小池都知事が「感染は『夜の街』に」と明言しても打つ手なし! 可視化されない「夜の街」の現状! クラス全員、キャバクラで働いた経験があるという高校が東京に実在することが取材で判明!! 背景には貧困と奨学金ローンの返済が!! ~連載第1回~ 2020.7.6

記事公開日:2020.7.6 テキスト
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(取材、文:IWJ編集部)

 7月5日、小池都知事の再選が決まった。しかし、誰が都知事になろうとも、東京で今まさに膨れ上がり続けているコロナ「第2派」の勢いは簡単には止められそうにない。

 東京都の新規感染者数は、100人超えの日が7月2日から、107人、129人、131人、111人、102人と5日間続いている。4月をピークとする「第1派」の時とは違って、20代、30代の若い人が多いことと、「夜の街」で働いたり、出入りしたりする人々の占める割合が高い点にある。

 しかし「夜の街」と言われてもその実態を知る人は多くない。IWJでは100人超えが続く現状を踏まえて、「夜の街」の関係者への取材を行った。そのレポートを連載でお届けする。

 6月4日の日刊IWJガイドでは、東京都が6月2日に、新型コロナに関する「東京アラート(警報)」を発令したことをお伝えした。東京都の新感染者数は、2日は34人で、3日は12人、4日は28人と2ケタ台で推移していた。3日の12人のうち、半数を超える7人は接待を伴う店の従業員と、その客だったことも発表され、当時話題になった。

 新規感染が2ケタ台でそのうち「夜の街」関係は7人。それで「東京アラート」が発令された。わずか1か月前のことである都知事もメディアも都民も健忘症に陥っているのではないか。この時の状況と、現在の状況を比べてみるべきである。

▲客が座れば密着するように配置されているソファーとテーブル

 「東京アラート」発令は休業の再要請に直結するものではなく、小池百合子都知事が「警戒すべき水準。徹底した対策を」と、言葉で注意を促している状態に過ぎなかった。しかし、緊急事態宣言が解除され、街に人が戻ってきたことによって、感染拡大の波が再び押し寄せている可能性があり、警戒して現実を、直視する必要があるとも日刊IWJガイドでお伝えしてきた。

東京アラートの発令。「夜の街」が危険、「徹底した対策を」と言うだけの小池都知事!?

 小池百合子氏が都知事に再選されたのは7月5日。その時からか月前に話はさかのぼる。

 小池知事は6月3日の夜に、記者団に対し「昨日は34人だったが、今日はなんとか12人に留まっている」と述べた。しかし、12人のうち半分以上の7人が、「夜の街」で働いていたり、客として訪れたりしていたことについて、「これまで病院内での感染が多かったのが、次第に『夜の街』関連に移ってきているのが現実だ。防止策を具体的に考えていきたい」と述べ、「夜の街」の感染の防止策について取り組むことを、この6月3日に明言したのだ。

 その都知事の「宣言」から1か月後の7月3日。124人の新規感染者が出て、そのうち53人が「夜の街」関係者だった。都知事が「宣言」していた「夜の街」関連の防止策は、この1か月間まったく成果をあげてこなかった、と言い切っていいだろう。

 なのに小池氏は、都の有権者の6割の票を獲得して再選した。過半数を超える都の有権者はどんなメディアを事例に情報を得て、このような判断を下したのだろうか。

増え続ける都内の新規感染者数。ホストクラブやキャバクラでのクラスター発生!小池都知事は「夜の街」現状を把握しているのか?

 1か月前の6月4日、東京都は都内で新たに10代から60代、80代の男女あわせて28人が新型コロナウイルスに感染していると発表した。

 注目しておきたいのは、年齢別のその内訳である。この日の新規感染者のうち、20代と30代があわせて22人と、全体の8割近くを占めていた。接待を伴う飲食業の従事者が多々、感染していたことも、発表されている。この頃から絶えず、「夜の街」関係者が新規感染者の何割を占めているか、報道されるようになった。

 その後も東京都の新規感染者は増え続け、6月24日は55人になり50人を超えた。25日は48人と50人を1日下回るも、その後6月はすべて50人を超えており、7月1日は67人に増えた。

 そして7月2日には3ケタ台の、107人、3日は124人を記録した。4日は131人、5日は111人、6日は102人と報告された。依然、「夜の街」関係者が多く、新宿のホストクラブではクラスターが発生し、その他でもキャバクラなどの接待飲食店の関係者が新規感染者の多くを占め続けた。

 1か月前から同じトレンドが続いて現在に至っているのである。その間、国も、都も無為無策だった。小池都知事はこの1か月間、何もしないで手をこまねいていただけなのに、自民、公明、都民ファースト、連合東京に推されて、一度もテレビ討論を開かずに、街頭での演説も行わずに、都知事の座を楽々と再び手に入れた。選んだ都民はその代償をこれから支払うことになる。7月3日の会見はIWJでも取材した。あわせてご覧いただきたい。

 もう少しふり返ってみよう。5月25日、緊急事態宣言が全面解除されてから1か月余りの7月1日の時点で、ホストクラブやキャバクラの従業員や客など「夜の街」関連の新規感染者は、東京など5都県で少なくとも計514人にのぼり、そのうち東京が8割以上を占めていると、7月1日付けの読売新聞は報じていた。

 また読売の同記事は「5月25日から7月1日までの都内の感染者1145人中、『夜の街』関連の感染者は計446人に上る。このうち全国有数の歓楽街・歌舞伎町を抱える新宿区が全体の7割を占めた」と続けている。「第2波」は東京の「夜の街」、とりわけ新宿歌舞伎町を起点として発生し始めていたと言っても過言ではない。

 実は歌舞伎町でもそうだが、自粛が唱えらえた期間中でも、ひそかに休業要請を無視して開店し営業を続けている、キャバクラ店や風俗店が存在した。「補償なき休業要請」では食べていけないとばかり表の灯りを消して、ひっそり闇営業を続ける店が少なくなかったのである。

 政府や東京都が、今後有効な防止策を打ち出せるのかどうかは、「夜の街」のこうした闇営業の実態まで把握できるかどうかにかかっている。

 連日のように「『夜の街』が発生源」とマスコミも報じているが、その「夜の街」の実態を伝える報道はほとんどないと言っていい。「夜の街」という表現は非常に曖昧である。クラスターが発生していると報じられている、ホストクラブやキャバクラ、セクキャバ、といった店は多くの人にとって足を踏み入れたことのない遠い世界の話で、そこで働く人はもちろん、そこへ通う客すら自身の身の周りにいないと思っている人が多いのではないだろうか。

「夜の街」の関係者に緊急取材!「夜の街」とは言っても昼間はみんなどこにでもいる普通の人ばかり!感染は東京から全国に広がる!? ホストの寮は「3密」のタコ部屋!これでは集団感染はまぬがれない!?

 曖昧な「夜の街」という表現で漠然とイメージをするだけでなく、接待飲食店は、どのような人々がどのように働いているかを知る必要がある。そこでIWJは、「夜の街」で働く関係者のひとりであるAさんに取材を試みた。

IWJ記者「まず『夜の街』で働く人がどんな方なのか教えてください」

Aさん「普通の人ですよ。男も女も特別な人じゃない。電車に乗っていたら、一目見てもまず分からない人が多いですよ。

 キャバクラ嬢も、都内に住む人はお店に通勤するときは、行きはほとんど電車に乗って通勤しています。帰りは、終電がなくなると、お店の用意した『送り』の車に乗るんですが、行きは普通のサラリーマンやOLと一緒に、電車に乗って通勤しているんです。

 学生さんでキャバクラで働いている人もいますが、学校帰りに来るわけですから、みんな見た目も普通の学生さんです」

IWJ記者「大学生もいるんですか? 」

Aさん「もちろんいますよ。大学や専門学校の学費を自分で稼いでいる人もいます。今どきの若い人の多くが、奨学金のローンを抱えていますから、大学生だけでなく、高校生も結構いますよ。大学の受験費用と入学金を稼ぐために、高校生で働き始めるとか。学費を払うために10代で働き始める人は少なくないです。18歳になれば高校生でも働いていいことになっています」

IWJ記者「高校生が働いているんですか? 法律や条例で18歳未満の就業は禁じられているのではなかったんじゃないですか? 」

Aさん「はい。私の知る女の子は、錦糸町にある高校に通っていたんですけど、高校のクラスの女の子が全員キャバクラで働いてた経験があるって言っていました。『うちらくらいの偏差値の高校だと、クラス全員ですよ』って。その高校は家庭が貧しい子も多いみたいで、とくに夏休みとか、みんな働くそうです。『キャバクラ養成学校』と言われたりして。背景には貧困、家庭の崩壊、親の病気や失業などがありますね」

IWJ記者「18歳は法律的に働いていいんですね?」

Aさん「はい。まぁ、それ以下の歳の子も働いていますけどね、中学生の頃から働いているって子もいました」

IWJ記者「中学生まで!? 完全に違法ですよね?」

Aさん「はい。違法ですけど、でも実際にいるんです。その子たちはこの業界だと『アンダー』って呼ばれていて、一緒に働いている人は分かっていますよ。客だって10代半ばだって分かっていて来る人もいる。セーラー服着るキャバクラとかありますから。むしろ客には喜ばれる」

IWJ記者「でも、未成年じゃお酒も飲めないですよね?」

Aさん「でも、未成年でも飲まされますよ。女の子も飲まないとお店は売り上げが作れないので、平気で飲むように言います。お店は18歳以下なのを分かって雇っていますから。違法も何も、摘発されない限り、平気でやるんです。

 みんな家庭にいろんな事情があって稼がないといけないので、店から飲むように言われたら後で吐いても飲みます。親からの虐待で家に帰れない子とか、親が離婚してひとり親家庭で家が貧しくて母親に『そろそろあなたも働いて』と言われて働く子もいるので、必死で働くんです。自分や兄弟の学費を稼がないといけないとか。キャバで働く人は、基本的に貧困などやむにやまれない事情がある家庭の子が多いですよ」

 続く

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