「日本では法律が通ってしまうと、運動が鎮静化する。それではダメ。声を上げ続けて戦争法を廃止に持ち込む」 ~憲法研究者208名が声明を発表 2015.10.9

記事公開日:2015.10.25取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・花山格章)

※10月25日テキストを更新しました!

 「私たち憲法研究者のみならず、多くの学生や市民が、国会周辺や全国で声を上げたという、この新しい日本の民主主義の動きを、これからも支持し、連帯を続ける決意を、この声明に込めた」

 2015年10月9日、東京都千代田区の参議院議員会館で、「安保関連法の常軌を逸した強行採決に抗議し、その速やかな廃止を求めるとともに、法律の発動を許さず、廃止までたたかう市民と連帯することを決意する憲法研究者の声明」についての記者会見が行なわれた。参議院での安保法案の強行採決後、この問題を放置できないという憲法研究者たちが共同で作り上げた声明には、現在までに208名が賛同し、名を連ねている。

 東海大学教授の永山茂樹氏は、安保法制は稚拙でおかしな法律だと指摘する。「法律案の基礎概念に、不明確な言葉が散りばめられており、法律を運用する段階で、内閣あるいは自衛隊が、この法律によって十分に拘束されていない。集団的自衛権行使を、どういった場面で考えるかという基本的な事実でさえ、首相答弁が二転三転しており、集団的自衛権を容認する法律を作る事実がないことが疑われる」とした。

 聖学院大学教授の石川裕一郎氏は、「法案が提出されてからの4ヵ月間の、若い人たちの動きは憲法研究者にとって嬉しい誤算だ。憲法研究者が訴えてきたことが、世間に響いた。戦後70年で初めてかもしれない、日本に芽生えた立憲主義と民主主義をつなげる動きで、安保法を施行させない、あるいは廃止にもっていく」と語った。

 日本体育大学教授の清水雅彦氏は、戦争法廃止に向けて、「声明にも書かれてるように、私たちは戦争法の廃止を求め、発動させないことを個人でやっていくと同時に、そういう取り組みをしている人たちと連帯していく。日本では法律が通ってしまうと、運動が鎮静化する傾向があった。それではダメ。声を上げ続ければ、法律はできても一定の歯止めをかけられる」と訴えた。

記事目次

■ハイライト

  • 会見者 小沢隆一氏(東京慈恵医科大学教授)/永山茂樹氏(東海大学教授)/石川裕一郎氏(聖学院大学教授)/清水雅彦氏(日本体育大学教授)
  • タイトル 「安保関連法の常軌を逸した強行採決に抗議し、その速やかな廃止を求めるとともに、法律の発動を許さず、廃止までたたかう市民と連帯することを決意する憲法研究者の声明」記者会見
  • 日時 2015年10月9日(金)11:00〜
  • 場所 参議院議員会館(東京・永田町)

安保法制は法律として稚拙、おかしな法律だ

 東海大学教授の永山茂樹氏は、今回の声明に多数の賛同を得たことを説明し、このように語った。

 「われわれの声明は、参議院での安保法案の強行採決後、この問題を放置できないという考えを持った憲法研究者の仲間で作り、校正し、仕上げた。そして、多くの憲法研究者に賛同を募り、今日に至った。私たちは、特定の団体で声明を発表したわけではない。あくまでも、一人ひとりの憲法研究者が個人として加わった結果、現在までに208名が名を連ねることになった。従来の憲法研究者の社会的な声明に比べると、その数は多い。その意味では、かなり多くの憲法研究者の考えが一致したと思う。ただし、賛同者が多いという理由で声明の正当性を主張するのではなく、その内容が、研究者個人に正しいと判断されたことの結果である」

 続いて、永山氏は声明の内容について、段落ごとに解説していった。

 「2番目の段落では、2014年7月の憲法9条解釈を180度転換させる閣議決定以降、法律案に至るまで、憲法秩序を形骸化させる、まったく正当性をもたないものであることを指摘した。

 3番目の段落では、『歯止めのない存立危機事態における集団的自衛権の行使容認』『地球のどこでも、自衛隊が後方支援の名のもとに米軍と一体化する』『武器防護を理由として、平時から自衛隊と米軍が同盟的な関係をつくりあげていく』──こういったことを6月の段階で指摘し、7月の声明でこの法律案には問題があるとした。また、集団的自衛権容認の根拠として砂川事件の最高裁判決を持ち出すことはまったく正当ではなく、1972年の政府見解の読み替えによる集団的自衛権容認には道理がない、と批判している」

 さらに、4番目では、この法律が、法律の出来具合として稚拙であり、おかしな法律であることを指摘。「この法律案の基礎概念に不明確な言葉が散りばめられており、法律を運用する段階で、内閣あるいは自衛隊がこの法律によって十分に拘束されていないこと。通常、法律を作る場合は、法律を必要とする事実が存在していなければならない。ところが、集団的自衛権行使をどういった場面で考えるか、という基本的な事実でさえ、首相の答弁が二転三転しており、集団的自衛権を容認する法律を作る事実がないことが疑われる」と断じた。

 永山氏は、法律を制定する場合には、その目的と手段には合理的な関連性が必要で、安保関連法に、平和を実現するという目的が仮にあったとしても、そこで実際にとられている手段が、国際社会の平和を実現するために有効であるかどうかについて疑念がある、とした。

 5番目に、法律案の審議が十分に尽くされていなかったこと、また、審議が尽くされていないにもかかわらず、議論を打ち切って強引に採決に持ち込んだという、国民主権原理、議会制民主主義からの逸脱があったとことに言及した。

 そして6番目に、これまで自衛隊の暴走を防ぐことができていたであろう枠組みが、安保関連法によって骨抜きにされてしまうと危惧し、「7番目は、私たちは研究者の立場で今回の強行採決、法案可決に抗議して、この法律の速やかな廃止を求めている。最後の段落では、私たち研究者のみならず、多くの学生や市民が、国会周辺や全国で声を上げたという、この新しい日本の民主主義の動き、発展を、これからも支持し、連帯を続ける決意を述べている」とした。

SEALDsの動きは憲法研究者には嬉しい誤算、政権にとっては大誤算

 聖学院大学教授の石川裕一郎氏は、昨年7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定から、1年2ヵ月あまりの間に感じたことを、次のように語った。

 「今回の法案の議論を通して、憲法研究者と国際政治学者の見解が違うのではないか、という疑問がある。メディアによく出てきた国際政治学者は、『憲法学者は安全保障や国際政治のことをわかっていない』と批判した。しかし、私たちが言ってることは、安保法案が日本の安全保障に良いのか、国際平和に資するかではなくて、(基本的な)理屈だ。

 私が使ったたとえは、医者。つまり、医療行為は医師免許を持ってない人がやってはいけない、と言っているだけ。仮に安保法案がどんなに優れていても、国家権力に権限を授けられていないことを、やってはいけない。もし、やるなら手続きとして、まず、医師免許を取りましょう、つまり、憲法を改正しましょう、ということ。その1点がおかしいからこそ、普段はなかなか一枚岩にならない憲法研究者がまとまったのだ」

 さらに、法案が提出されてからの4ヵ月間に嬉しい誤算があった、と石川氏は言う。市民、特に若者たちから安保法案に反対する大きな動きがあったことだ。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

「「日本では法律が通ってしまうと、運動が鎮静化する。それではダメ。声を上げ続けて戦争法を廃止に持ち込む」 ~憲法研究者208名が声明を発表」への1件のフィードバック

  1. 武尊 より:

    継続は力なり

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です