「あれが“不時着”した姿ですか」――。
まさに「海の藻屑」と化したオスプレイの残骸を眺め、地元・名護市議会の東恩納琢磨議員は苦笑した。
2016年12月13日夜10時頃、米軍普天間飛行場所属のMV22-オスプレイが名護市安部(あぶ)地区の浅瀬に墜落し、大破した。IWJは15日、東恩納議員とともに事故現場を訪れ、話をうかがった。
(取材・記事:原佑介)
「あれが“不時着”した姿ですか」――。
まさに「海の藻屑」と化したオスプレイの残骸を眺め、地元・名護市議会の東恩納琢磨議員は苦笑した。
2016年12月13日夜10時頃、米軍普天間飛行場所属のMV22-オスプレイが名護市安部(あぶ)地区の浅瀬に墜落し、大破した。IWJは15日、東恩納議員とともに事故現場を訪れ、話をうかがった。
■ハイライト
――「オスプレイ墜落した」という第一報が入ったときはどうお感じになられましたか?
東恩納琢磨議員(以下、東恩納と略す)「『またか』という気がしました。情報が錯綜し、最初は、はるか沖合に墜落したという話でしたので、訓練区域で墜落したのかと思いました。しかし、実際に落ちたのは、我々の生活空間でした。集落周辺を飛んでいなければ、こんなところには落ちません。海の上で訓練していても実戦向きではないので、やはり集落をターゲットに見立てて訓練しているのだろうと感じました」
――地元でこういう光景が広がるというのは、率直にどういう感想を持たれますか?
東恩納「他の県ではありえないでしょう。他の国――例えば米国でもありえないはずです。米国では、広大な施設の中に軍の訓練場がある。でもここは、民間地です。そういうところで訓練しているんです。もし機体をコントロールできていたら、あんな岩場に不時着しますか?
現場をみたら、すぐに『墜落』だってわかります。ところが本土のメディアは、現場も見ないで『不時着』と言っています。そして『沖縄の新聞2紙(琉球新報と沖縄タイムス)は偏向報道だ』といいます。
政府や米軍の発表を鵜呑みにして情報を流す。メディアは、何に加担しているのか。一歩間違えたら事故現場は集落ですし、その時間帯は、海でいざり漁(大潮の干潮時に出かける漁のこと)をしている人たちもいました。それを『不時着』とは、よく言えたものです」
――米軍側は、「(住民に被害を出さず)感謝されるべきだ」とまで述べました。
※事故翌日の12月14日、在沖海兵隊司令官のローレンス・ニコルソン在日米軍沖縄地域調整官が、安慶田(あげだ)光男・沖縄県副知事と会談した際に、「パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきだ」と述べたという。
東恩納「沖縄県民は、『米軍にきてほしい』なんて、ひとことも言っていません。勝手に沖縄にきて、勝手に基地を作って、それで『沖縄県民に感謝しろ』なんて、盗人猛々しいとしか言いようがありません。軍隊目線で、『自分たちだけが正しい』という姿勢です。『軍隊にきてもらっているんだから、文句言うな』という目線です。
まさに植民地意識丸出しです。沖縄を、自分たちの戦利品だと思っている。それが民主主義国家の言うことだろうか。我々は『米軍は出て行け』と言っているのに、日本政府が『駐留してくれてありがとう』と言っているからでしょう。だから、米軍もああいう傲慢な態度になる。その結果、責任をすべて沖縄に押しつけてくるということです」
――米軍からすれば、または米軍を駐留させたい日本政府からすれば、『米軍が日本を守っているんだ』という意識なのでしょう。『安全保障上、必要なことなんだ』と。
東恩納「安全保障は、日本全体の問題です。日本政府もよく『グローバル』などというが、他国の色々な国と信頼を結んでいくのが外交です。日本は米国一国だけとしか外交しません。日本の政府の外交力のなさが、米国の傲慢さを助長させています。そして、政府の外交力のなさのツケが沖縄に回ってきているともいえます。
フィリピンのドゥテルテ大統領も、『米国の基地はいらない』と言っていて、ロシアや中国と外交しています。『米軍が傲慢なら、ここにいなくていいよ』と言わないと、交渉にならない。それができないから、こうして沖縄に基地が集中しています」
――辺野古の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事を国が訴えた裁判では、最高裁が口頭弁論さえ開かずに県側の敗訴を確定させようとしています。
東恩納「国が起こした裁判で、弁論の機会も与えられない。『年内で決着しろ』と政府から言われているのでしょうが、日本は三権分立が確立されている国なのかと、首をかしげます。司法が機能していません。憲法は国のためにあるのではなく、住民のためにあるのに」
――今、憲法の話が出ましたが、自民党がまっさきに憲法改正で着手しようとしているのが、『緊急事態条項』の創設です。この改正案によれば、『政府は非常時に自治体に命令できる』と書いてあります。沖縄に『有事には黙って従え』と言える条項だともみることができます」
東恩納「ドイツのヒトラーだって、すぐに生まれたわけではありません。気がついたときには、もう何も言えなくなってしまっていました。支配者の常套手段で、最初から国民を縛る条項なんか作りません。誰かに何かが起きても、国民は自分には関係ないと思い、黙っていました。そして、自分の身に起きたときに声を出してももう遅かった。
今、沖縄の人は声を出しています。だけど、本土では気づかれない。気づかないように政府が巧妙にやっているというのもありですが、これが沖縄だけのことだと思って、黙っていたら、本土にも必ず降り掛かってくると思います」
ヒトラーが「国家緊急権」(緊急事態条項)を使って権力を掌握するに至った歴史的経緯は、ドイツ近現代史が専門の東京大学教授・石田勇治(いしだ ゆうじ)氏が岩上安身のインタビューで詳しく語っている。
――沖縄の人たちが声を出している、ということですが、ちょうど2013年に今の名護市長である稲嶺進さんが再選を果たした名護市長選の頃から、辺野古新基地反対を掲げる候補者が沖縄各地で連続して当選し、「オール沖縄」の流れが出てきました。
東恩納「『選挙したってどうせ勝てっこない』と言えば、安倍政権は余計に助長します。意思を示せば、安倍政権のブレーキになる。翁長知事が言っているのは、『腹八分、腹六分だ』と。それでもひとつの目的で一致できるなら、(野党は)一緒にやれるんです」
2013年1月、辺野古新基地建設問題を焦点に行われた名護市長選挙では、岩上安身が現地入りし、再選を目指して選挙戦をたたかっていた稲嶺進市長に単独インタビューをしている。
――「オール沖縄」は2014年の衆院選で、4区すべてに各野党が住み分けて候補者を出し、全員が小選挙区で当選しました。これが全国での「野党共闘」のモデルになりましたね。
東恩納「(野党間で)すべての政策が一致することは難しいですが、自分たちの生活を守るという点では一致できるはずです。『立憲主義を守る』というひとつのスローガンでもいい。国民が離れていかないよう、政治家は知恵を絞らないといけない。沖縄はモデルですよ。野党は野党の果たす責任があるだろう。選挙に関心を持たない人たちを選挙に行かせない限り、変わりません。
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「我々は『米軍は出て行け』と言っているのに、日本政府が『駐留してくれてありがとう』と言っているからでしょう。だから、米軍もああいう傲慢な態度になる。その結果、責任をすべて沖縄に押しつけてくる。」
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