現役の自衛官たちは集団的自衛権の行使をどう思っているのか――法律家たちが開設「自衛隊員・家族・恋人のための安保法案緊急相談ホットライン」 2015.9.11

記事公開日:2015.9.12取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

特集 安保法制反対メッセージ
※9月12日 テキストを追加しました!

 「自衛官は憲法99条により、憲法を尊重し、擁護する義務を負っている。違憲の集団的自衛権行使に基づく命令に、従う義務はない」──。

 2015年9月11日、東京都内で、「自衛隊員・家族・恋人のための安保法案緊急相談」に関する記者会見が行なわれた。主催する日本労働弁護団と改憲問題対策法律家6団体は、9月12日に東京と北海道で電話相談のホットラインを開設、声をあげにくい現役の自衛官に弁護士が不安や悩みを聞く。また、9月14日の16時30分より、参議院議員会館で院内集会を開催。このホットラインに寄せられた、安保法制に対する自衛官の本当の声を報告する。

 会見には、日本労働弁護団の菅俊治弁護士、自由法曹団の田中隆弁護士、「明日の自由を守る若手弁護士の会」の早田由布子弁護士らが出席し、「憲法18条の奴隷的拘束の禁止に則り、自衛官の同意なしに出動を命じることはできない」などと説明。「国は、一人ひとりの自衛官に対し安全配慮の義務を負う」と力説した。

 田中氏は、「自衛隊員の心情を伝えていきたい。私は、災害救済活動での献身的な自衛隊員を知っている。法律家6団体は全面的に協力する」と述べた。早田氏は「自衛官に、今回の法制による任務の変更、その内容と危険性の説明がきちんとされるのか。万が一、派遣地において殺人に至った際の、自衛官の処遇は考えているのか」と訴えた。

 河野克俊統合幕僚長がペンタゴンで交わした「密談」に関する防衛省内部文書を暴露した、共産党の仁比総平参議院議員は、「自衛隊の海外活動を大幅に拡大し、集団的自衛権の行使をしようとする政府の答弁は完全に崩壊している」と述べて、廃案への強い意志を示した。

 福島みずほ参議院議員は、「戦争法案は(米軍の)下請けで、リスク、人員、費用の肩代わりだ。当事者となる自衛隊員は懸念を声に出しにくいが、今回、その声を聞けとアピールしていきたい」と話した。

記事目次

■ハイライト

  • タイトル 「自衛隊員・家族・恋人のための緊急相談会」に関する記者会見
  • 日時 2015年9月11日(金)16:30〜
  • 場所 参議院議員会館(東京・永田町)
  • 主催 日本労働弁護団/改憲問題対策法律家6団体連絡会

「憲法尊重、憲法擁護」の義務を負う自衛官

 法律家6団体連絡会事務局長の大江京子弁護士が司会を務め、はじめに集会の流れを説明した。

 最初にマイクを握った菅俊治氏は、「日本労働弁護団は、労働者の権利擁護の活動をする会員数・約1700名の任意団体だ。7月17日、『自衛官の法的地位との関係から廃案を求める緊急アピール』を発表した」と述べ、国会では、安保法制における自衛官の地位と安全性の審議がまったくされないまま、7月16日、衆議院で強行採決したことを危惧。以下のような問題点を指摘した。

 「一人ひとりの自衛官は、憲法99条に基づいて憲法を尊重し、擁護する義務を負っている。違憲の集団的自衛権行使に基づいて、その命令に従う義務がないことを明確化すべきだ。

 一人ひとりの自衛官の同意なしに、出動を命じることはできない。憲法18条の奴隷的拘束の禁止では、意に反する苦役に服させられないとあり、まさに海外派兵が、意に反する苦役に値する。自衛官が活動に参加するためには、あらかじめ個別の同意が必要。また、同意の範囲を超えての任務を命令してはならない。朝鮮戦争の時、乗務員が危険海域への海底ケーブル修理出動の命令を拒否し、それを理由に解雇された千代田丸事件の裁判では、解雇は無効としている。

 国は、一人ひとりの自衛官に対し、安全配慮の義務を負う。現在、当然のように言われる安全配慮は、もともと、自衛官のそれをもって確立された。今回の海外派兵に関して、安全配慮義務の検討がまったくされていない」

自衛官と家族の不安──法案審議で取り上げるべき

 さらに、季刊『労働者の権利』(2015年7月号)掲載の古川景一弁護士の論文では、「意に反した使役を命じることができるのか。原子力災害、集団的自衛権行使のための出動ということに関し、2つの論点があってしかるべきだ」としていることを紹介した。

 菅氏は、「船員は、船舶労働での気象条件、海運経済的理由などで、労働基準法から排除されている。日本の海運労働者は、日清戦争以来、戦争に従事させられてきた。その歴史が、今だ船員労働法制に受け継がれている。しかし、その船員労働者でさえ、厳格な個別の同意を求めている。それを照らし合わせて、自衛官の派兵においても同意は不可欠だ」と主張。

 「以上のことが、まったく検討されないまま、安保法案を可決することは絶対に許されない。また、それを訴えるために、9月14日に緊急集会を開催する」と述べた。

 日本労働弁護団は、これまでも自衛官のいじめ問題や、労災について、会員弁護士が訴訟に取り組んできている。菅氏は、「今回は、自衛官と家族からの不安の声を法案審議でも取り上げるべきだと考え、ホットラインを企画した。『自衛隊員・家族・恋人のための安保法案緊急相談』(東京)は、9月12日午後4時から7時、日本労働弁護団事務所において、会員弁護士と改憲問題対策法律家6団体連絡会の弁護士の協力で、自衛官の悩みの声を聞き、国会議員に届けて実体を知ってもらう」と話した。

個人情報は厳守の上、自衛隊員の生の声を国会に

 司会の大江氏は、緊急相談は北海道でも同時開催し、全国から電話を受け付けるとし、「自衛隊員は、厳格に政治活動を禁止され、また、実名など個人情報が知られると大変な不利益を被る。日本労働弁護団、改憲問題対策法律家6団体連絡会、自衛隊イラク派兵差止訴訟全国弁護団連絡会議、自衛官の人権弁護団・北海道の弁護士たちで、秘密厳守に徹し、集めた声を国会議員に確実に届ける」と補足した。

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