日本とは到底思えない、異様な光景が広がっていた。
2016年12月13日22時頃、米軍普天間飛行場所属のMV22-オスプレイが、名護市安部(あぶ)地区の沖に墜落し、大破した。普天間飛行場にオスプレイが配備された2012年10月以降、初の重大事故である。搭乗員5人は米軍に救助され、2人が怪我をしたが、米軍人にも、地元住民にも死者は出なかった。
12月15日午前8時、墜落事故があった現場付近は、物々しい雰囲気に包まれていた。
海岸には沖縄県警が規制線を設け、市民に向け、「この先は危険なので通せません」とアナウンスしている。しかし、大手記者クラブメディアは、記者証などを提示することで、さらに奥まで進むことが許されていた。
▲規制線手前で足止めされる市民と警備にあたる沖縄県警
▲規制線内に迎え入れられる記者クラブメディア
- 日時 2016年12月15日(木) 8:00-
- 場所 沖縄県名護市
「ジャーナリストは立ち入り不許可」から、TBS記者が助け船を出してくれて一転!規制線の内側へ――
IWJは沖縄県警から、「ジャーナリストには立ち入りを許可していない」と告げられ、規制線内へ進入することを阻止されたが、「取材目的であり、害意や米軍へ抗議する意思などはない」「大手メディアも政府から公式な記者証を与えられているわけではない。取材者という点で違いはないはずだ」と主張。現場の警察官と30分ほど交渉した。
TBS記者が「なぜIWJを入れないのか」と警察官に抗議する場面もあった。しつこく食い下がり、現場の警察官に何度も本部に確認の電話を入れてもらい、最終的には立ち入り取材を許された。
▲現場を出入りする米兵たち。沖縄県警が彼らを引き止めたり、身分を確認したりすることはない。
▲一般向けの規制線から奥に進む。潮が満ちていたため、足場の悪い崖を越えるようにして事故現場付近に近づいてゆく。
▲150メートルほど進むと、メディア向けの規制線が貼られている。
▲メディア向けの規制線の10メートルほど奥には、米軍が用意した規制線もある(木にくくられた、くたびれている黄色いテープ)。この規制線の先は、基本的に、米軍関係者のみが立ち入れる「特別区」。日本の警察官も入らないし、入れない。日米地位協定によって、日本の主権が及ばないエリアと化して
事故を起こされても「米国側が“好意的”に対応しなければ事実を知ることもできない」日米地位協定!
『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(「戦後再発見」双書)の著者で、沖縄国際大学の前泊博盛教授は、「日米地位協定第3条では、米軍が事故を起こしても、その中身については、米国側が開示する情報しか受け取ることができない、日本側が開示請求しても、米国側が“好意的”に対応しなければ事実を知ることもできない、ということになる」と指摘している。
日米地位協定 第3条
1 合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。日本国政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があつたときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。
2 合衆国は、1に定める措置を、日本国の領域への、領域からの又は領域内の航海、航空、通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によつては執らないことに同意する。合衆国が使用する電波放射の装置が用いる周波数、電力及びこれらに類する事項に関するすべての問題は、両政府の当局間の取極により解決しなければならない。日本国政府は、合衆国軍隊が必要とする電気通信用電子装置に対する妨害を防止し又は除去するためのすべての合理的な措置を関係法令の範囲内で執るものとする。
3 合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払つて行なわなければならない。
【参考】[IWJ日米地位協定スペシャルVol.1]岩上安身によるインタビュー 第282回 ゲスト『日米地位協定入門』著者 前泊博盛氏 2013.3.5
▲メディア向けの規制線から撮影したオスプレイの残骸。「竜」と書かれた大きな尾翼が大破し、岩場に打ち上げられている。
▲規制線の内側から望遠で撮影する記者クラブメディア
▲現場で調査にあたる米兵たち。
▲ゴムボートでオスプレイの残骸を拾い集める米兵たち。ゴムボートにはバラバラになったオスプレイの破片が積まれている。
▲オスプレイ墜落現場付近を通る市民の船。
▲米兵は市民の船に勢いよく近づき、接近を阻止。市民らに対し、怒鳴るような声も聞こえた。
▲海上保安庁も捜査を開始。しかし、米軍と違い、打ち上げられた大きなオスプレイの残骸には接近しない。何を「捜査」するのだろうか?
▲カヌーで海上から静かに抗議する市民たち。
▲「海を殺すな」のプラカード。事故直後、現場で警備にあたっていた警察官は、集まった記者らに「放射性物質や危険物質もあるかもしれない。何があるかわからないので、あまり近寄らないでください」と呼びかけたという。オスプレイの墜落事故によって、海の環境汚染も懸念される。
【IWJルポルタージュ】写真でみるオスプレイ墜落の事故現場、大破した機体の残骸が散る沖縄の海 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/352462 … @iwakamiyasumi
原記者の粘り強い取材成果をご覧ください。「普通の国」ではありえない光景と発言の数々、この国は間違っている。
https://twitter.com/55kurosuke/status/809515340879122432