はそのような測定の技術は持ち合わせているか」と問うと、「(モニタリングの為の)サンプリングの強化は今後検討していかなければならないと認識しているが、今の段階でやり方を示せるものはない」「(国の方針が)詰まったところで説明したい」と述べるにとどまった。
処理済み汚染水の海洋放出については、「風評被害」が大きな社会問題となっている最中、もっとも注目されるモニタリング、サンプリングについて具体策を持たないとすれば、福島の漁業関係者や地元地域の同意は、到底得られるものではないであろう。